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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
冒険編
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異世界探求伝 第二十六話 魔物討伐へ

いよいよ、戦いが始まるみたいですよ。

 明けて本日は魔物狩り、曇り空だが馬車で冒険者ギルドへと、俺と女性四人で向かう。

手ぶらに近いが、荷物は各自収納袋に入れている。 意気揚々と行楽気分で冒険者ギルドへと入ると、女性陣は一目散に掲示板へと向かった。 討伐依頼は、ジュリナとミシェータで選んだ様だ。 俺はお小粋なパナマ帽を脱ぎ、受付へと進んだ。


「カレンさんでしたっけ、こんにちは」

「あらあら、まぁまぁ、何処で約束すっぽかしているのかと思えば、カヅキ・クロサワ様ではありませんか」

「あ、すいません。 忙しいもので」

「あら? お忙しいのに女性ばかり四人も引き連れて、さぞや大変で御座いましょうね」と、棒読みである。

「いや、ちょっと・・・・・・周りが何か見ているし、依頼を・・・・・・」

「あら、お誘いの日時と場所は? とか言う前に依頼の話ですか」と、まぁ毒舌を吐く受付嬢カレンなのだが、これには訳がある。 


先日のランク試験の際に、お祝いと称してお誘いを受けたのではあるが、此方としてはそれを丁寧にお断りした筈なのだが、「社交辞令」がこちらでは余り通じないのだそうだ。 それで、こうしてカレン嬢に口撃を受けている次第である。


彼女の名はカレン・ミルフォード。 外見は華奢で胸はB位か、吊り上がった眉は怒っているのでは無く、聡明さを感じさせてくれる。 両耳がツンとしており、深い碧のボブがとてもお似合いで、美人秘書と言うイメージなのだ。 エルフ族でギルドにこの種族が多いのも、契約が多く発生する事項が多いからだと、ジュリナが教えてくれた。


「勘弁して下さい。 何か凄く周りが睨んでいるんですが」

「では、どのように対応して下さいますか?」

「えっとー、これ、これを差し上げますので」と、慌てた俺は、咄嗟に袋からドライフルーツを何故か出してしまった。


「あら、アンズですわね。 わたくしの好物ですわ。 良くお判りになりましたわね」

ほっ、偶然だがエルフは植物性の物を好むと言われている。 特に甘い物には目が無いそうで、これはこれでラッキーな偶然だった。


「あ、はい、当然です。 で依頼ですが」

「はい、アイアンピードとリザードボアですか・・・・・・」

「えっと、何か」

「あのー、パーティ組むんですの?」

「あ、はい、この四人です」


 受付のカレン嬢は、細くした目で俺達を一瞥すると、一枚の紙を渡してくれた。

見るとパーティメンバー表である。 聞けばパーティ登録が必要らしく、その面子で依頼を受けさせるかの判断をするらしい。 俺はチームの名前を書きだして、それを提出したのだった。


「はい、これ全員です」

「うーん、チーム龍ですか? Cランク三名でしたら、B級の魔物討伐は了承出来るのですが、後のお二人はEランクですわね」

「いけませんか?」


「いけなくは無いですが、当冒険者ギルドとしては、危険な依頼は受けさせない決まりですの。 前衛職もいない様ですし」

さすが、カレン嬢である。 思ってもみなかった穴を突かれてしまった。 言われてみれば盾職が居ないのである。 仕方がないので、頭に浮かんだ人物に登場して貰う事にした。


「えっと・・・・・・あっ、あの、助っ人来るんですが、良いですよね」

「それは、そちらが勝手になさる事、ご自由ですわよ」

「その助っ人の中に、ヴァレンチノ家のクラーク殿が居てもですか?」

「あら、言われてみれば、ヴァレンチノ家のお嬢様と、メイドさん達ですわね」

「ええ、今俺はヴァレンチノ家の食客なんですよね」


先程のメンバー表には、この五名の名前しか載ってはいないが、彼も実際『龍』のメンバーなのである。 本人不在だが、苦し紛れの一言は、良い風に受け取って貰えた様だ。


「あら、そうでしたの、ホホホ、早く仰っていただければ、クラーク様が居らっしゃるのなら、それだけで十分ですわ。 直ぐに手続き致しますわね」


チームの面子五人で、見合わせてニンマリ顔だ。 クラークの名前を使ったのはあれだが、クラークの名声すげぇ。 俺たち五人は、こうして無事に依頼を受ける事が出来たのである。


「何かさ、周りの目線が痛かったね」

「ああ、ごめんみんな」

「いや、カヅキのせいではありませんのよ」

「おにぃちゃん、これのせーい」


 くるりんとモモが回って見せたのは、チーム龍の刺繍(ししゅう)入り法被(はっぴ)だ。

俺は金文字刺繍で外枠が銀、女の子たちは銀文字で外側が赤と金の刺繍だ。素材の色目もそうだが、言われてみればこれは相当目立つ。


「そっかー、これのせいだったのか」

「おにぃ様、決してそれだけのせいではありませんわ」と、ミクがやんわりと刺して来た。

「ごめん」ここは無条件で言い訳は不要である。


外出なので各自装備はしている。 特にジュリナの長巻『ヘシキリ』は、鞘から握りまでが朱色だからかなり目立つはずだ。 本当に心から目立ちたく無かったのか? と自分に反省を促したいカヅキであった。


