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ニートヴィレッジライフ ~夢の理想郷~  作者: 神村涼
3.ウォータリア王国編
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九十二.オークションの責任者


 ヴィオラさんを先頭に俺達は、オークション会場へと向かっていた。


 俺の隣を歩くチェキラと、メグミンが話をしている。


 「ショウの仮面、他に良いのなかったの?」


 「えっ? そんなに可笑しいっすか。俺は似合ってると思うんすけどね」


 「え~、だって全然可愛くないよ」


 「そこっすか」


 チェキラ達は俺の着けている仮面を指差して、話のタネにしている。俺はチェキラと出会った際に、ピエロを模していた仮面を水路に落としてしまっていた。


 街中は祭りの最中、俺だけ仮面が無いのも悪目立ちするだろうと、ヴィオラさんが言うので建物を出る際に適当な仮面を貸してくれたのだ。


 チェキラが選んだ仮面は、白と黒のツートンカラーで無表情の仮面だった。個人的には、シンプルで良いと思ったけれどメグミンは不満そうだ。


 「あ、そうそう。ショウが着けている仮面は、売り物っすから後で返して貰うっすよ」


 「分かってるって」


 やれやれといった具合に返事をした。少なくともメイドリンさんには顔はバレているので、正直仮面があって助かった。追っ手の連中も、まだ俺達の事を探しているだろう。例の少年は、ヴィオラさんのお供である行商人達に預かって貰った。


 彼は自分も行くと言って駄々を捏ねていたが、戦闘になる可能性もある。危険な所へは連れていけなかった。その代わり、必ず子供達を連れて戻ると固く約束を交わしておいた。


 「それにしてもヴィオラさん。他の仲間の人は連れて行かなくても良かったんですか?」


 俺とメグミンを除くと、ヴィオラさんの供はチェキラ一人だ。合計四人で敵陣と思しき所へ乗り込もうというのだ。不安で聞きたくもなった。


 「ああ、問題ないさ。商談事には多ければ良いってものでもないさ。それにたまには彼らにも、心休まる時間が欲しいだろう。私が四六時中いては息が詰まるというものだ」


 軽妙な話し方で問いかけに答えてくれたヴィオラさんに対して、チェキラが疑問を投げかけた。


 「俺には、心休まる時間はないんっすけど」


 「おや? すっかり忘れていた。チェキラにはオークションの事を言ってなかったからな。一度見ておいた方が良いと思ってな」


 「まあ、気にはなるっすけど」


 しぶしぶ、チェキラが返事をする。それを確認したヴィオラさんは、僅かに口角を上に持ちあげた。


 そんなやり取りをしながら、路地裏をしばらく進むんだ。大通りの喧騒は次第に遠ざかり、少し開けた場所に出た。


 「着いたな」


 ぽつり、独り言を漏らしたようにヴィオラさんは言った。


 辺りを見渡すと、先程までの迷路みたいに入り組んだ路地が嘘のように、そこだけぽっかりとエリアが確保されている。


 周りの建物で、その開けた場所は見事に隠されている。街の外側からでは、とても見つける事は出来ない。


 「何も無いみたいっすけど?」


 チェキラが怪訝な顔でヴィオラさんの方を見ている。チェキラがそう言うのも無理はない、そのエリアには人は疎か、オークションを行える物品すらなかった。


 チェキラの問い掛けに、軽くため息を吐きながらヴィオラさんは答えた。


 「オークションは明日の晩だ。会場の整備は大体、明日の昼頃から始まる」


 「じゃあ、何でここに来たんっすか?」


 俺とメグミンの疑問を代弁する様にチェキラは聞き返す。


 「準備は明日からだが、責任者は必ずここにいるよ。まあ、その内出て来る筈なんだが……」


 ヴィオラさんがそう言うと、近くにある建物から人がぞろぞろと、俺達を囲んできた。人数的には三十人くらいいるだろうか。


 その中の一人が、ヴィオラさんに向かって声を高らかにあげた。


 「これは、これは。珍しい顔ですねヴィオラさん。もしかして、もしかして、私奴の求愛の返事でもしに来て頂けたのでしょうか?」


 先程チェキラに放った溜息とは比べ物にならないくらいに、深く息を吐いた。


 「相も変わらずご健勝のようで何よりです。本日、伺ったのは別件でして、明日開催されるオークションについて相談事があり参りました」


 このおどけた声色で話す男に対して、ずいぶんと畏まった物言いをするヴィオラさんに驚いてしまった。いつもの砕けた話し方では無い所をみると、この男は位が高い人物のようだ。


 その男は仮面越しの目で、俺達を一瞥する。


 「なるほど、なるほど。どうやら、込み入った事情がありそうですね」


 すっと、彼が片手をあげると取り巻きの人達は、出てきた建物への道を示す様に整列した。その動きを見るに、かなり精錬された動きに映った。


 その男は、くるっと踵を返して俺達を先導する様に建物へと向かっていった。


 前を歩く男に聞こえないくらいの声でヴィオラさんに尋ねる。


 「あの人は何者なんですか? ヴィオラさんの知り合いなんですよね?」


 「この国の者なら誰でも知っているだろうさ。なんたって、この国の王なのだからな」

 

 「えっ!」

 

 俺達三人とも仲良く声が重なった。ヴィオラさんが何で王様と関りがあるのかという疑問よりも、この前を歩く男の身なりからは想像できなかった。


 質素な格好とは良く言ったもので、実際は小汚い浮浪者を思わせる格好をしているのだ。


 その人物はヴィオラさんを伴って建物内に消えていく。俺達は一瞬思考が止まっていたせいで足も疎かになっていたようだ。その跡を追うようにして俺達も中へと入った。

 

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