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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
砦村編
41/172

異世界探求伝 第四十話 迷い込んで来たモノ

何があるんでしょうか。

 取り敢えず、試作を作る事にしたかづきは、手作業で製作を始めるのだった。


親方に途中で交代して貰い、ようやく一本の棒状の板がようやく切れた。 後は先を鋭角に切り取り、刃を付けるだけだ。 二五㎝の長さなので柄の部分と先の加工などで、刃渡りは二三㎝ほどになるだろう。


ナイフは刺すのに特化しているので、刃先は力点の真ん中に来なければならない。 片刃のナイフではあるが反対の切っ先も刃は付けないが、刺しやすくする為に削るつもりだが、これはデザイン性も問題だ。 やはり、格好の良いものを作りたいのが本心である。 


後は背面はノコ状の刻み二㎝刻みでを付けたが、これは典型的なサバイバルナイフの形で少し深めである。 あらかた形が出来たので、あとは焼き入れと戻しを親方に頼む事にする。


「ガスド親方、後は頼んでおくよ。それから鉄鋼で、今度は円柱の棒を作って欲しい。 幅は1㎝ 0、5 0,25だ。」

「おう、任せろ」


「おにぃちゃん、おなかすいたー」

「ああ、そうだな。 ガスド悪いが先にめし食って来るぞ」

「おう! わしも後からいくからな」


昼時なので、モモと食堂へ向かったが、盛況である。 食堂は基本的にビュッフェ方式になっているが、これは種族間の好みの問題もあるが、食べる量の違いにもあるのだ。 小人族は少食だし、獣人でも熊族などの大柄な連中は底なしに食うのだ。


「おにぃちゃん、ポルポルノ実があるわよ」

「なんだっけ」

「これこれ、甘くておいしぃの」


お盆に山積みにされており、薄緑色だが少し黄色みのがかかったものもあり、形は芋の様だったが手に取ってみると少し柔らかい。 匂いを嗅いでみるとほのかに甘い香りがした。


「食べた事無いな、一つ貰おう」

お盆にその、ポルポルノ実を一つ取り、空の皿をお盆に置くとビュッフェへ料理を取りに行く。 基本的に食べた事が無いものを選ぶつもりだが、見た目で判断しないようにあらかじめモモに聞く事はやめておいた。 


白いマシュマロみたいな奴で、美味しそうな焼き目が付いたもの。 肉と野菜の餡かけ。 茹で野菜にマヨネーズドレッシングがかけられたものをチョイスすると、黒パン一欠けとオレンジっぽいジュースを取ってテーブルへと向かった。 モモは魚が好きらしくて、魚を選んでいた。


「いっただきまーす」「精霊に感謝を捧げます、モニュモニュ」


白いマシュマロみたいなものは、歯ごたえと言うほどの事は無いが、濃厚で白子のような味わいだった。 とろっとしていて、中々いけるものだ。餡かけは塩味でぺペロンが効いているが肉が豆腐みたいに柔らかいのだが、繊維はきちんとあり噛むと味が染み出て来てとても美味しい。 


野菜は野沢菜? みたいな感じで、少し苦みがあるが肉と良くマッチしていた。 黄色い四角の物が混ざっているが、これは卵焼きを切っていれているようだった。 茹で野菜はニンジンっぽいのと、Pマン、玉葱、ジャガイモのほぐしたものが、塩と香辛料で味付けされており、その上にマヨとネギみたいなものが上にかかっている。 モモは苦手の様で、ジャガとニンジンだけを取っていた。


「あーっ、食った食った」

「うん、おいしかったー、このびゆっふぇ? っていうのいいね」

「ああ、俺の国では人気があったんだ。 でもあまり好き嫌いするなよ」


「うーん・・・ はい、わかったわ、おにぃちゃん」

「モモはえらいなぁ、ところで答え合わせしたいんだが、あの白いものって何の肉だ?」

「ああ、あれね。 おにぃちゃんあれ嫌いだって、クラーク様が仰っていたけど食べられたのね。 人に言うだけじゃな買うて、率先して嫌いなものを食べるって素敵だわ。 私もおにぃちゃんを見習うわ」


