プロローグ
ナツ様主催の共通プロローグ企画に参加させて頂きました。
夜半に降り出した雪は眠るように横たわる一人の女の上へ、まるで薄衣を掛けたようにうっすらと積もった。
一面の白に反射した光が彼女の黒髪を照らしている。
音すらも包み込む静かな雪の中、一人の男が近づきそのまま彼女の脇に屈み込んだ。それに合わせ装身具が冷たい音をかすかに鳴らす。
男は剣をしまうと目を閉じたままの女の息を確認し、彼女を抱え上げた。青白い頬に血の気はないが、少なくとも生きている。急がなければ――。
力強く雪を踏みしめ、男は足早に来た道を戻っていった。
暗転
「これより30分の休憩に入ります。なおパンフレットやグッズはロビーにて発売しておりますので、この休憩時間中にお買い求め下さい。」
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「リサ?」
舞台を見つめていた黒髪の女性に主演を務めていた男性が声をかけてきた。
「ジェイド。」
リサと呼ばれた女性は振り返ると、優しげな顔に苦笑を浮かべていた。
「こうして客観的に見ると恥ずかしくなるね。」
「そう?」
「なんか本当にジェイドには迷惑かけてたんだなぁと改めて思って。」
申し訳なさそうに力無く話すリサは、その優しげな容貌と少し低い背のお陰も相まって酷く庇護欲をそそられる。
舞台を投げ出し、家に攫って帰りたくなるのをグッと堪えジェイドはリサの頭を撫でて言った。
「そんな事は無いといつも言ってるだろう。リサに救われたこともあるんだから。」
そのジェイドの言葉にもリサの表情は晴れない。
「そのお陰で今世は小さい時からリサといちゃいちゃ出来てるしな」
整った顔に悪戯めいた表情を浮かべて言うジェイドに気を使わせてしまった事を悟り、リサは溜息を吐いて気持ちを切り替えて言った。
「後半の舞台も楽しみにしてるわ。」
「あぁ、惚れ直させてみせるさ。」
そうジェイドは嘯いてリサの頭のてっぺんにキスを落としてから楽屋に戻っていった。
頬を赤くしてその後ろ姿を見ながら、性格変わったなぁとしみじみ感じ入ってしまったリサだった。
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前世
ジェイドは困っていた。
無表情で何を考えているか分からないと言われる整った顔には、案の定何も浮かんではいなかった。
しかし彼の内心は疑問で溢れかえっていた。
残念ながら彼の凝り固まった表情筋が1ミリも動くことはなかったが…。
「もう一度言おう、君は何者だ?」
気を取り直して目の前の幼女に問い直しても帰ってくる答えは同じだった。
「だぁかぁらぁ、日本の東京と言う所から来たリサ18歳です!なんか小さくなってるけど…。」
自分の手や体を不思議そうに眺めながらイライラと答える黒髪の幼女、リサ。
「なら質問を変えよう。この周辺は魔獣の森だ。何処から入って来たんだ?」
「そんなのこっちが聞きたいですよ!ここは何処ですか?私はスーパーで買い物してる途中だったんですよ!」
そう言って手に持っていた籠の中身を見せてくれたが、ジェイドには見たことも無いようなものばかりだった。
- とりあえず騎士団長の指示を仰ぐか。-
そう決めたジェイドは一言の断りも無く幼女を抱き上げるとスタスタと歩き出した。
当然、いきなり視界の高くなったことに驚いた幼女からはクレームの声が上がったが…。
これが全ての始まりであり、現世へと続く試練になることを彼らはまだ知らない。




