異世界探求伝 第六十六話 HANABI
祭りの準備は着々と近づいているようです。
はたして火薬なしでの花火は完成するのでしょうか。
先日の収穫祭の話から、かづきの故郷の祭りの話になり、訓練生も含めて全員が興味津々だったのがこの『花火』である。しかし、この地域のものにとっては未知のものであり、かづきにしかその様子を見せてやることは出来ないのだ。 しかし、魔法で花火を再現するとなると、かづきもやり方がわからないでいる。
だが、ここにはミシェータも居るし、魔法を得意としている者も多いのだから、その知恵を貸して貰う事にした様だ。 かづきはミシェータたちを連れて、グラウンドに出ていった。 取り敢えず魔法で花火が再現できるかの可能性を調べてみる為だった。
かづきは当初の予定通り早速、光魔法を空高く打ち上げてみた。 光の玉はぐんぐん上空に登っていくと、まばゆい閃光を発したのだった。 そう、まるで昼間のように・・・
「あれが花火ですの?」
「いんや、あれじゃまるで閃光弾だな。 光魔法じゃ駄目だ」
「センコー? だん」
「気にするな、ミシー、明るくて破裂する魔法は、やっぱり火の魔法しかないかな」
「うーんそうね、雷も光るわよ」
「雷か、使えそうにないな。 火でやってみよう」
かづきはファイヤーボールを上空で爆発させてみた。 しかし、これではまるでただの攻撃魔法である。 爆裂音も光の具合も良い感じだが、光の帯がほとんどないのだ。 色もイメージできないし、これを何色もというのは無理な話だ。
「うーん、炎に色を付けるのは可能かな?」
「そうね、温度の強さでの変化なら」
「教官、いいですか?」
「ああ、デスパイヨか、いいアイデアか?」
「はい師匠、あ、教官、鍛冶仕事の中で金属によっては炎の色が違うんですが」
「ああ、それは鉱石が燃える時の色だな。 『炎色反応』っていうんだ」
「さすが師匠、知ってらしたんですね」
「まぁ、花火の色付けに使われてるからな。 参考にしよう」
かづきは何を思ったか、袋から小さな魔石を取り出すと、それに魔力を込めその玉に二種類の粉を、それぞれ順に付着させていくと魔法で押し固めた。 一つは塩で、もう一つは骨を粉にしたものである。
「さぁ、次行ってみよう」
「魔石を使うの?」
「ああ、実験さ」
かづきは作り上げた魔石の玉を、思い切り上空に投げると同じ軌道上に火球を投げ入れた。
『ドーン! バチバチバチ』
「あぁ、綺麗だわ。 三色ね橙と黄色そして赤だわ」
『うおー! すげー』
「うん、いい具合だったな、あれが花火に近かったな」
「え? 十分綺麗だわ、何が足りないの?」
「うーん、魔石が必要な事と、投げて火球って二度手間が気に食わないかな」
「教官! スクロールならば魔石の粉で済みますが」
「あら、そうね魔石のインクで書けるなら、材料は何でも構わないわね」
「ああ、そっか魔法陣なら魔力の増幅も可能だし、石でも書けるな」
「そうね、爆発させるだけなら、簡単ね」
「そうだな、後は発色用の鉱石探しだな。 鍛冶屋と焼物工房、それにガラス工房に行けば何とかなりそうだ」
「花火作りは何とかなりそうね」
「ああ、思ったより早く解決できた。 皆、協力ありがとうな」
この先は思ったより早く花火を作り上げる事ができた。 今まで行って来た技術革新によって、情報が業種を問わずに開示されているので、そうした技術を自分たちの職種に応用する事で、次々と新しい試みが行われていた為だ。 花火に関しては赤、青、黄の基本三色の鉱石を集める事ができたので、ここから色の配合が行える。
術式もバルーン印刷の技術で、楽に立体のものに印刷できるので、曲面であろうと角があろうとも、ほとんどのものに印刷する事ができるようになった。 インクは魔石の粉を利用しているので、魔力を込めた簡単な手順で打ち上げる事ができる。
屋台のメニューも色々と提案したのだが、時間が掛かり過ぎるものは却下されてしまった。 手順が多いと作る者も交代も難しく、数もさばけないのが主な理由である。結局屋台料理でOKを貰えたものは、『一銭焼き』、『串焼き各種』、『ピザ』も具をのせて焼いた後に、切り分けるだけで簡単なのだが、移動が難しい石窯が必要なせいで、大いにもめたのだが下部に石のローラーを取り付けた事で、どうにか出せるようになった。
