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ホタルの中の家

暗闇の中で目を覚ました。


最初に気づいたのは香りだった。淹れたてのハーブティーの匂いに、甘く、蜂蜜のようで、少し粘り気のある何かが混じっていた。遠くで薪がパチパチと燃える音がする。空気にはほのかにバニラとシナモンの香りが漂っていた。私は瞬きをして、視線を定めようとした。


天井に揺れる紙のランタンから、柔らかな光がこぼれていた。その穏やかな輝きは、磨き上げられた木の梁に反射している。私は薄い布団に包まれ、畳の上に横たわっていた。天井は低く、壁は障子で仕切られており、そのうちの一枚の向こう側では、まるで蛍が舞っているかのように金色の光が揺らめいていた。


ゆっくりと身を起こした。まだ頭はふらついていたが、体はもうそれほど重くは感じなかった。障子が静かに開き、女の子が顔を覗かせた。


「目が覚めたのね!」

彼女の声は明るく弾んでいて、まるで私が目を覚ますのを心待ちにしていたかのようだった。


彼女はどこか懐かしい雰囲気を持っていた。長い黒髪はゆるく編まれ、こめかみのあたりで柔らかくほつれていた。その繊細で優雅な顔立ちには、ほんの少し妖精のような雰囲気があった。わずかに尖った耳が、さらに不思議な印象を与えている。彼女はシンプルな麻のワンピースを着ており、その上から深いポケットのついた長いエプロンを羽織っていた。ポケットからは木製のスプーンや小さなメモ帳、鉛筆が顔を覗かせていた。


「ここは…どこ?」

声がかすれていた。


「カフェ『星のかけら』よ。正確には、その付属の家だけど。」


「『星のかけら』?」

私は小さくつぶやいた。

「なんだか…薬の名前みたい。」


彼女は微笑み、私の前にトレーを差し出した。そこには湯気の立つお茶の入ったカップと三日月型のクッキーが乗っていた。すぐにカップを掴みたかったが、なんとか思いとどまった。喉は渇いていたが、まだ状況がよくわかっていなかった。


「あなた、道で倒れていたのよ。」

彼女は私のそばにしゃがみ込んで続けた。

「道路の真ん中にね。幸い、このあたりは夜になるとほとんど車が通らないけど…あなた、本当に何も覚えてないの?」


私はカップを握りしめ、指先を温めた。記憶が断片的に蘇る。電車、エラー、タクシー、白い猫、暗い空、雲の向こうにそびえ立つ何か巨大なもの…そして、誰かに見られていたという確かな感覚。


「たぶん…迷子になったんだと思う。」

小さな声でそう言った。


彼女はまるで以前にも同じ話を聞いたことがあるかのように、静かにうなずいた。


「私はセヒ。この場所は、オドゥムギルに残された数少ない避難所のひとつ。何があったのか分かるまで、ここにいてもいいのよ。」


私はお茶を一口飲んだ。

温かく、ほのかにラベンダーの香りがした。

「このカフェ…どんな場所なの?」


セヒはいたずらっぽく微笑んだ。


「すぐに分かるわ。でも、普通のカフェとは思わないでね。」


最後のクッキーを食べ終えた。体の中に温もりが広がっていくのを感じる。頭ははっきりしてきたが、それでもまだ現実味がなかった。


「準備はいい?」

セヒが立ち上がりながら言った。


「何の?」


「この場所を知る準備よ。」


彼女が障子を開けると、私はその後を追った。まだ少し足元がふらついていた。


廊下に出ると、すぐにこの家が普通ではないことに気づいた。古い韓国のハノクに似ていたが、随所に不思議な違いがあった。天井には夜空のように小さな光の粒が散りばめられ、木の壁には星座の模様が彫られ、ほのかに光を放っている。空気にはかすかにコーヒーとスパイスの香りが漂っていた。


セヒが障子を滑らせて開けた。


「カフェ『星のかけら』へようこそ。」


私は一歩踏み出し、息をのんだ。


このカフェは、まるで異世界の狭間に存在しているかのようだった。広々としたホールの窓は…外の街を映しているとは限らなかった。ある窓の向こうには都市の灯りが広がり、別の窓には星々の渦がゆっくりと回っていた。さらに別の窓には、空を漂う巨大な影が映っていた。それは雲にしてはあまりにも壮大だった。


