異世界探求伝 第四十六話 ズナンの森での探索
ズナンの森へたどり着いた一行は、先へと進むのだった。
熊族のボピの活躍で、そのやりとりを見るだけしか無かったかづき達だったが、作戦終了の合図を送って来たボピの元へ急いだ。
現場は羽を焼かれたビースピナの残骸で、埋め尽くされていたが、まだ行くているものも数多くいるので、殺っていかなければならない。 首を刎ねて行くのだが、跳ねてもしばらく生きているようなので、注意深く太刀「セセラギ」に風を纏って首を刎ねていった。 こうすれば魔獣虫の体液に汚れないで済むからだ。
しっかし、大きな巣である。 木の上から落としたのか半壊してはいるが、3m位はあるだろう。 ボピはせっせと幼虫を袋に詰め込んでいるが、見てみると器用にビースピナの針で頭を刺しながら詰め込んでいる。 さすがハチ取り名人だ、手慣れた手つきに感心したかづきであった。 ボピがかづきの視線に気が付いたのだろうか、幼虫の頭をナイフで落とすと、まるで飲み物を手渡す様にかづきに渡すが、かづきは嫌々ながらも、頭の取れて中身がむき出しになった、ビースピナの幼虫をわしづかみにしていた。
「ゴクリ」
言っておくが、これはつばを飲み込んだ音だ。 決して幼虫の中身を飲んだのではない。
「ん? クロサワ様、はじめだか?」
「ああ」
このボピだが、小さい子熊で茶色のちぢれ毛は、まるで故郷の地球で子供に愛されていたデデベアの様で、愛くるしい顔をしている。 オスだと知らなかったら、直ぐに抱き上げてモフモフしたいところである。ボピは同じ様に幼虫を手に取ると、頭を刎ねて木の細い枝を突っ込むと、グルグルかき回して一気の飲み込んだ。
「ぷはぁ、やっぱぁ、獲れ立てがいっちばんだぁ」
彼は棒を入れに手渡すと、手ぶりの仕草をしてかづきに同じ様にするように促している。 かづきは渋々細い枝を突っ込むと、勢いよくかき回しそのどろりとした液体を口に含んでみた。
「んっ!」
うん、ほのかに甘くて濃厚な牛乳のような味がする。 すると、カヅキ何かを思いついたように、袋からラモンの実を取り出すと、その果汁を絞り込んでいく。 更に冷気をそいつの中に吹き込むと、もう一度かき回して味わってみた。
「うん、ヨーグルトだ。 ハハハ」
「おっ、クロサワ様、旨そうな飲み方だな」
ボピが欲しそうにしていたので、俺は更にもう一つ作って彼にあげてみた。
「ほぅ、これは冷えててうめぇだ」
ボピが美味しそうに声をあげていたので、他の者もこちらを見ている。 ジュリナとミクはもう待機しており、欲しそうなまなざしで俺を見つめてくる。 仕方がないので、全員分作ってやる事にした。 聞くところによれば、こいつはビースピナの幼虫がさなぎになったもので、「ビラルバ」と呼ぶのだそうだ。
確かに幼虫はもぞもぞ動いていたが、こいつは動いていない。 持った感じもしっかりしているし、少し変わった形で筋の入った白いジョッキと思えば、思えない事も無いような形をしている。 俺はビラルバを良く冷やして全員に作ってあげた。
「ぷっはぁ、美味しいカズキ」「ええ、おにぃちゃん、美味ですぅ」
「隊長、冷えてていいな、これ」「旨いであります」「美味ですがぅ」「にゃ」
「さぁ、先に進むぞ」
全員が回収した獲物を俺は収納袋に入れると、先へ進む事にした。
「カヅキ、雨が降るわよ」
「えっ? 空は青空だぞ」
ジュリナが差した方角を見てみると、樹木のすき間から黒い雲がズナン山のふもとに、懸かり始めているように見えた。 風向きでこっちに来るのが判るのだろう。 ジュリナは袋から何かを取り出すと、火を点けて何人かにそれを渡している。
「それ、なんだい?」
「ブラドリース避けよ」
「ブラドリース?」
聞くと、どうやら山ヒルのような感じだ。 なるほど、この煙玉はこいつが嫌う効果があるらしい。 全員がフード付きの雨具に着替えた様だが、 俺たちが着ているハッピコートは、水に濡れても大丈夫だし、コートの襟からフードが出せる様になっている。
「ちょっと待っててね」
ジュリナが一人で横道にそれると、しばらくして戻って来た。
「ロンガムベアがいたわ、あなたたち頑張ってね」
「はっ、よし、お前達いくぞ」「おう!」
「ランクcだが、ヤバかったらすぐ引くんだ。 命大事にだぞ」
「はっ!」