 一頭の馬に引かれた馬車は、一行を北へと進む事になった。

御者はモモだったが、俺の膝に座らせて走らせる。 何でも出来た方がいいからな。 暫く街道を走らせると、突然モモは馬車を止めた。 ジュリナがクンクン匂いを嗅いで、耳をピコピコさせている。


「魔物と人が戦っているわね。モモどう?」

見ると、御者席の上にミクがモモを肩に乗せて、立ち上がって向こうを見ている。

「はい、お嬢様。 冒険者らしき者が四人、戦っているようです」

「何の魔物かわかる?」


「はい、鹿ですね『デアホーン』の群れでしょうか」

「この時期は繁殖期なのよ。 縄張り争いでいきり立ってるわね」

「どうすんだ?」


「目視出来る位置まで近づきましょう」

「はい、お嬢様」

ジュリナの一声で馬車を進める事になった。


「おい、彼奴等(あいつら)ヤバいぞ」

「四人パーティね、一人やられて介抱してるみたい。 二人で苦戦してるわね」

「助けに入るぞ!」と、すぐさま俺は行動に走るが、直ぐに制止の声が掛かったて止められた。


「待ってカヅキ」

俺は大刀『せせらぎ』を握りしめ、駆け出しそうになっていたが、いきなりミシェータが引き留めたのだ。

「なぜ止める。 あのままじゃ殺られるぞ」


「でも、いきなりは駄目だわ。 ちょっと待ってね」

確かに、いきなり戦闘に乱入は冒険者としては、マナー違反だと教えられた。 俺が難しい顔をしていると、ミシェータが教えてくれた。


「ああいう時は相手に確認を取るのだけれど、『助けましょうか?』 じゃ、駄目なのよ」

「そうなのか?」

「ええ、助けた後に『助かったよ』って言われて、はい終了」


「へっ? それだけ?」

「そうね、無理に獲物の権利を主張しても、ギルド慣習違反で罰を受けるわよ。 横取りとしてね」

「酷いな」


ジュリナが相手に向かい、声を張り上げて話し掛けている姿が見える。

「ねぇ! あんたたち、交渉する?」


俺とミシェータの会話は続いている。

「だから、ここは助けましょうか? とか、加勢必要ですか? は、駄目なのよ」

「へぇー・・・・・・で、どうすんだ?」

「交渉ね。 つまりは契約」

「なるほど、それでジュリナが交渉って言ってるのか」

「ええ、そうよ」


相手がジュリナに気が付き、返答を返して来るが声がだいぶ荒い様だ。

「おう! 助かるぜ。 差し当たり倒した獲物と、こいつは殺るから他は好きにしてくれ」

「ジュリナデリカよ。 承知したわ」

「ガイヤスだ。 宜しく頼むぜ」


「契約了解、全員戦闘準備を、カヅキ指示お願い」

「お、俺?」

「バコッ」いてて・・・気の無い返事に、ケツをミシェータに蹴られて冷静になった気がする。 よし、気合を入れて行こう。


「ミシェータは馬車安全を確保の後で合流、モモ、ミクは右翼方向で『ニコイチ戦法』、 あれ(・・)は使用禁止だ。 ジュリナは左翼だ。 さぁ、各自身体強化でダッシュ!」


「はい」「はーい」「あい」「はい」


さぁ、初めての狩りだ。 俺はドキドキワクワクしながら、足元に魔力を注いだ。 ありゃ? 出遅れちゃった? 皆さん駆け出しながら強化使ってらっしゃるのね・・・・・・


 モモ、ミクは猫科の獣人らしく俊敏で、体重の軽さを反動で対処している様だ。

既に、モモは冒険者の頭上を飛び越え、落下の衝撃で後首筋に短刀『サザレイシ』を突き刺している。 それを見て、直ぐにデアホーンの仲間が襲い掛かるが、ミクが気が付いてモモに向かうデアホーンの前足を、短刀『シャボン』で跳ね飛ばす。


「ピィーーー」「ピィイ、」

「ドスッ!」


 勢い余ったデアホーンが、地面に頭から突っ込み身動き出来なくなり、奴の喉笛をモモが引き裂いた。

二人で手を握って喜んでるとその間を狙い、次の角一本デアホーンがやってくるが、俺は二人の前に飛び出すと大刀『せせらぎ』に魔力を込め、そのまま居合で下から切り上げた。


「ピーッ」「ザザッー、ド」

正面の敵だっが、二人が後ろに居る為に体捌きが出来無くて、角が俺の頬にかすったが、首を(よじ)って避ける事は出来た。 見ると額から首に掛けて真っ二つに刃が通っていた。 お陰でデアホーンの勢いに裂け目に顔を突っ込む形になった。 顔は血だらけだし、あぁ、恰好悪い。


