EX 勇者殺人事件~解決するのは魔王様!?
僕はシリウス。最強にして最高の初代魔王様の忠実な白コウモリの使い魔。
いつも僕に優しいナイスガイな魔王様なんだけど、最近イライラしている。
というのもついに勇者が魔界に来たはいいんだけどそれから何の音沙汰もなし。
魔王様は勇者と本気の闘いを待ち望んでいる為、今か今かとまっているのだけど、一向に来る気配がない。
そんな中魔王城に驚きの知らせが来た。
「報告します。人間界に一番近い港町の宿屋にて勇者が死んだそうです!」
「なんだとぉぉおっ!? 嘘だろ? 今か今かと待ち望んでいた我のこの思いはどうなる!?」
ああ、可哀想な魔王様、軟弱な勇者のせいで魔王様の楽しみが一つ減った。
だがこのシリウス、最近魔王様がはまっている本を知っていますよ。
魔王様の目の前に魔王様がはまっている本を掲げる。
「うむ、そうだなシリウス君。勇者が死んだというのならその憎い犯人を見つけなければな! この事件魔王の名にかけて暴いてしんぜよう。ぐわっはっはっはぁ!」
「ちょっとどこに行くんですか? 魔王様にはやっていただけなければならない仕事があるんですよ!」
ちっ良いところで宰相のアンゼリカが止めに入る。
「すまんなアンゼリカ。しかし我の名探偵の血が騒ぐのだよ。ではさらば。行くぞシリウス君!」
了解であります魔王様、このシリウス魔王様の為なら地獄でもお供します。
「ちょっとこの仕事どうするんですか、このバカ魔王ー!!」
お前がしとけこの乳無し宰相。
そして僕と魔王様は勇者が死んだとされる港町の宿屋の一室に居た。
「ここで勇者が死んだのか現場はそのまま遺体に損傷なし。こうなると毒殺か?」
さすが魔王様鋭い観察眼。
「あんたいきなり現れて何言ってんの? ていうか誰あんた? 勇者の知り合い?」
勇者の仲間である魔法使いが無礼にも魔王様に向かってあんたとは許すまじ。
「知り合いではないが、魔王である我とはいずれ闘うはずだったのだ。それが死んだと聞いて犯人探しをしにきたのだ」
「魔、魔王!? 」
魔王と知るなり杖や短剣を構える勇者の仲間だった者達。
「慌てるでない。我は勇者を殺した犯人を探しに来ただけだ。それでも戦いたいというのであれば相手をするが、そなたらでは一瞬で殺してしまうが良いか?」
さすが魔王様。奴ら魔王様の凄みに当てられて震えてますよ。
「……わ、わかったわ。とりあえずあんたの言ってる事を信じるとしてなんで勇者が殺されたと思ってるの? 自殺とか突然の病でなくなったと考えなかったの?」
「それはないだろう。自殺するのならわざわざ魔界になどこないだろうし、我や勇者程の魔力を持つものが病ごときで急に死にはせん」
「……殺しの線で考えるとしてなんで毒殺だと思ったの?」
今までしゃべらなかったアサシンの女が魔王に問う。
「それはな、唇の色、口からの匂いからして毒殺で間違いないと思ったからだ」
するとアサシンの女が死人となった勇者の口の匂いをかぐ。
「確かに毒の匂いがする。で殺した犯人は?」
「まぁ、あせるでない。まず昨日宿屋には何人居たのか知りたい」
宿屋の主人を呼び寄せて昨日何人居たか聞き込む。
「そうですねぇ、昨日は勇者とそこの三人の女性以外宿泊客は居ませんでした」
「じゃあ、犯人候補はこの三人か」
「ちょっと待ちなさいよ。その宿屋の主人が食事に毒を盛った可能性があるじゃない。ここは人間と魔人が唯一共存共栄している町だからといってそこの主人は魔人よね? だったら食事に毒を盛っていてもおかしくないわ!」
「あっしはそんなことしてません!」
「ふん、どうだか!」
勝ち気な性格の魔法使いの女は宿屋の主人を疑っているけど魔王様はその可能性を否定する。
「宿屋の主人は殺していないぞ。主人から聞いたが、ここの料理は大皿に人数分の料理をのせて提供しているとか?」
「ええ、確かに昨日は大皿で料理がきて一階の食堂で皆で取り分けながら食べた。箸やスプーン、小皿、は私達で配りあったから箸やスプーン、小皿に毒をつけるのは不可能」
アサシンの女性が魔王の言い分を肯定する。
「そして魔人だから勇者を殺したと言うのなら仲間であるお主らも死んでいてもおかしくないか? つまり犯人候補は三人に絞られてしまったということだ」
「ちょっと待ってよ、仲間であるうちらが勇者を殺す筈ないじゃない!」
魔法使いの女が否定する。
「ああ、私達は仲良く冒険をしてきた。自分を含めて三人に犯人がいるとは思えない。それに勇者の部屋には鍵がかかっていた。