小隊長のバーミヤンに念を押したが、危険と感じたら勝手にやらして貰うつもりである。 先程ジュリナが帰ってきた先の左手の茂みから、ガサガサと音が近づいて来る。 俺たち三人は武器を片手に、固唾をのんで見守る事する。
「俺が敵を引き付けるから、ビームスはサブで補助を、ブルグ、ベベリ、ボピは援護を頼む」
「了解しました。 小隊長」「ニヤ、バゥ、ンガ」
ロンガムベアが茂みから現れると、一斉に獣人の三人は弓で攻撃、すかさず小隊長のバーミヤンが突撃して、弓でよろめいたロンガムベアの体当たりをぶちかました。 うん、いいタイミングだ。 獣人の三人は手早く得物を持ち替えると、攻撃を開始した。
ビームスは、小隊長のバーミヤンの横で付き添いながら、長剣で対応している。 ネコ族のブルグは小手にカギ爪を付けた武器で、木の上から攻撃する様だ。 犬族のベベリは、同じくカギ爪かと思いきや、曲剣を使っている肘くらいの長さはありそうだ。 小熊族のボピはメイスのようなものを使う様だ。 じりじりと右横から隙を伺っている。
ロンガムベアの肩口には、3本の矢が突き刺さってはいるが、特に意に介しているようでも無く、獰猛な甘い目を輝かせ両腕のカギ爪を左右に薙ぎながら、バーミヤンの盾を襲っているが、上手く体を入れながら鋭いカギ爪をいなしている。 しかし、その鋭い爪は金属の盾でも苦にしていないように、鋭いツメ跡を付けている様で、金属と爪が擦れ合う嫌な音が響いて来る。
バーミヤンの盾は片手で持つタイプで、楕円形の中盾で右手には長剣も持っているが、防御に必死でその件を振るう間もない。 ビームスは果敢に長剣を振るってはいるが、そのかぎ爪で上手く弾かれているので、未だ致命傷には至っていないが、そのうちいくつかの剣筋が奴の両腕を切り付けたようで、赤い血が流れ出て来た。 その隙に犬族のベベリは、左側面から足元をすり抜けて傷を付けて行き、そんな隙を小熊族のポビがメイスを打ち込んで行く。
「グウゥオオー」
ひと際大きな叫び声を発したロンガムベアは、後ろへ後ずさりしていく。 これは逃げるのかと思ったが、そうでは無かった。 一しきり下がると、今度は猛然とバーミヤンの盾めがけてダッシュをして来た。
「ドゴーン」
猛烈なロンガムベアの体当たりで、バーミヤンの盾もろとも吹き飛ばされ、後方に倒れ込んでしまった。 襲われそうだったバーミヤンのフォローに、ネコ族のブルグが果敢に背中にかぎ爪を突き刺し、気を逸らしてくれたおかげで、サブ盾のビームスが間にあったようで、ロンガムベアの前に立ちはだかった。
モモがすかさずバーミヤンの元へと駆け寄り、応急処置をしてくれているが、手助けに入るか迷うところだ。 ジュリナの方を見たが彼女は首を横に振っているので、ここは今暫く傍観しておこう。
ビームスは盾で身構えながら、剣で突き刺したが相変わらず爪で弾かれているが、その合間を縫ってベベリとポビが上手く連携して、左右攻撃を可能にしている。 ビームスは懐から何かを取り出すと、ロンガムベアの顔面に投げつけた。
袋状のようなものだが、奴の顔面で粉を吹いている所を見ると、目つぶしか何かだろう。 ロンガムベアは。狂ったように首を振ると、後方に逃げ始めた。 しかし、闇雲に逃げたせいで大きな木にぶつかってしまった。 その隙に上からネコ族のブルグがうなじに鋭いカギ爪を突き立て、すかさず駆け寄った三人も首元をめがけてそれぞれの武器を振るっていた。
「グウゥオオー」
ロンガムベアは、すかさず立ち上がって闇雲に爪を振り回すが、止めはビームスの長剣であった。 脳天をかち割られたロンガムベアは、咆哮をあげるとその巨体を地べたにさらけ出した。
「よし、皆、お疲れさん。 武器の手入れをして、少し休め」
「ハァハァ、了解です隊長」「ハァハァ、ガウ」「ゼェゼェ、ンガ」「にゃい」
「申し訳ありません隊長」
小隊長のバーミヤンは、申し訳なさそうにしているが、小隊自体は敵は倒したのだから問題は無い。 しかし、及第点は与えられないだろう、ロンガムベアの体は傷だらけだ。 これは毛皮の質を落とすだけではなく、それだけ無駄な攻撃が多いという事だ。 ジュリナはロンガムベアの処理を行い、モモは辺りを警戒している。 この間に反省会でも開くとしよう。
