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異世界探求伝  作者: 勘乃覚
冒険編
25/172

異世界探求伝 第二十四話 クラーク歓喜

何やらクラークは寂しそう

 かづきは刀を渡した女性陣四人も含めて、ジュリナに向かい注意事項を言い渡していた。

良く切れる武器ほど繊細なものはないのだ。 硬い武器は時として細かな傷がもとで折れてしまう。 こうした事は、日頃の手入れが重要なのである。 それに使い方もしっかりレクチャーしなければ、ジュリナなどは力任せに使い回して、あっさりと折ってしまう可能性が高いのだ。

 

「相手の剣を受ける時は、(しのぎ)で必ず受けるんだぞ」

「シノギ?」

「そうだここだぞ、少しでも傷が付いたら見せろよ。 後で手入れの仕方も教えてやる」

「えっ?」


「ああ、そうだ」

「えっとね、私に使えって事?」

「気に入らなかったんだな、そんじゃ返して貰うか」

「いやーん!」と、俺が出した手を振り払って背後に隠してしまった。


「銘は『ヘシキリ』だぞ。 触れるだけで切れると言う意味だ」

「銘? このカタナの名前ね。 素敵だわ。 大好きカヅキ」

人前では、決してそういう素振りを見せない彼女だったが、抱き着いて俺にキスをして来た。 今迄の三人が、かもし出して来た(おごそ)かな雰囲気は一気に台無しだ。


「ちょっと、ジュリナデリカ! あたしもそれ手伝ったんだからね」

「タッタッタ! ミシェータ大好きー」

「ちょ、ちょっと抱き着かないで! そんな趣味無いわよ」

喜んでいる女性陣を尻目に、影が薄くなりつつある男の名は、そうクラークであった。


さて次は、とクラークを見てみると、伏目勝ちにしてなんか寂しそうだ。 あれ? 何でだろうと考えていたら、ジュリナが耳元で教えてくれた。

「さっき 私で最後と仰ったのでは?」あらら、女性陣に渡すのが最後って意味だったのに。


「おほん、えー、クラーク、前へ」

「えっ? 私にもあるのですか?」

「勿論さ、飛びっきりの奴だから。 ビビるなよ」

「は、はいっ!」


先程の寂しげな顔は失せて、ひどく神妙な顔つきに変わった。

「両手を前へ」

「はっ!」


気を取り直して袋から出す。 出そうとしたが・・・・・・長すぎて出しずらいな。

「袋に左手を入れて、右手に出すイメージですわ」

うん、本当にミシェータは気の利く子だ。


急いで右手に出した槍に、前のめりになりそうであったが何とか耐えた。 予め身体強化を唱えていたのが幸いしたのだ。 ここで、こけたら折角の雰囲気がおじゃんである。 両手で受け止めた槍を見つめ、クラークは忘我の表情を顔に浮かべるが、「ハッ」と気を取成し礼を述べた。


「このクラーク! 身命を賭して・・・・・・」

「いや、仕えなくていいから仲間だし、居候だし。 ハハハ」

「えー、コホン、有り難く頂戴、奉ります」と、クラークは空いた左手を前に差し出して拳を作ると、(うやうや)しく頭を下げる。


「さぁ、皆、それぞれの性格や特性に合わせたつもりだから、今日はそれを手に馴染ませてくれ」


モモとミクはそれぞれ魔力を通して魔剣だと判ると、抱き合って喜んでいた。

「ちょっ モモ、ミク! 危ないから刀離しなさい」

「ドーン!」

「おい、ミシェータ! こんな所で強力な魔法は禁止だ!」

 

「ドガーン!」

今度はクラークは庭石を破壊している。 それって当家の飾り石じゃないのか!? おい! クラーク、嬉しいのは判ったが、程ほどにな。


「クラークのあんな表情、初めて見たわ」と言うのはジュリナである。

「そうなのか?」

「ええ、ヴァレンチノ家に縛られて、いつも窮屈そうだったもの」


まぁ俺がとやかく言う事では無いが、確かにクラークはヴァレンチノ家の家宰を良く勤めている。 恐らく陰では、並々ならぬ努力を重ねているのだろう。 だが、しかし・・・・・・