またクラークの希望で『カツサンド』が選ばれたが、ペンネからすかさず待ったがかかる。 ペンネによると揚げたカツやキャベツソースを掛けるまでは良いが、切り分けて渡すのが面倒だという。 ならばコッペパンに切れ目を入れるホットドッグ方式を提案したら、それが良いという事になってしまった。 腸詰ソーセージは元々あるので、『ホットドッグとカツサンド』の両方が出される事になった。
また、屋台で出す甘味類も『リンゴ飴』をはじめ、『クレープ』に『ヨーグルト』や『アイスキャンディー』も出される事になった。 シャーベットはやはり出しづらいらしい。 かき氷は季節を外している感もある為自重した。 タコ焼きや綿あめと回転焼きなどといったものは、これから試作するつもりでいる。
――――
砦村へ戻ったかづき達五人は、夕食を済ませるとクラークの事務所へ詰めていた。
「あぁ丁度良かった、クロサワ様、収支報告をしたかったのですよ」
「うん? もうあれから一か月経ったのか」
「そうですな、先月は半端でしたので、本格的に始まるのが今月からになります」
「何がはじまったのかな?」
「アハハ、何をって、砦村の運営ですよクロサワ様」
「うーん、そう言われてもな、もう惰性でやってるからピンと来ないな」
「もう、おにぃちゃんったら、主なんだからしっかりしないと」
「うーん、それがピンと来ないんだなモモ。 そもそも領主ってがらじゃないし」
「アハハ、そういったものは後で付いて来るものですよクロサワ様」
「そうよねクラークの言う通りだわ。 わたしたちだって教官やってるくらいだもの」
「フフッ、そうねジュリナが教官だなんて、冗談も良いところだわ」
「マッ、ミシー! あんたはどうなのよ」
「おい! タレ目にワンコ、その辺にしとけ」
「ふわーい」「ハーイ」
「ハハハ、では収支報告致します」
「ああ、クラーク」
「えー歳入につきましては、鉛筆と鉛筆削りなどの文房具用品の売り上げが銀貨三千九百枚、そして一般用の食器が十一万二千五百枚、貴族用の銀食器が五十セット売れましたので、銀貨七百五十枚、それから馬車の売り上げが三千七百五十枚。 以上が先月までの売り上げで御座います」
「さすがに暗算じゃ無理だな。 ハハ」
「ええ、ですがソロバンのお陰で、計算が楽になりました」
「そうか、広まればいいな」
「はい、ソロバンの方も生産して行くつもりで御座います。 それで歳入の方が銀貨十二万飛んで九百枚となります」
「金貨二千四百十八枚か、凄いな。 しかし、その分出る方も多いんだろ」
「えー歳出につきましては、建築にかかる資材と各工房の材料となるものがおおございます。 それから食料や家畜の購入、村人以外の人件費などもろもろ細かいものがありまして」
「そりゃそうだろ、苦労かけるなクラーク」
「いえいえ、それから村人の給金についてですが」
「ああ、そうだな。 きちんと払ってくれ」
「それについてですが、役職に応じた給金になると、色々と役職名を作らないとですな」
「ああ、そうだな、同じ工房長でも重要性が変わってくるからな。 それは任せるよ」
「はっ、それについては草案がございまして・・・」
クラークが見せてくれたのは役職名の一覧表である。 内容は以下の通り給与一覧表になっている。 どうやら組織表も兼ねているようであった。
――――
宰相:クラーク・ヴァレンチノ
総務:執務・財務・法務
外務:
・外交
・防衛
指令>大隊長>中隊長>小隊長>班長>兵士
内務:
・建設
建築>工房長>親方>職人>中習い>見習い
・工業
・商業
・農業
・水産
――――
「うーん、これじゃまるで国の形態だな」
「はっ、ニショルクサ王国の組織を真似ておりますゆえ」
「そうだな、組織作りはきちんとしておかないといけないな」
「はっ、御意にて」
「目が変わったわねミシェータ」
「そうねジュリナ、カヅキは仕事になると人が変わるから」
「私たちわかんない」
「モモ、しっかり見ておくのも勉強だわ」
「ほーい、ミクの言う通り、大人しく見ておくー」
「クラーク、工房の組織はギルドと同じものなのか?」
「はい、親方が全員工房長になれるわけではありませんので、親方の上になります」
「工房長を統括するのは、誰だ?」
「実質の統括者はおりませんが、全てに長けている様な人物はクロサワ様以外には」
「いや、代表者と言う意味合いでいいんじゃないか、全ての工房は建設で成り立っているから、建設の呼び名を変えて上に上げるのがいいかもな、その上に企画立案の部署を置くとかどうだろうか」
「ふむ、確かに。 度の工房も事業拡大には、建設の手を刈りますからな」