店内にはそれほど多くの客はいなかったが、どの人もどこか普通ではなかった。近くのテーブルでは、月の満ち欠けを模した黒い着物を纏った女性が座っていた。彼女の目は閉じられていたが、カップの中にはネオンの光が映り込んでいた。隅の席では、二人の男性が楽しげに話していた。だが、彼らの輪郭は微かに揺らいでおり、まるで電波の乱れた映像のようだった。カウンターの向こうのバリスタは一見普通に見えたが…ただひとつ、彼の影だけが微妙に遅れて動いていた。


「彼はナル。」

セヒが紹介した。

「うちのバーテンダーよ。」


若い男が顔を上げた。蜂蜜色の瞳が優しく輝き、穏やかに微笑んでメニューを差し出した。


「…ここは、いったい?」

私は囁いた。


「オドゥムギルはただの街じゃないの。」

セヒは微笑みながら言った。

「ここは交差点。何が起こるか誰にも分からない。このカフェは、旅人が一息つき、次へ進むための場所なの。」


私はメニューを見た。銀色の文字が滑らかに光っている。飲み物の名前は、どれも普通ではなかった。


「忘れられた時間の紅茶」

「未来の思考を映すコーヒー」

「夢のホットチョコレート」


「…これ、全部本物?」


「それぞれの人にとっての『本物』よ。」

セヒが意味深に微笑んだ。

「それで?何を頼む?」


私は迷った。


このカフェには、ただの飲み物以上の何かが隠されている気がした。そして、ここならきっと、答えを見つけられるかもしれない。

「今は…ただ、どうやって前に進めばいいのか知りたい。そして、なぜここにいるのかも。」


セヒは静かに頷いた。


「そのうち分かるわ。」


ナルは一瞬私をじっと見つめてから、口を開いた。


「『未来の思考を映すコーヒー』はどう?」


私は固まった。


「…どうして、それが分かったの?」


「勘さ。」

彼はいたずらっぽくウインクしながら、器用にガラスのフラスコの中で何かを混ぜた。


1分後、湯気の立つカップが目の前に置かれた。慎重に一口飲む。どこか懐かしく、それでいて予想外の味がした。まるで掴めそうで掴めない記憶のような…。


「オドゥムギルは、必要なものを教えてくれる。」

ナルはそう言いながら、セヒの前にお茶を置いた。


もっと聞きたかったが、その時、カフェに鈍いノックの音が響いた。


障子が静かに開き、年配の女性が足を踏み入れた。

彼女の背筋はまっすぐ伸び、鋭い視線が印象的だった。顔に刻まれた皺には、積み重ねた経験の重みが感じられる。ゆったりとした黒いワンピースを纏い、その上から長いエプロンをつけていた。

「ファン・カヨン。」

セヒが静かに言った。

「この店のオーナーよ。」


カヨンは私を一瞥し、じっくりと値踏みするように目を細めた。


「新入りか。」

それは疑問ではなく、確認だった。

「まさか、ここでただ座っているつもりじゃないだろうな?」


私は思わず口を開きかけた。しかしその瞬間、カフェの中に微かな鐘の音が響いた。


ステンドグラスの窓のひとつが、淡い紅色の光を放ち始める。


「おや、もう夜か。」

ナルがゆるく微笑んだ。

「そろそろお開きの時間だな。」


私はセヒの方を見た。


「オドゥムギルでは、昼と夜は太陽で決まるわけじゃないの。」

彼女は説明するように言った。

「街のリズムに従っているのよ。赤く染まったら、休む時間。」


カフェの客たちは、次々と姿を消していった。影の中に溶けるように、まるで最初から存在しなかったかのように。


すると、不思議な眠気が襲ってきた。まるで本当に、今が休むべき時刻であるかのように。


「明日、君をどうするか決めよう。」

カヨンはそう言い残し、階段へと向かった。

「今夜は、しっかり休みなさい。」


私は静かに頷いた。


しかし、頭の中にはまだ無数の疑問が渦巻いていた。


その答えが得られるのは──


また明日だ。


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