「まず、ビームスはバーミヤンの補助に回って、スムーズに標的を確保したのは良しとして、それ以前の突進時の対処がなっちゃいないな。 防御のスクロールを渡しているはずだが」
「はっ、申し訳ありません隊長」
「わ、私のせいですみません、クロカワ様」
「ビームス、お前は最後だ」
「はっ」
「次にブルグだが、お前は身軽な為に遊兵としての任務行動みたいだが、目つぶしなどの補助はお前がやるべきだと思う。 死角を上手くつけば弓も使えたはずだぞ」
「はいにゃ」
「次にベベリとポビは、連携は良かったが、攻撃にムラがあり過ぎだ。 足元を狙うならひざから下を狙え特に有効なのは足首か足の甲だぞ」
「了解がう」「了解だ隊長」
「最後はビームスだ。 盾役は受け止めるだけが能じゃないぞ。 もっと捌く事考えろ」
「捌く・・・ですか」
「そうだ、左右にいなしてかわす事で、標的の体が流れる事もある。 そこで攻撃を入れろ」
「はっ! 精進いたします。 クロサワ隊長殿」
「それからこれは全員に申し渡すが、基本的に攻撃は敵の弱点を突く事だ。 関節部分には筋肉が付いてないから、そこを狙え。 特に首回りは最大の弱点だし、顔面攻撃は致命傷にならずとも敵は嫌がる」
「はっ、はい、ガウ、ンガ、ニャ」
かづきは盾職の経験など無いのだが、戦闘自体は実戦を何度か経験しているので、見ていればその経験則で理解は出来るのだ、それに教える事とは自分が覚える事でもある。教わって学習するよりも、教えて学習する時の方が物覚えが良いのが現実なのである。
かづきは盾を借りて、その動きを行っていた。 この時気づいたのだが、盾の注文はしていなかったので、盾の注文と使いやすい盾の事を考えながら体捌きをしていた。 そうこうしている内に、ジュリナもロンガムベアの解体が終わったようで声を掛けて来た。
「終わったわよカヅキ」
「わかった、ご苦労さん。 今行くよジュリナ」
かづきはロンガムベアの毛皮などの部位と、肉や内臓を各々の箱に詰め込むと、収納袋へ仕舞い込んだ。今回はロンガムベアの血まで回収していたが、きっと何かの目的があっての事だろう。 かづきは全員の準備が整ったことを確認すると、再出発の号令をかけた。
「よし、小隊長ビームス、出発の号令だ」
「はっ、カヅキ様。 全員シュッパーツ」
「はい」「はーい」「はっ、バゥ、ンガ、にゃぃ」
しばらく緩やかな山道を登って行くと、うっそうと生い茂ったジャングルのような場所にたどり着いた。 森に入って、ここまで正味5時間程だろうか、辺りは湿気がやけにするが、低気圧のせいだろう。 すると、その時かづきのイヤーカフから通信が入ったのだった。
『「コール・カヅキ」:こちらクラーク、緊急連絡あり』
『「アンサ・クラーク」:こちらカヅキ、オールコマンドで会話せよ』
『「コール・オール」:こちらクラーク、緊急連絡あり』
『「アンサ・クラーク」:こちらカヅキ、嵐の事か?』
『はっ、さすがクロサワ様』
『いや、ジュリナが教えてくれたんだ。 で? 細かいことは判るのか?』
『はっ、 今夜あたり暴風雨が来ると予想されます』
『了解した。 こちらは安全地帯でやり過ごす。 そちらの対策は?』
『現在準備中です。 砦村全体に土壁で覆うつもりで御座います』
『そうか、バリアはダメージで消えるから、不向きだしな』
『はっ、そのようで』
『全員聞いているな、採取組は今夜は野営になるが、心配無用だ』
『ミシェータよ、怪我人はでていないわよね』
『ああ、全員無事だ。 クラーク、飲料水の確保と食料の準備はしているな』
『はっ、勿論です』
『判ったクラーク、お互いの無事を祈ろう。 こちらは以上だ』
『旅の安全をお祈り申し上げる。 以上』
こうして、通信は切れたが、小隊の皆は俺の会話で、ほとんどその意味を理解している様だ。 俺は風が防げる地形を探せと小隊長のビームスに命じると、足早にその場所から離れる事にした。 希望の地形は小高い地形である。 こういった地形であれば、風を直接受けずに済むからだ。 こうして俺達一行は足早に先へ急いだのだった。
ミク:もちもち、モモ、嵐は大丈夫そう?
モモ:うん・・・おにぃちゃんいるしね。
ミク:いいなぁ。
モモ:ミクには、ちゃんとお土産あるからね。 大人しく待ってるんだよ。
ミク:はーい