「う? 嫌いだって、俺が? なんだろ」

「んとね、ギューネ・カタピラっていうの。 わたしは好きよ」

「うん、ギューネ・カタピラね、覚えておこう。 魔獣なんだな」


「いや、違うよ、魔獣虫だよ。 粘着液を吐き出して、相手を動かせなくするのよ。 戦う前には体に油を塗っていおかないと、一人の時は危険だよ」

「う、うぐっ、 それってさブラウンシチューに入ってたやつか?」


かづきは、ズナンの町に初めてやって来た時の、酒場で食べた料理を思い出していた。 少し「うぷっ」としたが、ジュースを飲み干してそれを誤魔化した。 


「うんうん、ギューネシチューだよ、美味しいよね」

「あ、あぁ、う、旨かった」

「餡かけに入ってたのは、この前みんなで依頼受けたリザードボアだよー。 中々珍しくて食べられないから、わたしも沢山食べちゃった。 あはは」

「ああ、あのカバみたいなやつだな、中々繊細な味わいだったよ」


俺は芋虫の事は気にせずに、デザートのポルポルノ実を食べる事にした。 モモちゃんお奨めの品である。

見よう見まねで皮を剥くと、簡単に剥けたが中は白い果肉だった。 俺は取り敢えずひとかじりした。


「うん、甘いな歯ごたえはそれなりにあるが、柔らかい。 味は濃厚とまでは行かないが、これは食べた事のある味だ」

「でしょ? ポルポルノ実はあまり嫌いっていう人いないのよね」


「黒い種が面倒くさいな。 これ出しながら食うのか?」

「お上品な人は出すけどねー、わたしはそのまま飲み込んじゃうよぉ」

「うーん、噛んでみると、苦みがある。 噛まずに飲み込むのがいいのか」


食べ終わって、外の長椅子で一服していたら、木工職人のオゴハと鋳掛彫金師のハグネットが仲良く食事をとっていた。 食事が終わるころを見計らってあいさつに行ったのだ。 お礼を言いたかったしな。


「やぁ、ハグネット、金剛石の粉助かったよ」

「やぁ、これはクロサワ様、それは何よりです。 まだお入用でしたら差し上げますよ?」

「うんうん、沢山ほしい、ハグネットは何に使ってるんだ?」


「ああ、あれは金属の艶消しに使うんですよ。 あの粉の中で金属を振ると、いい塩梅で輝きを消せるんです」

「なるほどな、高いものなのか?」


「えっと、金剛石の透明な部分は、貴族が好んで宝石に使ってますよ。 粗削りした時のクズですからタダ同然で、手に入りますよ」

「そっかー、それはいいこと聞いたな。 手に入るだけ手に入れておいてくれ、クラークに伝えておくから、手間賃はそっちから貰っていいぞ」


「あぁぁ、それなら・・・クロカワ様にお願いがあるのですが・・・」

「うん? 聞ける事と聞けない事があるぞ」

「ええ、銀食器にも目処がついたので、あのハチの巣ですかね、あれをモチーフにして宝石箱とか、小物入れとか作りたいのですが、それに使う宝石を少々仕入れたいのです」


「そっか、そういうのもあるよな。 うーん、後で工房の研究予算も組ませよう」

「それは、ありがたい話です。 なんせ職業柄、高価な品を扱う事が多いものですから」

「うん、そうだな。 その辺も考えておくよ」


「有難うございます、クロカワ様、後でいらっしゃるのでしょ?」

「そうだな、水車の具合を見てから行くよ」


――――

おれは一緒にいた小人族のオゴハを連れだって、木工房へと出向いたのだった。

「昼前にようやく出来たんだべ。 おせぇてもろうた竹釘なぁ、あれはええなぁ」

「そうだろ、竹は腐らんからな」


俺は日本の誇る組木を取り入れた水車作りを、行ってみたのだ。 特に水車では始終水に浸かっているので、鉄を使うと腐ってしまう。 それに良い技術を知っていて、それを放っておくのも勿体ない事なのだ。


かづきは人の生き死にに関わらない部分なら、全ての技術を提供してしまおうと考えていたのだった。


かづきは木工房のオゴハの元へと出向いていた。

水車の試作が思ったよりも、早く完成していた為である。 直径五mもある大きな水車を、彼は身体強化をを使って外へと持ち出した。 これは試運転の為である。


「ベアリングが出来たら、こいつの回転軸にも使えるな」

「ふぅ? 回転軸にベア・・・だべか?」


「ああ、ベアリングって言うんだ。 今開発中だから待っててくれ」

「ふーん、おら、わかんねけど。 カヅキさまぁの言う事はてぇしたもんだから、言う通りにするだべ」

「ハハハ、オゴハが楽になれる様に頑張るよ」


俺は工房街から出て、水堀の場所へと赴いた。 あらかじめ石工のカッパーに土台を頼んでいた場所だ。 この場所は全体的には六角形に水路が作られているが、広い為に直線になっている場所も多いのだ。 この場所には水路の分岐を作っていて、(せき)も設けてある。


俺は注意深くオゴハ達に手伝って貰いながら、水車を土台に設置した。 この中には例の元盗賊団だった者達五人も含まれている。 「ボス、ボス」としつこいのだが、小人族は得てして何でも興味を持ち、手先が器用な連中ばかりだ。


