50.アリ・エンオア
特区祭十二日目。
今日は総合組手決勝戦だ。
魔法戦、異能力戦と決勝が続いたが、今回の決勝は準決勝までの流れで嫌気が差したのか、観客も少なかった。
それでも、会場はほとんど満員になる程に人が座り、今か今かと待ちわびているようだ。
「君は八百長をやっているというのは本当か? それならば僕が許さない」
「俺はそんなことはやっていない。今日の戦いでそれが証明出来れば良いんだがな」
そうアリが凄むと、迫力があった。
金髪の美少年、ということもあるだろうが、気の達人であることが一番の要因だろう。
「君はいつも正々堂々としていたから、僕は期待していたんだ。だから、八百長をやっているなんて噂が流れて許せなかった。今日君の実力を見せてもらうとするよ」
「じゃあ行くぞ」
「待て」
俺がアリ目掛けて走り出すと、アリは静止を促した。
「なんだ?」
「まだレフェリーが開始を宣言していない。ルールは守ってくれたまえ」
ルールに厳しいのは知っていたが、それは行き過ぎではなかろうか。
「そ、それでははじめ」
審判も戸惑っていた。
アリは開始早々、手に持つレイピアを体の前に抱え、青白い気を込めた。
魔闘気だ。
気の達人ということもあり、流石に異気はスムーズに使いこなせるようだ。
俺もそれにならい、魔闘気を刀に込めた。
「ほぅ。君も魔闘気を使いこなせるのか。これなら、八百長をしていないというのも信じて良いかもしれない」
そこからは、刀とレイピアの打ち合いが始まった。
アリの能力は思っていた以上に高く、剣技の熟練度だけでは俺の数段上をいっている。
アリの純粋な気と練度に押されていた。
しかし、速度と練度ではアリの方が数段上ではあるが、力においては数段俺のが上ではあった為、傷は増えているものの有効打には及んでいなかった。
「強いな。これは並大抵の努力ではないな」
「君も魔闘気を見た時に努力が伺えたよ」
血が流れていくことで、俺の能力も次第に上昇していた。
だが、アリも俺の動きについてきている。
俺は、開始前に状態異常の丸薬も飲み、全能力を駆使しているが、それでもアリの剣技によって数歩及ばないでいた。
傷が増える中、俺は地面に落ちた血を使い、それをアリに飛ばした。
「これは卑怯ではないよな? これは総合組手なんだ」
「それは分かっている。むしろ今まで僕に合わせてくれて感謝するよ。だが、手を抜いていたというなら見過ごせないよ。どうか全力で来てほしい」
「分かった」
そこからは、今まで通りの気での戦闘に加え、魔法と異能力も使った。
最初は、俺の魔法と血による異能力も、レイピアによって弾き返していたが、徐々に余裕を無くしていく。
俺は空を飛び、上空から魔法と血の異能力を駆使して攻撃を続けた。
そこからは一方的となり、アリはボロボロになっていく。
「君は強いな。僕も意地を見せたかったんだが、もう勝てそうになさそうだ」
「なんでそこまで頑張るんだ?」
「人にはそれぞれの事情というものがあるんだ」
アリはボロボロになりながらそう言い、意識を失ったのか前から倒れる。
俺はその倒れそうになるアリを支えた。
アリを支えた腕には、柔らかい二つの膨らみが感じられる。
アリは美少年ではなく、美少女だったようだ。
こうして総合組手も俺の優勝で幕を閉じた。
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