 直ぐに気をとりなして顔を拭うと、突っ込みながらデアホーンの前足を切り飛ばして行く。

後を見ると、モモとミクが後処理してくれている。 五頭ほど倒しただろうか、左を見るとミシェータが合流し、短刀『ライキリ』を杖代わりに使い、炎で頭を飛ばしていた。


『フアイヤーボール!』「ポーン、ドン、ドン」


ジュリナは例の如く、長巻『ヘシキリ』を器用に振り回しながら無双している。

粗方此方(こちら)が片付いたので、先程の冒険者の姿を見て見ると、三方向から敵の応酬で身動きが取れない様だ。 一人が盾と片手武器で、そしてもう一人は両手剣で角と交差している。


俺が見ていたのを気付いたのだろう、盾を持つ男が俺に声を掛けて来た。

「なぁ、あんた、もう一匹あげるよ」


俺は何も言わずに応諾の眼で意思表示を示し、攻撃職と対峙していたデアホーンの首筋に、『せせらぎ』を押し当ててそっと引いた。

「ピィーーーーーッ」、「ドサッ!」


拮抗していたバランスがここで崩れ、手の空いた大剣の使い手が、盾士の抑えていた片方のデアホーンを叩き切る。 続いて盾士が一番大きなデアホーンにスタンをぶちかまして、そこに大剣が振り払われると、その大きな巨体が崩れ落ちる事で戦いは終焉を迎えた。


「おう、あんたら有難うな、助かったぜ」

「ああ、困ってる時はお互い様だ」

「しかしまぁ、あんたら、つえーな」


「いや、お前が群れのボスを抑えてくれたからだ」

「そ、そうか、俺はガイヤスだ。 『魔物捌き』のリーダーやってる」

「俺は『チーム龍』のカヅキだ」


 お互いに、そっと手を出して握った。

相手の負傷者は大丈夫そうだが、布で腕が巻かれて痛々しいが、声を掛けると大丈夫そうに腕をあげている。 そうこうしていると、ジュリナが首尾状況を報告してくれた。 俺は会釈をしてその場を離れると、仲間の元へ向かう事にする。


「十三頭だわ、大量よ。 うふふ」

「そうだな。 この場で処理するのか?」

「うん、血抜きしないとね」


 後ろ脚に二頭づつ縄を掛け、首を切ると血が大量に流れ落ちた。 

ミシーはその滴後に土魔法で穴を空けていった。 頭部十三頭分の角を切り取る。 一本角はメスだそうだ。 血抜きの間にお昼休憩だ。 テーブルと椅子が出され、俺は香りのいいお茶の入ったポットを出し、取り出したサンドイッチを頬張る。


「おっ、今日は教えたポテトサラダが入ってるぞ」

「えっ? 何それ」

「あー、これ美味しいぃ」


「ほんとだー」

「この前作ったマヨネーズだね」

「ああ、美味しいな」


――――――

「ラビ、ちょっと聞くが、俺の収納袋は鮮度が保たれるのかな? 作り立てみたいだぞ」

「ハイ データトシテ 取リ込ミマスノデ」

「おお、そう言えばそうだったな」

――――――

「俺の収納袋は特別性だからな、品質は何年たっても保持したままだぞ。 これ秘密な」

「アハハハ、秘密ばっかりだわ」

「そうねぇ、もう驚きませんわよ」


さぁ、早めの休憩だからチャッチャとやってしまおう。

片付けは俺に任させて貰った。 だって、皮とか剥がした事無いし、変な所傷付けると価格下がっちゃう訳でしょ。 先ずは見て覚えるようかな。 「フムフム」、首から肛門まですっと切れ目か、それから四方の足首まで切れ目ね。 尾っぽは切っちゃって肛門周りに切れ目を入れると、そこから四本の足首から銅までを剥がす。 最後にお尻側に指を入れて、背中側の上から首元まで一気に引き剥がす。


「おっ、皮剥がしなら、何とか出来そう」

「カヅキ、やってみなさい」

「お、おぅ」


コツは少し熱めの湯を、皮と身の間にかけながら剥がすとすんなり剥けていく。

言われるままにやって行くが、俺がやっとの事一体剥がし終って、早いわねって褒めて貰おうと後を見ると、すでに剥がした後の解体が始まっていた。 ムム、見なくては・・・・・・おっ、二人が掛かりだな。 足首を切り落とし、お腹の被膜を剥がすと、先ずは膀胱を取り出して捨てる。 次に肝臓横にある緑色の胆のうも捨てている。 この先にオーブの袋が入っているらしい。 手で抜くようにピンポン玉の様なオーブが出て来た。 


『魔物捌き』のパーティは解体を終えて、帰還するらしく手を振り離れて行く。 四人で四頭の獲物が取れたし、上々だったのだろう。 

フフ、私の「サザレシシ」の切れ味はすごいのよ。

ミク:それを言うのなら私の「シャボン」は、触るだけで切れちゃうわ

私の方が――

いえわたしのほうが――

モモ、ミク:てことで、次回も楽しい冒険はつづきまーっす。

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