「ゴトン」

上手く土台に(はま)った様だ、ゆっくりと手で回してみるが、大丈夫そう。 水車の使い道だが、回転させるのだから動力源には持って来いで、他には水流の方向を変えて違う水路に水を流したり、より上へと水を上げる事も可能である。 この砦から北の山中に大きな湖があり、その地下水が豊富な水量をたたえているのだ。


「よし、(せき)から水を入れてくれ」

「わかったべ、ほれ! おめさたち、堰を開けろ」

「へい」「おぅ」「へー」「おー」


こちらの水路に堰から放たれた水がやってくる。 水量は徐々にだが水路に流れ始めた。 その内次第に水かさが増して来ると、水車はゆっくりと回転を始めたのだ。


「うーん、音があまりしねぇだべな」

「そうだな、お前たちの腕が良い証拠だぞ」

「えへへ」


こいつらは、「成功ですか?」などと野暮な答えはしてこない。 それだけ仕事にプライドを持っているんだろう。 とにかく水車は成功だ。 作業を分業にさせている事も良かった。 


一人の匠が作り出すのも良い事とは思うが、そんな匠なら沢山いた方が良いに決まっている。 だが、同じ職業についていても、作業工程に向き不向きもあり、それを判断して効率の良い作業をさせるのが親方の役目である。


「よし、大成功だ。 オゴハ、これを二十基作ってくれ、木材は何を使ってるんだ?」

「わかったべ、木はこの辺に生えてるヤニの木だべな。 水っけにツエエんだべ」

「そっか、そりゃいい」

「正式には、ピヌスの木ってやすが、こいつが落とす木の実は美味しいんですぜ、ボス」


教えてくれたのは元盗賊のアルハって奴だが、この話を聞く限りは松の木で間違いなさそうだ。

「そうか、ヤニは何かのすべり止めに使うのか?」

「手に塗って使いますが、酒にもいれやすよ。 香りがいいんでさぁ」

「ピヌス酒か、旨そうだな。 ヤニなら他にも使えるな」


俺は水車を止めて一旦持ち帰る事にした。 一度乾かしてから、タールを塗って貰おうと考えている。 防水になるから、持ちが更に良くなるだろう。 今回の水車は、回すだけだったが、動力用の水車ならば、車軸と歯車も欲しいからだ。 俺は石工のカッパーに、粉挽き用の石臼と粉砕用の石臼を発注しておく事にした。 


オゴハはまだ馬車について聞きたがっていたが、とりあえずは、接合部分を六角にすると良いと言っておいた。 この地の道具を見てみると、形が丸か四角しか無かったからだ。 丸いものは摩擦が少ないので、回転させる事に向いており、角のあるものは固定する事に向いている。 俺とモモは木工房を離れると彫金師のハグネットの元へ急いだ。


「ん?」

「どうした? モモ」

「広場の方が少し騒がしいですよ」

「そうか、行って見よう」


二人は中央にある広場へと、足を進めた。 広場に近づくと何やら人の輪が何かを取り巻いて居る様だった。 中にはジュリナの顔があったので、直ぐにそちらへ向かったのだ。


「フウー!」

「ちっ、こいつめ、すばしっこい」


何やら棒を振り回しているのは、警備兵となった元盗賊団の面子である。 何かを追いかけ回して居る様だった。


「ジュリナ、何やってるんだ?」

「ああ、カヅキとモモ。 あのね、ネコが迷い込んじゃったらしいのよ」

「ネコ? いるんだな。 始めて見るな」


「ここに石材積んでるでしょ、そこに逃げ込むから中々捕まんないの」

「捕まえて逃がすのか?」

「うーん、食べちゃうには小さすぎるし、殺すんじゃない」


「えっ、かわいそうだろ」

「だって、人襲っちゃうよ?」

「そうなのか?」


「うん、幼児程度なら、引きずっちゃうよ」

「そっか、一応魔物みたいなものなのか、それで飼う人居ないんだ」

「アハハ、相手は猛獣よ、飼う人はティマー位しか居ないわよ」

「ふーん、手なずける事はできるんだな」


見ていると、一人が長い棒で隙間に差し込んで追い出している様だ。 しかし、追い立てられたネコは、また次の穴へと潜り込むので、まるでいたちごっこのようであった。



モモ:まったく!プンプン

ジュリナ:どうしたの?モモ

モモ:おにぃちゃん、私を猫扱いにするのー

ジュリナ:獣人の事あまり知らないから、しょうがないのよね

モモ:プンプン! でも、あの魔獣どうするんだろ

ジュリナ:そうねぇ、食べ応えも無いし、皮も小さいしね

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