エピローグ
「おい」
声をかけられた。見回りの声だ。そこで私は、ようやく現実に引き戻される。
ここは牢獄だ。部屋には窓一つなく、一日中真っ暗な、薄気味悪いところである。
こんなところに布団があるはずもなく、身体がギシギシと軋むように痛い。
ここでどれくらい拘束されているのだろうか。お風呂にも長いこと入っておらず、ひどく臭う。
外から声が聞こえる。
「聖女様。○○○○」
よく聞こえない。牢獄からでは外の会話がほとんど聞こえない。ただ、“聖女”という単語だけは聞き取ることができた。ここの外に聖女がいる。
やはり私は聖女ではなかった。最初に村長に会った時も、「数年先に聖女が現れる」と言っていた。私が来てから数年後に現れた女、シェーナこそが真の聖女であり、この世界の主役だった。
彼女がこの世界にやってきてから開始したこの物語。私はその物語の中で、すぐに退場させられてしまうモブキャラに過ぎなかった。主役に噛み付き、喚き散らすだけのモブ女A。彼女が聖女であることは、最初からわかっていたはずなのに、なぜ期待してしまったのだろうか。
私はただ都合の良いように利用されていた。利用するだけして、用済みになったら牢獄で拘束。このまま追放されるのだろうか。それとも処刑か。ふつふつと怒りがこみあげてくる。
私は悪くない。私は悪くない。悪いのはあの連中だ。私のことを褒めないから。私のことを認めないから。
他にどうすればよかったんだ。私が主役で居続けるためには、こうするしかなかった。実際にあの事件の後、村中から称賛を浴びた。最高に幸せだった。私がこの物語の主役だった。
でも、あの女のせいで、何もかもすべてが台無しになった。
私の居場所はここでもなかった。私の存在価値を理解してくれる人はこんなところにはいない。私が主役の物語は、まだ始まってすらいない。
そう心の中で呟いたとき、あたりが光に包まれた。眩い光に目を閉じる。
全身に力が入らない。身体が浮遊しているような感覚に陥る。
どれくらいその状態でいただろう。突然頭の中で声が響いた。
『あなたは今いる場所が、自分のいるべき場所ではないとお考えですね?』
私は答えようとしたが、声が出ない。私はこれを知っている。
(私の居場所はここではありませんでした。私のことをもっと理解してくれるところがあるはずです。もうこんなところに用はありません。早く転移してください)
心の中で祈った。
『それでは、あなたの望む世界へ転移いたします。どうぞよい人生を』
薄れていく意識の中で、遠くから轟音が鳴り響いた気がした。
私はほくそ笑む。その瞬間、私は牢獄から姿を消した。
そのあと、この村がどうなったのか。私は何も知らない。




