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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
砦村編
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異世界探求伝 第四十五話 ズナンの森へ

雑用の多いかづきですが、いよいよズナンの森へお出かけのようです。

 一晩明けた翌朝かづきは、早くに着替えて例の結界に来ていた。

ネコ好きはともかくも、今日は外出するので猫が出てくるのなら、外へ逃がしてやろうと思ってに事である。この世界の魔物の生態は、いまいち判ってはいないが、自然のものは自然に返すのが一番である。


「おいネコ、また来てやったぞ。 今日は外出するからな、相手してやれないぞ。 森に帰るなら連れて行くがどうする?」


返事がある訳ないかと思いつつ、餌の器に肉と水を入れてやると、気配がしたので少し離れて見守っていると、ネコがとうとう出て来たのだ。 すすけて汚れているが、怪我などは無い様だ。 全体に薄茶色で黒い真っ赤のような模様があり、頭部から腰にかけてたてがみが伸びている。 


ネコの魔獣はこちらを一睨みすると、ガツガツと肉を食べだした。 どれだけ食べるのかは判らないので、量は少なめにしておいたが、育ちざかりなのか昨日からよく食う気がする。 確か肉食獣は食いだめするから、一度食べるとしばらくは食べないはずなのだが、こいつの食欲は旺盛な様だ。 暫くして、食べ終わったころ合いを見計らうと一声掛けてみた。


「おい、おまえ。 外に出たいのなら連れだしてやるからついて来るか?」

「フゥー!」

「おいおい、俺はなのも武器を持っちゃいないぜ。 ちったぁ信じてくれないか?」


ネコは俺の顔を一瞥しただけで、水を飲み始めてしまった。 しかし、この場所は石材置き場なので、どうしても人はやってくる。 どうしたもんだと地べたに腰掛けて考えていると、地面の匂いを嗅ぎながら奴が少しづつ近づいてくる。


俺はゆっくりと、手を差し出し息を殺して、その様子を伺っていた。 猫科の動物に限らず哺乳類のほとんどは、匂いに依存している。 指を出すと反応して匂いを嗅ぎに来るのは、この反射行動のせいなのだ。 俺に敵意が無いのがわかっているからなのか、そろっと近づいてきた猫は俺の匂いを、クンクンと念入りに嗅ぎ始めた。


この時に触ろうとするのは逆効果であり、相手の成すがままにしておくのがベストである。 餌は食ったので、攻撃しようとしない限りは、かじったりしないであろうという俺の判断は、まさに正しいものであった。 猫は俺の近くにちょこんと座ったままで、俺の目を見ている。 眼からは攻撃的な感情は見当たらないので、もう一度話しかけてみた。


「おい、おまえ。 外に連れて行くから、俺についてこい」


俺は、刺激しないようにゆっくりと立ち上がると、結界を外してゆっくり歩き始めた。 猫も俺の後を追って着いて来ている様だ。 まだ夜が明けたばかりなので、人も居ないしチャンスである。 俺は西門へゆっくり歩き始めた。


門番が見張りをしており、そのうち2人がこっちに気付いた様だ。 俺は指で口で押えて合図をしながら、後方にいる猫を指さした。 すると門番もそれを理解したようで、黙ってこちらの意のままの行動をしてくれている様だった。 門を抜けると、ネコは外に出られたのが判ったように、緑のある方向へ駆け出して行ったので、俺はホッとした。


「おいネコ、土産だ}

俺はそういうと、袋から手早く肉を切り分けて、大きめの肉の塊を放り投げてやった。 一旦駆け出していたネコだったが、戻ってくるとその大きな塊肉をくわえて、どこかへ消えて行ってしまった。


「やぁ、お前達ご苦労だったな」

「ボス、お疲れさんっす。 良くあの魔獣を連れ出せたもんですね」

「ハハハ、かわいそうだからな」

「へ? かわいそう?」


俺の意識のずれがあるようだが、気にはするまい。 門へ戻って中へ入ると、そろそろ人も集まり始めている様だ。


「ふぅわーぁ カヅキ早いのね」「おはよう、おにぃちゃん」

「おはようジュリナ、モモ。 あいつを今逃がしてやった所だ」

「あら、それは見たかったわね」


何が珍しいのかはわからないが、二人はきちんとチーム龍の正装で、準備万端の様だ。 俺も久しぶりの開放気分で胸がわくわくして、気分も高揚していた。


ジュリナをギュッと抱きしめて、一回りすると軽くほっぺに口づけたら、モモもして欲しそうな顔をしていたので、高い高いをするように、上に軽く放り投げて抱きしめると、同じく頬にチューしてやったら「キャッキャ」と二人とも喜んでくれたようだった。 