「クラークぅ? そこら辺で止めといて貰えるか? モモとミクが怯えてるぞ」

「ハァハァ、ゼェゼェ」

クラークが息を切らせている姿を始めて見た。 よほど嬉しいのであろうが、子供じゃ無いんだから、庭をこんなに滅茶苦茶にしなくても・・・・・・


「あ、はぁ ちとやり過ぎました。 申し訳ありません、お嬢様方」

ミシーが気を効かせて、あちこち崩れた壁や、地面を土魔法で補修している。

「クラーク、本当に嬉しかったのよね。 アハハハ」


「お嬢様・・・・・・お恥ずかしい限りです」

「良かったな、でも武器の性能を試す場所も、余り無いような気がするなクラーク」

「ええ、でも現在の仕事が落ち着いたら、魔物退治に行くと言う意欲が沸きました」


「そうだな、俺も次の狩りで慣れたら一緒に行くとしよう」

「はい、是非に。 ウアッハハハ」


 朝食を食べ終わり、本日の日程を協議する。

「明日から討伐依頼に出る予定だから、体調管理を宜しくな」


ジュリナは、契約書のひな型をひたすら書いている。 ミクは通信機の製作中で、モモは俺の描いたラフを図面に起こしている。 ミシェータには魔法式の数式をひたすら作って貰っている。 目的は様々だが、オーブを利用する為に先走っているのだ。


 実用的な日用品、ドライヤーにエアコンは欲しいものだ。

掃除機、洗濯機、車もいいなぁとか思っていた。 冷蔵庫?冷蔵庫はあるにはあった。 冷蔵庫と言うよりは保冷庫だ。 小部屋の上部に冷やす魔道具が付いてある。 馬車の輸送にも使われるらしいが、冷凍庫としても兼用みたいだ。


 ふと思ったが、こんな事してて良いのだろうか?

たった五年しか居ないのに、余りこの世界に干渉し過ぎるのでは無いか? ぼやいていたら、先生からのお言葉を頂いて愕然(がくぜん)とした。


「二十年デス カヅキ」

つい、「えっ!」と叫んでしまったが、聞くとこの星と地球では、時間の流れが四倍違うのだだそうだ。


俺は記憶を思い起こすと、確かにここに来る前に講習でそう言っていた気がする。 俺は以外にも「ホッ」と肩を撫で下していた。 以外にも心の中では、「良かった」と言う己が居たのである。


明日は狩りをやるが、ポーションの件を聞いて身の安全の確保を、しっかりしなければと思い至った。 時間がまだあると分かった今、俺のやるべきことは命の安全だ。 いや俺だけでは無い、この家に居る皆の安全が俺の手に掛かって居るのだ。


 俺が皆を守らなくてはならない!

「どうしたの? 深刻な顔をして」と、ミシェータが心配して、顔を見つめて来る。

「いや、明日から魔物狩りだろ。 皆の安全を守る為には、頑張らなきゃと思ってな」

「ホホホ、まさかカヅキ一人で皆を守るつもりなの?」

「いけないか?」

「いけなくは無いけど、自分の事は自分で出来るわ」


「そうだろうけど、もし万が一があったら・・・・・・」

「あのさカヅキ、手足は四本、頭は一個、数が限られているわよ」

「判ってるさ、一人でやれることは限られてる」


「判ってるじゃない。 だから、わたくし達は分担して作業してるんでしょ?」

「うん、そうだけど」

「狩りも同じじゃなくて?」


あ、ああ、俺は飛んだ思い違いをしていた。 皆で何でも協力してやればいい・・・・・・ただそれだけだった。

「ミシェータ! 有難う、気が楽になった」

「いいのよ、力になれて嬉しいわ」

そう言いながら、彼女は俺の肩に(もた)れ掛った。


――――――

「『コール』ジュリナ:(どうですかお嬢様)」

「『アンサ』ミク:(感度良好よミク)」


 今、何をやっているかと言うと、例の通信機『イヤーカフ』のテスト中である。

昼過ぎに全員に行き渡り、現在テスト中である。 


「いいな、これ。 離れてどれ位感度が有効かも、明日クラークに試してみよう。 これって場所特定とか出来ないかな?」

「緊急の場合とか、危険な時も使えそうね」との、ミシェータのさり気ない一言。


「場所特定かぁ、考えて見ますね」と、ジュリナが言いながら口を真一文字にして考え込む。

「緊急時にはコールワード『オール』で、全員に警報で繋がるわ」と、ミシェータが嬉しそうだ。

「皆なるべく、外さない様にしておいてくれ、それから夜分の通信は緊急時以外は控える事」と、俺は釘をさす事も忘れなかった。 やらかしそうなジュリナとミシェータを見ると、小さな声で「チッ」と(つぶや)いていた。 やはりな。


 俺はこの間残った玉鋼を集めて加工をしていた。

髭剃り用のナイフを十本と、この屋敷のコック長に牛刀を一本贈ったのだ。 髭剃りナイフは、二つ折りタイプ収納できるタイプだ。 世話になった武器屋のおっさんと息子、そしてクラークにコック長に贈った。