「いや、建設と建築は別に考えてくれ。 道路整備や交通整備を含めて土木全般が要だからな。建設の下に建築は置かなけりゃならない」
「なるほど、では土木技師のゴドルボルグが適任ですな」
「あぁ、そうだな人事は任せるよ。 他にも作っておきたい部署があるがいいか?」
「ええ、勿論ですとも。 教育機関も必要でござますから」
「そうだな、軍部はこの先大きくなりそうだし、仕分けが必要だな」
「はっ、仰る通りです、クロサワ様」
「もっと組織図を見やすくしてみよう」
「と、申しますと?」
「んと、組織のクラス分けだな。 どの部署がどの組織に入っているかを明確にするんだ」
「はぁ、これでは問題があるのですか?」
「問題はないぞクラーク、判り辛いがな」
「モモわかんなーい」
「ハハ、じゃうちの食堂はどの部署かわかるか?」
「食料ですので軍の一部かと、クロサワ様」
「モモは砦の食堂だから、内務? かな」
「料理人も職人だから、工房になるんじゃないの?」
「ふっ、甘いわねミシェータ。 食堂は独立の部署よ」
「ジュリナおねー様、ミクもミシーおねー様と同じ意見だわ。 でも工房とは少し違って、お店を構えたり販売できるから「商い」になるのではないでしょうか」
「そうだな、ミクが正解だ。 生きて行く上で必要な衣食住、一番大事なものだからな」
「やったー♪」
「ちょっとカヅキ、わたくしも当てたわよ」
「あー、えらいえらい」
「ちょっ、なんかかるぅ」
「んーと、これでどうだろうか? 軍が作れるのは今のところ、小隊、中隊がせいぜいだろうが、これから先増えても対応できるだろう」
――――
☆外務省:宰相:クラーク・ヴァレンチノ
・外交部>情報課
・防衛庁・治安部>憲兵
軍部:指令>軍団長>師団長>連隊長>大隊長>中隊長>小隊長>班長>兵士>予備兵
兵士内訳:・歩兵(工兵・整備兵・衛生兵)・騎兵(偵察・通信兵・補給兵)・空兵(砲兵・狙撃兵)
☆内務省:宰相:クラーク・ヴァレンチノ
☆法務省・法令部・監査部
☆財務省:税務部
・執務部・経理部・人事部・企画部
・建設庁ゴドルボルグ
建築部:工房長>親方>職人>中習い>見習い
工業部:工房長>親方>職人>中習い>見習い
商業部:工房長>親方>職人>中習い>見習い
農業部:工房長>親方>職人>中習い>見習い
水産部:
・教育庁:学校長>教頭>教師>
学校(小等部・中等部)
兵学校(中等部・兵士過程)
――――
「ふむ、きれいに整理されていますな。 この省とか庁は見慣れないものですが」
「省と庁の役割は同じくらい重要なものだが、省の指揮下になるものだな、省>庁>だがそこから下の組織は>部>課となつてそれぞれの役割を持った組織って事になるな」
「ふむ、これはわかりやすいですな。 これに人事を当てはめていけばいいのですな」
「ああ、そういう事だ。 だが役職だけでは決めにくいだろうしな」
「と、いいますと?」
「ふむ、100人の長と10人の長とでは、同じには扱えんという事だ」
「何か良い案がありますので?」
「そうだな、安易な考えだが、等級を付けてみてはどうだろうか?」
「等級ですか?」
「成績順みたいな感じだよね? おにぃちゃん」
「あー、少し違うけど、似た様なもんかな」
「成果を上げたり、業績とか戦果の事よね、かづき」
「ああ、ジュリナの言う通りだな」
「フフーン♪」
「なるほど、褒章を授ける訳ですな。 同じ親方でも実績があれば、位が上がって行き給与も上がると」
「そうだな、現状ではそれなりの地位に居るものには、始めから位を上げておかないと、不満が出るだろうな」
「はっ、では具体的にその位とは?」
「うーん、俺の居た国ではその昔、官職があってだな、従位と正位というものがあったらしいぞ。 従八位の上が正八位でその上が従七位正七位だったが、役職とは別だぞ」
「ふむ、貴族のような身分制度ですな」
「そっか、そういう考えになるよな、やっぱまずいな」
「でも、業績を成した人が偉くなるのは当たり前の事ですわ、カヅキ」
「まぁ、ミシーの言う通り、位が無くてもあっても差別は必ずあるからな」
「そうよ、偉い者がうやまれるのは、当然だわ」
「後、武道の世界には段位や級もあるがな、十.九.八と上がって一級の上が初段で段位も二段から上へあがってくぞ」
結局、かづきの官位制度が実施される事となった、身分制度に繋がらないように、一代限りとすることも付け加えておいた。
次回は兵士として大事であろう講義が行われます。
こうして考えると、一兵士になるにも様々な事を行わなければならないのですね。




