第三十九話 プレオープン
よろしくお願いします。
皆の頑張りもあり、ついに水族館がオープンできる状態になった。
本当にオープンする前にプレオープンをする事にした。
魔界からサキュバス族族長にして魔王国宰相リリス、白狼族族長にして魔王国元帥ランガなどの魔界の重鎮が来ている。
帝国からは招待状を送っていた皇帝と皇后と帝国の宰相ケルムと予想外な事に次期皇帝の皇太子も来ていた。
あとは動物園の方も比較的落ち着いてきたので、勇者アリサも呼ばれている。
そして遠い東方の国からは将軍信綱が相変わらずにいる。
今回はオープンの予行練習と他国の交流を深めるためにプレオープンしている。
「今日は我が魔王国が作った水族館のプレオープンによくぞ来てくれた。大成功した魔獣の動物園と比べても見劣りしない海洋魔獣を観たり触ったりできる場所を作ったつもりだ。各国の方々にも満足して頂けると確信している。ぜひ楽しんでいってくれ!」
魔王の挨拶のあとは、各々に水族館のパンフレットを渡し、自由に観覧してもらう。
この水族館は、人魚族が運営していく事になる為、今回は僕や魔王、エスナさん、アリサもお客さん側として水族館を観ていく。
とりあえず一人で水族館を観ようと思っていると、金髪イケメンが後ろに二名の護衛を連れて近付いてきた。
「やぁ、カシワギトウタ君。君の事は父上や母上から聞いているよ。僕はスルト·アスファルト。スルトと呼んでもらってかまわないよ」
「……じゃあスルト様と呼ばせて頂きます」
「別に様付けも敬語もしなくていいのに」
爽やかな笑顔で冬太の横に並ぶ皇太子。
「そういうわけにはいきませんよ、ところで何で僕についてくるんですか?」
「水族館に一番詳しそうなトウタ君に案内してもらおうと思って」
「案内用のパンフレットも渡されているはずだし、近くの水族館スタッフに声をかければ案内してもらえると思うんですけど?」
「君に案内してもらいたいんだ! ダメかな?」
爽やか美少年が目をウルウルさせている後ろで護衛の二人が剣に手を伸ばす。
「……別に良いですけど僕と居ても面白くないと思いますよ?」
「そんなことないさ。父上や母上から君の異世界の知識と動物と仲良くできる才能は聞いているよ。それは凄く魅力的さ」
そこまで帝国の皇太子に言われたら断るわけにもいかず、各フロアを説明しながらまわっていく。
各水槽に人魚が捕まえた魚達が泳いでいる。
普段食べる魚がどういう生活をしているかなんてこうやって観ないとわからない。
皇太子は興味深そうに各水槽を観ていく。
今観ているのは、壁天井全てが水槽の通路だ。ここでなら色々な角度で魚達を観ることができる。
「わぁ、すごいねこれは! こんな神秘的で綺麗なものを観れるなんて今日は来て良かったよ」
「それは良かったです。それよりドリルペンギンや他の魔獣とも触れあえる場所があるんですが行きませんか?」
「そうしたいのは、山々なんだけどね、お腹が空いちゃって何か食べに行かないかい? もうすぐ人魚と魔獣のショーも始まるって聞いたし」
皇太子がそう言えばそう動くしかなくフードコートへ行く。
そこにはすでにジパンの将軍信綱が来ており網焼きコーナーで貝を食べていた。
そんな信綱に皇太子は近づいていく。
「初めまして信綱様。僕は、東大陸セメントを治めるアスファルト帝国の皇太子――スルト·アスファルトです。どうぞお見知りおきを」
「そんな硬い挨拶は抜きにして一緒に貝でも食べないか? 異国の王子殿」
一瞬スルトは頬をひきつらせたが、すぐに元の笑顔に戻る。
「そうですね、貝も良いんですが、僕はたこ焼きやお好み焼きなるものが食べたいのであちらの店の方に行きますね」
僕の手を引きたこ焼きやお好み焼きがあるブースに向かっていく。