「ボス! おはようございます」

「えっと、お前は確か・・・」

「顔を覚え頂き恐縮です。 バーミヤンと申します。 今回はこの部隊の小隊長に任命され、光栄の至りで御座います。 クロサワ様!」

「え? あ、ああ よろしく頼むぞ」


本当は顔も知らないのだが、この辺はジャパン人の気質というか、癖というものだろうか。 つい知った気で話しかけてしまった。 つい兵隊言葉につられて、俺もその気になった喋ってしまった。


「えー、今回の任務は、大事な補給物資の確保と、実地訓練が目的である! 皆の者心してかかるように」

「はっ!」「はい」「はっ!ボス」「了解です」「わっかりますた」


食料は俺が持っているので、必要なのは各自の装備だけだ。 俺は一人ひとり念入りにチェックすると、早速出発する事にした。 馬車を用意して来てくれたのだが、進捗(しんちょく)の速さからも馬で行く事にした。 


「それでは諸君、我が砦村特別隊はこのまま南進する。 任務遂行を願って一同! 敬礼」

俺の手の平を額に当てる「敬礼」を真似て、みんなが真面目にやってくれたが、少しやり過ぎた感はあった。 しかし、ジュリナとモモは尊敬のまなざしで見てくれているので、これはこれで良しとしよう。 軍事経験は無いが、ドラマや映画の影響で、模倣行動のいくつかはできるつもりである。


何事も「型から入る」というのは重要な事なのだ。 俺の馬は前回の冒険でお世話になったあの「うま」であった。 単にうまは可愛そうなので、毛色と額の星をイメージして「黒龍号」とした。 まだ3歳の若駒らしいが、馬の世界では立派な青年である。 地球であれば競馬会でデビューできる歳なのだ。 


先頭はこの辺の地理に詳しい、眼のいいネコ族のベベリと、鼻の利くイヌ族のフリードが走ってくれた。 八人の部隊人数で合計馬は五頭だが、小柄な獣人は二人乗りである。 俺もモモを乗せて後方を走っているのだ。 えっ? いつの間に乗馬をって? 


この黒龍は、鞍に鐙(あぶみ)を乗せているだけで大乗なのだ。 何故だかは判らないが、俺の言う事は良く分かっているようで、きちんと走ってくれているから大丈夫だろう。 この砦からズナンの森に入るには、直接森に入り山越えする方法と東へ向かって街道へ出るか、南へ山越えして南側の街道沿いの方法がある。


東にある街道は、俺がズナンの町にやって来た時に、馬車に乗せて貰って通った事のある道なので、今回は違うルートを選んだわけだ。 この辺の地形に慣れておく必要もあったし、何事も経験なのだ。 山道を下るルートで、馬車一台分のスペースしか無いが、各自馬にしたので問題は無い。俺達は曲がりくねった山道を下って行った。


 山をようやく下った先には、森が開けていた。

下りだったので、以外に早く降りられた気がする。 ここから、ズナン山へ向かって徒歩で山登りらしいので、少し早いが手早く昼食とする事にした。 サンドイッチは、かごに十食分×三つ分あるので、デーンと真ん中に置いて食べる事にする。 平らな場所を探して、テーブルといすを並べれば準備万端だ。 小隊の連中は、馬に水やりと飼い葉を食べさせているので、終わるまで待つとする。


「なぁ、ジュリナ、お前はここに来た事があるのか?」

「ここは、初めてだけどズナン山には、何度か登ってるわよ。 余り大きな山じゃないから、狩りには最適な場所なの」

「ズナンのグランダム第二習学所じゃ、上級生になると演習で魔物狩りに来るわよ。 おにぃちゃん」


「へー、そうなんだ。 じゃ、あんまり強い魔物はやっぱり居ないんだな」

「そうね、魔物の巣に潜らなければ大丈夫だよ」

「へぇ、ダンジョンあるんだ」


話し込んでいたら、馬の世話もどうやら終えた様だ。 小隊の連中がやって来たので、紅茶片手にサンドイッチを摘まむ事にする。 馬たちとは、ここでしばらくおさらばという事になる。 また、結界を張る事になるが、今回は俺が結界を覚えたので大丈夫だろう。 


ここいらは森が周囲にあり、青草も沢山生えているので安心だろう。 しかし、あまり広い結界を張ると、それだけ面積が広くなり何者かに見つかる可能性もあるし、魔力も大変だからとミシェータに注意されていた。 俺は、全員が食事を終えたのを確認して、馬たちの周囲に結界を施した。 飼い葉や水はたっぷり用意してあるので、馬たちもゆっくりくつろげるだろう。


