21.追跡
21.追跡
木下たち三人は佐久平方面へ向かっていた。別荘を出る前に木下は雅代の携帯電話から森山に連絡を入れた。
「奥さんは開放する。佐久平まで一人で来い」
『一人でここを抜け出すのは無理だ。秘書に協力をしてもらうが、いいか?』
「いいだろう」
話を終えると小山に指示して別荘を後にした。
黒木は矢沢から指示を受けて森山を見張っていた。森山の会社に到着した時、駐車場からRV車が出てきたところだった。運転しているのは秘書の鈴木真理恵。森山は助手席に乗っていた。
「ビンゴ!」
矢沢から電話があったのは黒木が事務所で美紀に絡まれている時だった。
『木下は森山と接触を図るに違いない。すぐに森山のところへ行け』
「了解しました」
電話を切ると黒木は事務所を後にしようとした。その時、美紀に腕を掴まれた。
「どこへ行くんですか?」
「先輩の指示で森山を見張る。木下と接触するかもしれないから」
「私も行くわ」
「えっ?」
「木下と接触するってことは所長もその場に来るんですよね」
「たぶん…」
「じゃあ、決まり。行く先はきっと長野ね。長野に美味しいお寿司屋さんはあるかしら…」
ラーメンを平らげると矢沢は小山の伯父から小山が新車を買った話を聞いた。そして、すぐにそのディーラーに電話をした。
「長野県警だが…」
車のナンバーを聞き出すと、今度は黒木に電話をした。そして、小山の車のナンバーを告げると本庁の車両追跡システムで木下たちの居場所を特定して貰うように指示した。間もなく黒木から連絡が入った。
「じゃあな、世話になったな」
「陽介は逮捕されるのか?」
「駆け落ちで逮捕されたなんて話は聞いたことがないな」
矢沢そう言って笑った。小山の伯父はそれを聞いて安心した様子で矢沢を見送った。