俺は既に自分で試していたが、仕上げ砥石と、魔物の皮で磨いた髭剃りの切れ味は、本当に満足の行くものであった。


 奥庭で建造中の別棟に顔出し、細々と指示を出す。

実はここには銭湯を作る予定だ。 お風呂ならばタイルが要るだろ、と言う事で、俺は馬車で早速(さっそく)移動、タイルを探しに行くと陶器工房に連れて行かれた。


 馬車自体は乗り心地は良かった。

しかし路面が土の為、(わだち)や穴が多いので、雨天の時は不便を感じてた。 「うーん」、石畳までは行かなくとも何か手を考えねば・・・・・・


 暫く走らせると、陶器工房の看板が見えて来た。

ここでは安物の皿やコップ、鉢、瓶とかの土器が作られていたが、土肌見ると赤土で焼かれているようだ。タイルは、レンガとともに隣の工房で作られていたが、赤土は余り粘りが無く強度が弱い。 タイルの表面は釉薬が掛けられ、それなりに焼かれてはいるがかなり厚みがある。 結局タイルは有ったには有ったが、これは探している物とは違うので諦める事にした。


うーん、やりたい事が多くなって来たが、一先(ひとま)ず、道をどうにかしないと、流通経路がスムーズに行かなくなるからな。

「よし、ここから対処しようか」


俺は、廃棄されていた陶器の破片を大量に集めて持ち帰った。 工房の親方は捨てるのに困っていたらしく、手間賃までくれたので断るのもなんだし、貰っておいた。 帰って馬車の具合をクラークに報告すると、庭に穴を掘って見本を作ってみた。

構造は水はけ良くする為に、穴をニm程掘り下げて、砂利や土、砂、小石を大きさを変えて、重ねている。 表面は四角く岩を切って並べてあるが、隙間の部分は砂で詰めてあるのだ。

 

「『コール』クラーク:(クラーク、道路の見本が完成した見に来てくれ)」

「『アンサ』カヅキ:(はっ、ただいま向かいます)」


呼び出したクラークは、それを見るなりこう言い放った。

「ほう、王都に有る様な石畳に似ておりますな」

「あるのか?」

「さて、似ているが水はけが良いのですね」

「それで、直ぐに水が引いて行くのですね」

「王都の石畳は。大雨の時は水が川の様に溢れていましたわよ」と、ミシェータも同意しているなら、こっちが優れているのは間違いのない所だろう。


「じゃ、構造が違うんだな。 そんなに雨が溜まるのなら、漆喰と石で固めているのかも知れないな」

「ですな、直ぐに技術を新案登録致しましょう」

「そうだな、ついでにこれを国主体でやって貰おうか」


「そうですな、良い考えです。 個人では余りにも規模が大きすぎますな」

「うん、取り敢えず砦村内部は、全てこの石畳で敷き詰めてくれ、それから、この町までの道路も石畳で舗装してくれ」

「はっ、手配致します」


「内部構造とサンプルの石等は、直ぐに用意するが、何か足りないものはあるか?」

「はい、エンピツ、フォーク、スプーン、ナイフ等の食器類は既に流通に乗せているので、資金は調達可能ですが、未だ人手不足が続いております」


「そうだよな、砦近くにある岩山の石切り場で、土魔法の使い手を集めて、ストーンゴーレムの製作の準備を頼む」

「労働力に使うのですな」

「ああ、それとオーブをもっと安く買い叩いて集めてくれ。 屑で構わない」


「直ちに」

「ミシェータは、ゴーレムの魔法術式と数式の見直しをやろう」

「はい、参りますわ」

 

 オーブに書き込む心臓部の術式回路の見直しを進める為、急遽集まって話し合いを行う事になった。

場所は俺の部屋である。 ミシェータ以外は魔法術式にそこまで詳しく無いそうだが、集まってで話し合う事により詳しくなり、他の部分での相乗効果も見込めるからだ。


「それで今までは魔法術式を一つ組んで、オーブに書き込んでいるんだよな」

「ええ、予め数式を組んだ魔法術式を描き込んで、それを写すのよ」

「術式はひとつだけ?」


「ええ、だから動きは限られてるわ。 単調だし、多くの命令が出来ないの」

「二つ書けたら? 倍で五つ書けたら十通り?」と、ミクの質問だ。

「えっとー、ニ十通りかな」


「重複は意味無いんじゃないの?」

「あっ、いいえそれは違うわ。 二つの術式でも、前後二種類の動作が可能だから、四倍になるのよ」

「どういう事ですか? ミシェータ様」

「うん、例えば「走る、休む」とあっても、これは一つの動作じゃなくてね 「走って休む」「休んで走る」の二つの別動作が出来る訳ね、ミクちゃん」

「ああ、良く判りました」

「えっとね、ミク、魔法陣は回路なんだよ」


俺は、ラビ先生で得て来た知識をここぞとばかりに披露してみた。

アッハハハッ! さてさて、それではドラゴンでも退治に行きますぞ!

ジュリナ:待ってクラーク、あなた言われた仕事がまだ残ってるんでしょ。 

クラーク:あっ・・・

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