「さぁ、ここからは、武器装備で安全確認しながら先を進むぞ」

「はっ! 隊長」「はっ」


隊員たちは、声を合わせて返事をしてくれるのは良いが、いつから隊長になったんだと思いつつ、編成を組む事にする。


「前衛の前に、ネコ族のブルグ、索敵しながら敵を発見次第報告せよ」

「にゃい、は、はっ」


あれ? 今猫語を喋ったような気がするが、気のせいだろう。 男だし可愛くもなんともない。

「ブルグは的発見後中衛に回り、先頭の状況確認並びに周囲の警戒をせよ」

「はい、にゃ」


ふむ、やっぱり言ってるな。 しかし、気にした方が負けらしい。 周囲は無反応だ。 前衛は盾が使える小隊長のバーミヤンと、ビームスのヒューマン二人の間に、小熊族のボピを置いて、前衛を3人とする。 ボピを前に置くのは背が低い為に、両脇にいる盾職のヒューマンの邪魔にならないだけでなく、小刻みな攻撃を期待しての事だ。 


背は低いが小熊と言っても獣人だし腕力も強いらしい。 中衛には、犬族のベベリにジュリナで、この間に索敵を終えたブルグが入る予定だ。 従って後衛は俺とミクで賄う事になる。 グロッグの使用は許可してあるし、調整し終えた銃の使用感も確かめられるだろう。


「最初の敵はお前達だけで仕留めろ。 いいな」

「はっ!」「ンガァ」「はい隊長」「ガウ」「ニヤ!」


うーん、返事はもう気にするまい。 俺はジュリナとミクには手出し無用を告げたが、臨機応変にやるように指示した。 死んだら元も子もないのだ。 安全に連れて帰るのも俺の義務だし、災悪撤退も考えているつもりである。


「カチカチカチカチ」

「ん? なんだ」

「すいませんにゃ、 見つけそこないましたが、ビースピナの巣が近くにあるみたいにゃ」

「とりあえず、このまま後方へ下がるぞ」


―ビースピナ― ランクC

肉食のハチで、森に住む。 体長は10㎝程だが、集団で襲って来るのが脅威。

毒針を後尾に持っているが、一度刺すと死んでしまうので滅多に刺さないが、毒性は強く炎症を起こす神経


毒を持っている。 大量に刺されると死の危険もある。

一番の武器は牙である。 木の汁や花の蜜も食べるが、肉食を好む。


巣の近くや攻撃対象になると牙で威嚇音を出し、羽音も変える。

これは仲間を呼ぶ合津でもあるので、少人数なら速やかに逃げる事。 弱点は火


素材部位:毒針及び毒腺 

可食部位:幼虫 


――――

聞けば威嚇音だけなら、襲って来る心配はないらしいが、どうするか判断は小隊に任せてみよう。 撤退なら順路を変えればいいだけの話だし、こいつ等の考えも聞きたい。


小隊は輪になって、相談して居るようだが、何かごそごそしている。 良く見ると太い枝に、千切った布を何かの液体に含ませて、グルグル巻いているようだった。


「あの左手の奥の大木だにゃ」

「んだが、行って来るべ」

「おいマテ、何を言ってる」

「あっ、すいません隊長、ご報告します」


小隊長のバーミヤンが言うには、小熊族のボピはハチ取りの名人だそうで、毛が剛毛な為にハチの牙も毒針も通さないそうな。 木の棒で作っていたのは松明で、これで羽を焼くんだそうだ。 確かに羽が無くなってしまえば、さほど怖いものでは無い事は俺も承知している。 


ただ、実際見てみなければ、何とも言えないのも事実だ。 なんせこの世界の魔物はサイズがでかいのだ。兎にも角にも自信満々の様だから、そのままOKを出して様子を見る事にした。


しばらくして、物凄い羽音がしたかと思ったら、白い煙と何やら香ばしい匂いが立ち込めて来た。 気になったので、水レンズを作って眺めていると、凄い事になっていた。 ボピは自ら木に登り、松明に火をつけながら、巣から這い出して来るビースピナを次々と焼いていたのだ。


「何か、豪快だなモモ」

「ハハハ」

「そろそろ終わりそうよカヅキ」


ジュリナの言葉とほぼ同時に、向こうからボピの声がした。 流石にハチ取り名人だけの事はあるし、仕事も早い。 俺は感心して、みんなと現場へ向かう事にした。


ジュリナ:ハチの子って美味しいんだよ

モモ:そうなのですか? お嬢様

ジュリナ:うんうん、少し甘くてクリーミーなのよ。 あっちにも効くみたい。

モモ:あ、アッチって・・・ぽっ」

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