「これは美味しいね、どちらも美味しいけど決め手はこのソースだね? このソースはジパンから取り寄せたものかい?」
「はい、このソースはジパンから取り寄せたものなんです。これのおかげでたこ焼きとお好み焼きが完成したんです。他にもこのあら汁につかわれているのも味噌というジパンの調味料だし、こ刺身につけている醤油もジパンのものなんです」
「正直生で魚を食べるのはどうかと思ったけど、薄く切ったこの刺身を醤油につけて食べると旨いものだね」
色々な食べ物に驚いて美味しそうに食べる皇太子。
そんな皇太子と共に食べる冬太の顔にいつもの笑顔がなかった。
昼食を食べ、人魚と魔獣達のショーを観ていく。
どれだけ練習を積んだのだろう、人魚と魔獣達のショーはとても完成度の高い、引き込まれて時間を忘れるほどのものに出来上がっていた。これならリヴァイアサンが居なくてもメインになれるレベルだ。
一緒にいる皇太子も笑顔だ。だけど……
最後にリヴァイアサンに会いに行くのだが、日本の鳥居を思い出して欲しい。
その鳥居の列を潜った先に海の水面に立っている美女がいる。
今回プレオープンに招待した全員が
剃ろうとリヴァイアサンは本当の姿に戻っていく。
あのデカイ白鯨で三十メートルはあったが、その白鯨でさえ霞むほどの海竜がそこにいた。
その姿を見た瞬間、皆が膝をつき、リヴァイアサンをみて拝む。
この世界では神として扱われているリヴァイアサンには出会えるだけで幸運とされている。
当然間近で拝む事が出来るだけでこの世界の住人にとって光栄なこと。
帝国の皇后なんて感動のあまり泣いていた。
やっぱりこの水族館の目玉は、リヴァイアサンになりそうだ。
水族館のプレオープンも終わり信綱、バルドラ、魔王が三国のこれからについて話している中、皇太子とはいうと相変わらず冬太にべったりだった。
「今日は素晴らしいものを見せてもらったよ。君のような人間が帝国にも居たらいいんだけど。どうだろうトウタ君。帝国で僕の副官として働いてみるきはないかい?」
「お話はありがたいのですが、僕は魔王国で召喚された人間です。召喚されて僕に出来ることがある以上僕は魔界に居ます」
「そっかぁ、残念だな。でもその言葉、柱の裏に隠れて聞き耳をたてている帝国で召喚された勇者にも言って欲しいなぁ」
すると冬太の後ろにある柱から勇者アリサが出てきた。
「何言ってるのよ! 先に見捨てたのはあんた達でしょ!」
「それは父上と宰相が勝手にやったこと。戻ってきてくれるなら厚待遇で迎えるつもりだよ」
「ふ、ふ~ん。その言葉が本当だとしても私今の生活気に入ってるのよね。だからなしで」
一瞬心が揺らいだアリサだったが、本当に今の動物園での生活を気に入ってるのだろう、はっきり断った。
「まさか二人とも断るなんて僕は深く傷ついたよ」
すごくうなだれている皇太子に慌てる冬太とアリサだったが、顔を上げた皇太子は笑顔だった。
「な~んてね、冗談だよ。でも誘ったのは冗談じゃないから気が変わったらいつでも帝国においで」
そう言って皇太子は、皇帝達の元に去っていく。
皇帝達は元々飛空挺でここまで来たのでそのまま飛空挺で帰って行った。
信綱は魔王が転移魔法で送って行ったがその前に冬太に一言伝えて帰って行った。
「皇太子は危険な匂いがする、気を付けろ」
この言葉はリヴァイアサンにも言われたし、アリサにも言われた。
何よりも自分が一番実感していた。
それは、魔王と初めて会ったときの美しい戦慄さに震えたときと違い、何かどす黒いものを感じた。
冬太は今まで動物でも魔獣でも人間でも魔人でも恐れた事などなかった。
だけどあれは……怪物だと心の中で思いながら、明日の水族館オープンの準備を手伝いに行く。
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