勇者がなかなか起きてこないから部屋を訪ね、それでも返事がなかったから宿屋の主人に頼んでマスターキーで開けてもらったらこの状態だった。私達三人は同じ部屋で寝てたからアリバイもある。私達じゃない!」
魔法使いに続いて三人が犯人じゃないとアサシンの女が弁明する。
そんな中ずっと泣いてばかりで何も話さなかったヒーラーの女が口を開く。
「誰が殺したの? 魔王を討伐したら結婚して一緒に暮らそうねって勇者君は言ってくれてたのに!」
泣きながら話したヒーラーの女の話を聞き、魔法使いとアサシンの顔色が変わる。
「それどういうこと? 私だって同じ事を言われてたわよ!?」
「……私も同じ事を言われた。まさか勇者が三股かけてるなんて!」
どうやら自分達が三股かけられてたのに気付いていなかったらしく、急に空気が重くなった。
「いやいや、私は3ヶ月前からプロポーズ受けてたし!」と魔法使いが言えば、「……私は半年前からプロポーズされてた」とアサシンが言い、「私は勇者君とは子供の頃からの付き合いです。そんな彼が本当に愛してたのは私に決まってます」とヒーラーが言う。
泥沼化してきた今魔王様は誰か犯人かわからない様子。
でも大丈夫。すぐに答えはわかるから。
ぎゃあぎゃあと三人が騒ぐのを宿屋の主人と魔王様が諌めるなか、部屋に宰相アンゼリカが入ってきた。
「何の騒ぎですこれは?」
「おお、アンゼリカいいところに。この三人のケンカを一緒に止めてくれ」
「も~、こっちは痴話喧嘩どころじゃありません! 魔王様が居なくなったせいで誰があの書類の山を片付けたと思ってるんですか? それでも魔王様が必要な仕事があったから転移魔法でここまで来たんです。そんな毒殺されて当然の勇者なんか放っておいて、城に帰りますよ!」
相変わらず勇者パーティーの連中はケンカをし、宿屋の主人はケンカの仲裁をしているが、どうやら魔王様だけは違和感に気付いたご様子。
「……おい、アンゼリカ。質問なんだが」
「何ですか魔王様! 早く戻って仕事をしていただかないと」
「転移魔法って一度来た場所じゃないと使えないよな? それにお前がなんで毒殺だと知っている。三人のケンカの事もそうだ。なぜ痴話喧嘩とわかった?」
「っ、それは……」
その沈黙が真実だ。さすが魔王様。
「前々から魔王国にスパイがいるというのもお前で、連絡先が勇者というところか」
いつの間にか三人のケンカはやみ、宿屋の主人もこちらに耳を傾けている。
「なぜこんなことを?」
「だってそいつは私だけを愛している。魔王を倒したら一緒に暮らそうって言ってたのに」
きっかけは戦場で勇者と出会い告白されたとか。
一緒に暮らすには魔王が邪魔だとそそのかされてスパイ活動をしていたとか。
そして最近、勇者がどうも女好きで何股もしていると自分の耳に入り、調べた所自分を含め四股されていた事を知り怒りのままに毒殺したとべらべら喋ってくれた。
「そうか、お前の裁きは改めて魔王国でするとして、事件は解決したわけだが、こいつの死体は誰が埋葬する?」
誰も手を挙げなかったので魔王様が埋葬する事に。
さすが世界で一番優しい魔王様。
でも探偵ごっこはおきに召した様で何より。
あとは勇者パーティーの三人の始末と優しい魔王様に変わり宰相アンゼリカも私が始末しておこう。
次はどんなことで魔王様を楽しませよう。
コウモリの中で白いコウモリで異端児だった僕は寒い雪の降るなか巣を追い出された。死にかけの僕を優しく手で包み込んでくれたのは魔王様だった。
僕の名前も伝説の白い狼シリウスからとり、下の名前も魔王様が好きな花が僕の目と同じ色をしているところからブラッドリリーになった。
ちなみになんで勇者パーティーの三人を始末するのかと言うと、別れ際に魔王様の名前を聞き、そして大爆笑したからだ。
魔界の言葉で大いなる山を意味する名前なのに奴らは笑ったのだ。
魔王様は深く傷ついたご様子なのでこれからは自分の名前を他人には明かさないだろう。
つまり僕と魔王様だけの秘密だ。なんと嬉しい事だろう。
ちなみに僕は魔王様に黙っていることがある。
それは僕がメスだということ。
魔王様が僕をオスだと言うなら僕はオスでいい。
ずっと魔王様と一緒に居られればそれでいい。
第二代目魔王シリウス·ブラッドリリーの手記より。
なお最強にして最凶の魔王シリウス·ブラッドリリーは初代魔王を敬愛し、最強は初代魔王様だと言っているが、初代魔王の情報が少ない為、謙遜からの言葉だと世間からは思われている。
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