第二十二話 皇帝と魔界の動物園①
よろしくお願いします。
その日は急遽動物園が貸し切り状態になった。
アスファルト帝国の皇帝が魔界の動物園の視察に来る事になったのだ。
連れに騎士を数十名と皇帝の妻であるラーナ皇后、宰相ケルムを連れ、飛空挺で飛んできた。
「久しぶりだな、魔王。急の来園失礼した」
「ああ、全くだ。おかげで急遽動物園休日の放送を流してクレームの嵐だ」
魔導放送機で昨日魔王国及び、人間界の方にも放送し、来る予定だったお客さんから魔王国にクレームの嵐が来て、魔王国の宰相サキュバス族の族長のリリスが終始不機嫌だった。
魔王はそれを宥めるのにかなり苦労した。
黒髪ショートのメガネクールビューティーのリリスは、魔王の頭のあがらない人物の一人らしい。
現在の魔王国の運営は彼女が仕切っているらしい。
頭が上がらなくて当然だ。
「とりあえず、ようこそ私の動物園へ。楽しんでいくといい」
「うむ、せいぜい楽しめさせてもらおうか」
皇帝は部下から話を聴いているからある程度魔界の動物園の詳細を知ってはいたが聴くのと体験するのは違うらしく――
「なんだこのふれあい広場というのは、ホーンラビットやシュガータートルが放し飼いではないか!?」
「ふれあう為の場所ですからね。ホーンラビットやシュガータートルはこの動物園でも温厚な方だし、触ってみませんか?」
「なにっ?皇帝たる私に魔獣を触れと申すか!!」
「はい。ほら見てください。ホーンラビットを抱くと、毛がフワフワしていて気持ちいいんですよ」
「儂に万が一があったらどうする! ええい、妃や宰相も言ってやれ!!」
「本当にフワフワでかわいいわ」「私は一度触らせてもらった事がありますがやはりこうなついてくれると魔獣でも可愛いですな」
妃と宰相はすでにもふもふしていた。
「触らないですか?」
「……触る」
~数分後~
「嫌じゃ~!絶対この子は持って帰るぞ。のぅラビちゃん」
そこにはホーンラビットを抱きしめ駄々をこねるメタボ中年がいた。
「困りますよ。この子は特に人に慣れていて大人気なんですから。それに環境が急に変わったらストレスで死ぬかもしれません」
「それても嫌じゃ~!ここと同じ環境を作ればいいんじゃろ!?
それくらい皇帝の力使って作ってやるわい!!」
あまりの駄々っ子ぶりに冬太達は呆れ、宰相を見るが横に首をふる。
諦めてホーンラビットを一匹だけあげようかと魔王と冬太が話していると、今までニコニコと静観していた皇后が皇帝に近づき、「他国に来てわがままは迷惑だから止めましょうね?」と一言。
皇帝は肩をガタガタ震わせ、「わがまま言って申し訳ない」とこちらに謝ってきた。
無理もない。ニコニコ笑顔の皇后の目は笑っていないどころか、人さえ殺せそうな目をしていた。
「申し訳ありません、バルドラ陛下が無茶を言って」
「ぜ、全然問題なしだ。私は心が広いからな」
そう言いながら魔王の足は震えている。ラーナ皇后が余程怖かったと見える。
冬太は空気を変えるため話題を変える。
「ホーンラビットも可愛いですが、こちらのシュガータートルもいかがですか?好物の果物を持っていると近づいてきて食べてくれますよ」
皇帝達に果物を渡すとさっそくシュガータートルがのそのそと皇帝達の元にくる。
「ホーンラビットの愛嬌さも良かったが、このモソモソと食べるシュガータートルも違った良さがあるな」
皇帝が餌やりに夢中になっている。
その横でラーナ皇后は瓶を抱え、シュガータートルの甲羅についている砂糖をスプーンでとっている。
「シュガータートルの砂糖がこの瓶の量で五百ゼルなんて安すぎるわ!帝国で買ったら百倍の値段がつくわよ。シュガータートルの砂糖は美容に良いらしいし、ケルム宰相も奥様の為に取られてみては?」
「そうですな、日頃家族孝行出来てない分お土産を持って帰らないといませんからな」
本当はお昼までに別の動物を見せるつもりが思いのほかホーンラビットやシュガータートルに熱中してしまいとりあえず昼食を食べる為にフードコートに皇帝達を連れていってるとチケット売り場でちょっとした事件があった。
チケット売り場には、父親と母親、まだ幼い少年と少女がいた。
チケット売り場のスタッフによると、昨日の魔導放送が聞けない程の田舎から動物園まできたらしく今日は貸し切りの為、入れない事を伝えている所だったらしい。
だが幼い少年と少女が駄々をこね泣いてしまってこの騒ぎだ。
父親と母親が言い聞かせているがなかなか言うことを聞かない。
冬太にとっては入れてあげたいが、皇帝達の安全面を考えて貸し切りにしたのだ。ここは帰ってもらうしかないと思っていたが、皇帝から意外な一言。
「別に四人家族ぐらいなら入れてもいいぞ、なぁラーナよ」
「ええ、私達の勝手で貸し切りに突然したんですもの。良いですよね、魔王様?」
「そちらがいいと言うなら」
入園できる事になって先程泣いていたのが不思議なほど満面の笑みで入園する子供達。
その父親と母親は皇帝達にお礼を言い終わると子供達を追いかける。
『あっれ~、皇帝達優しくない? えっ敵じゃなかったっけ』
と魔界側の気持ちはこの時揃っていた。
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