第二十三話 皇帝と魔界の動物園②
よろしくお願いします。
魔人の四人家族の件が済んだので、皇帝達をフードコートに案内する。
早速、料理を注文し、ウエイトレスに運んで来てもらうが、料理を持ってきたのは勇者アリサだった。
「お待たせしました、ではこれで失礼します」
その場からそそくさと離れようとするアリサ。
「帝国から抜け出して魔界で働くとはいい度胸だな勇者よ」
「べ、別にいいでしょう。帝国だって私を必要としてなかったじゃない! ここは衣食住全て揃ってるの。私は絶対に帝国には帰らないからね!」
そう言うとアリサはキッチンの中に消えていく。
「良いのか? 勇者は人間界の切り札の筈。もっと執着すると思ったが?」
「戦争が終わった以上勇者を冷遇したのは事実。ならばどうするのも勇者の自由と思ってな。それよりも料理を楽しもう」
用意したのは、ワイバーンテールのステーキにクリームシチュー、ハンバーガーとフライドポテト。
帝国の皇帝に出すには、ジャンクかなと思ったけど、喜んで食べている。
「なんだこの料理達は!? 全てがうまい! 特にハンバーガーとフライドポテトが儂は気に入った」
「このクリームシチューもコクがあって大変美味です」
「私はやはりのこのようなワイバーンテールのステーキですな。肉厚で噛めば肉汁が溢れ旨みが口の中に広がりますぞ!」
三者三様に料理を楽しんでくれたみたいだ。
だがこれで終わりじゃないこの動物園で一番人気のプリンとアイスクリームが残っている。
三人とも大変美味しそうに食べていたが、特にラーナ皇后がアイスクリームを気に入ったらしくレシピを冬太は教えておいた。
食事が終わった後は、マンイーターの餌やりやバトルモウの乳絞り体験などをして今は、ワイバーンやペガサス、コカトリス、グリフォンなど乗獣体験をしてもらおうとしているのだが、「嫌じゃ~、魔獣に乗って空を翔ぶなど危険ではないか!!」
「そうは言ってもラーナ様やケルム宰相はペガサスとコカトリスに乗って空を飛んでますよ」
現在ワイバーンのルカは四人家族を順番に乗せている為、空いているのが森の王者とも呼ばれるグリフォンのグリだけなのだが、上級魔獣として有名な為、びびって中々乗れないようだ。
そんな時、四人家族の小さな女の子が皇帝に近付いてくる。
「人間のおじさん、乗れないなら私が一緒に乗ってあげる!」
なんと無礼なと後方で護衛していた騎士が近付いてくるが、皇帝は騎士の行動を手で抑える。
「儂は別に怖くはないのだが、お嬢ちゃんがどうしても一緒に乗りたいのなら乗ってやってもよいぞ」
そうして少女と一緒にグリフォンに乗った皇帝は実に楽しそうに空の散歩をしていた。
一通り動物園を見終わり、今はお土産店にいる。
皇帝はホーンラビットのぬいぐるみが気に入ったらしく買うようだ。
宰相は妻と娘へのお土産で悩んでいる。
ラーナ皇后はホーンラビットの角で出来た装飾品に目移りしている。
結局皇帝達が買い物を終えたのは、一時間経ってからだった。
皇帝なんかホーンラビットのぬいぐるみの大中小を一つずつ買っていた。
皇帝達が帰ると言うので、動物園の入り口に向かっていると先程の魔人四人家族が皇帝達を待っていた。
四人家族の少女がラーナ皇后に近づき、肩からぶら下げている鞄からピンク色の花みたいな水晶石をラーナ皇后に手渡す。
「これね、私の宝物なの。動物園に入れてくれたお礼にあげるね」
少女は価値を知らないのかも知れないがこの水晶は、桃薔薇水晶といって、人間界では数百万ゼルの価値がある。
そうとは知らない無垢な少女にラーナ皇后は自分が着けていた首飾りを外し、少女の手のひらに乗せる。
「じゃあ私の宝物と交換しましょ?」
そう言って少女の宝物を受けとる。
少女の兄は皇帝に近付くと、ポケットから黒い石を取り出し皇帝に渡す。
「妹を楽しませてくれたお礼です。その石結構価値があるみたいだから宝物にしてたんだ」
この石は黒魔晶石といってこれがあれば魔動車が一年動かせる程のエネルギーを秘めた石。もちろん数百万ゼルの価値がある。
「そうかお前は良いお兄ちゃんなのだな。じゃあこの石をもらう代わりにこのホーンラビット(大)のぬいぐるみをやろう」
高価な石にぬいぐるみだと対価てきにどうかと思うが少年が喜んでいるのだからいいのであろう。
魔人の家族を見送った後、皇帝が冬太を見る。
「カシワギトウタよ。実は今日はお主に会いに来たのだ」
「僕に? なぜでしょうか?」
「今まで、動物園が上手くいかない様に様々な手で邪魔してきた。だがいつも失敗に終わる。そしてその中心にいるのはトウタお主だった。可能ならお主を我が国に引き抜こうとここへ来たが、今日の様子を見て諦めた。この動物園とお主の間には強固な絆がある。だか、お主含めて魔王やその周りの魔人、魔獣に自ら会いに来て考えが変わった」
そう言いながら先程の少年にもらった黒魔晶石を見る。
「お主らは容姿や魔力の量が違うだけで同じ人間なのだと! 平和条約を結んでおきながらの今までの仕打ち誠に申し訳ない!」
東大陸セメントを統一したアスファルト帝国の偉大なる皇帝が頭を下げる。
この意味はとてつもなく重い。
この姿を帝国の民や魔界の民に見られたら大変な騒ぎになるだろう。
「頭をあげてくれバルドラ殿。今までの行為は確かに腹が立ったが、こうして帝国の皇帝に我ら魔界に住む者の事を知ってもらい、仲良くなれるなら、些細な事だ」
頭を上げた皇帝に魔王は握手を求め、皇帝もその握手うけいれる。
真の意味でお互いの王が理解しあった瞬間であった。
「仲良くなったついでに借金の方もなんとかならないか?」
「それはそれ、これはこれであろう。なに、以前の様な嫌がらせはしないし、今の調子ならすぐに返済出来そうだしな。あとエネルギー源になる魔石を人間界に輸出しないか? これなら借金が消えるどころか魔界も儲ける事が出来る」
「それは興味深い。その件は近いうちにこちらの宰相も交えて会談しよう」
「了解した。それで最後まで見なかったがベヒーモスはどこにいたんだ?」
それはラーナ皇后もケルム宰相も同じような反応。
「何を言っとるんだ? 最初から私達と一緒に居たろうが」と冬太が抱っこしている二本の角の付いた子犬程度の大きさの黒い魔獣を指差す。
「何を言っとるんだ! ベヒーモスと謂えば、十五メートル程の巨体をした魔獣の王だぞ。直に見たことはないがそのくらいこの世界の常識だぞ」
ラーナ皇后もケルム宰相もうんうんと頷いている。
「なら実体に戻ってもらうか。ベヒ子、元に戻ってくれ」
それを聞いたベヒ子は冬太から離れ、その身体を大きく変化させる。
ベヒ子は魔王から魔力のコントロールを教わり、自分の身体を小さくする事が出来る様になったのだ。
だが突然近くに魔獣王が現れた三人にはたまったものじゃない。
三人は仲良く気絶した。(このあと無事に意識を取り戻し飛空挺で帰りました)
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