アリーナ&ジン視点
これで最後となります。
お読みいただき、誠に有難うございました。
・視点が、※※※※で、アリーナとジン(皇太子)視点と入れ替わります。
「どーして?どーしてなのよ!」
私は継接ぎだらけの服を握りしめた。
どーして私がこんな目に!?
「あいつよ。クリスティーナ!あいつが現れてから全部おかしくなったのよ!!あいつが悪いのよー!」
暗く繋がれた牢の中で叫んでも誰にも響かない。
出ろ。
冷たく呼ばれた言葉に初めて身がすくむ。
どうしてこうなったんだろうー。
****
私はアリーナ・ソルベディオ侯爵令嬢。
幼い頃から王子妃間違いなしといわれ、両親からの愛を一心に浴びて育った。
第二王子のエリック様は、正直、我が儘で怠け者と評判はいまいちだったが、婚姻相手としての身分は申し分なかった。王からとても愛されていて、将来的に王になることはないが、豊かな資産を貰って公爵になるのは間違いないといわれていた。だから、この私の相手として認めていたのに、エリック様が選んだ婚約者は、子爵家のクリスティーナだった。
「なぜなのよ!」
周りの令嬢を使って悪口をひろめ嫌がらせをしても、王子妃の座を辞退しないクリスティーナに苛つきが増す。激しく癇癪をおこす私に、今まで私を持ち上げていた友人達もゆっくり離れていった。
怒りでどうにかなりそうだった。
だから、クリスティーナが刺繍が苦手らしいと聞いて、これだと思ったのだ。刺繍なら奥の手がある。
昔、刺繍が嫌いな私にお母様がお父様に内緒だととっておきの技を教えてくれた。
「アリーナ。絶対お父様に内緒よ。刺繍なんて、糸に魔力を纏わせて平民の縫物が得意な者に縫わせればいいのよ。そして、可愛いらしく頬を染めて渡すの。私はそれでお父様と結婚できたのよ。」
お母様は本当に頭がいいわ!私はそれから一切針を持つことはしなかった。だって、魔力を糸に纏わせるなんて上級貴族で魔力の多い私には簡単だし、将来王族の一員になるのよ?衣装とお化粧に力をいれ、美しく装う方が大切じゃない?
私は早速お母様に専属の縫子を借りて、エリック様に渡す鷹の刺繍を作らせた。
それからは、予想以上の流れで笑いが止まらなかった。
クリスティーナのみっともない刺繍を見せびらかすと、周りは嘲笑してくれたし、エリック様は婚約破棄に国外追放までいってくれた。
あの、絶望に真っ青になったクリスティーナの顔!!
私は王子妃、クリスティーナは平民へ。あるべき姿に戻ったと思った。
それなのに。
神の愛し子?
それがクリスティーナ?
それからは、納得の出来ない日々だった。
周りは一気に私とエリック様を罵りだした。
鷹の刺繍を縫った縫子は、罪の片棒を担いだことに耐えられず、神殿に懺悔をし、私の刺繍の秘密もばれた。
お父様にお母様の秘密もばれ、お母様は実家に帰らされた。
愛し子を貶めた一族として、我が侯爵家の評判は一気に落ち降爵も決まった。
何より、私はエリック様と婚姻させられ、平民に落とされた・・・
すきま風の入る屋敷とも呼べない家で、飲んだくれるエリック様とは毎日罵りあった。
僅かばかりのお金は毎月入るということだったが、そんな端金じゃアクセサリー1つ買えやしない!
だから、ついていったのだ。
家に荷をおろす行商の男は、私を美しいと褒め称え私の現状を嘆き甘い言葉を囁いた。
だから、特別に肌を許した。
隣国に大きな商店をもっていて、今からそこに戻るのだというので、持ち込んでいた宝石やドレスを詰め込んで、男についていくことにした。
でも、ぜーんぶ嘘だった。
隣国には連れてきてくれたが、大きな商会などなかった。
ある朝、目を覚ますと、私の金目の物を全て奪い男は消えていた。
仕方ないので、目に涙を溜め宿で大袈裟に嘆き悲しむと、泊まり客や宿の主人達は男に憤り、この宿に暫くいればいいと言った。
だから宿にいてやったのに、日が経つにつれ、何もせず文句ばかりいうと逆に私を責めだした。
この私に働けというの?
明日出ていけと言われたので、夜、宿から適当に金目のものを鞄に詰め込んで朝一番に出て行ってやった。
こんなことなら、エリック様と一緒にいた方がマシだった。
それからは、適当に町の男を誘いながら移動したが、どんどん男の質は下がり、持ち物も服も見窄らしくなっていった。
しかも、町を歩けば、この国に神の愛し子が来た!と町中大喜びで盛り上がり、クリスティーナを中心にした劇まで演じられ大人気らしい。
どこに行っても、クリスティーナ!クリスティーナ!クリスティーナ!!
私は頭をかきむしった。
クリスティーナ!絶対に許さない!
※※※※
俺はようやく粗方の始末を終えた書類をみて、執務室で伸びをした。
「お疲れ様。いい流れで全て予定通りですよ。」
そんな俺に、フェルダンはお茶を差し出してきた。
「ちょい休憩だ。他には誰もいないんだ。フレッドもかけていいぞ。お茶にしよう。」
俺の言葉に、
「護衛が座るわけにはいかないだろ。立ってお茶だけ少しいただくよ」
フレッドは苦笑しながら、それでもお茶を受けとると、柔く笑った。
この国に留学にきた頃は、全身から刃が出てるみたいに尖っていた雰囲気は柔らかくなり、これが本来のフレッドだったのだと知る。
「今やフレッドはこの国の英雄扱いだ。」
先に座ってお茶を飲んでいたアレフの言葉に、フレッドは噎せた。
「何だよ。あの劇は!クリスは笑い転げていたが、脚色しすぎだろ!」
フレッドの言葉に、俺とフェルダンはニヤリと笑う。
今この国の流行りの劇。
それは、王子に虐げられ追い出された神の愛し子クリスティーナと、そんなクリスティーナを愛し守る騎士の物語だ。
また、そんな2人を支援しこの国へ招きいれたのは、騎士フレッドと篤い友情を育んでいたこの国の皇太子だ。
皇太子は、学園時代、未熟にも稚拙な罠にかかり悪に落ちかけた所を、留学にきていたフレッドが不敬罪をも恐れず正の道に戻し、2人は国は違えど友情を育む。しかしフレッドには、幼い頃から愛し合う幼馴染みがいたが、王子に奪われた辛い過去を持っていた。その幼馴染みクリスティーナは、王子に虐げられとうとう国を追われてしまう。
そこに騎士フレッドが現れ、クリスティーナを救いだし2人の逃避行が始まるが、クリスティーナが愛し子と判明し、2人に追っ手がかかる。
2人は手を取り合い必死に逃げるが、とうとう卑劣な罠にかかり危機に陥ってしまう。そんな2人を助けたのは、この国の皇太子だった。
皇太子は、2人をこの国に招きいれ、学園時代のいかなる時も忠義を尽くす姿と、愛し子を命を賭け守るフレッドこそ真の騎士とし、男爵位を与える。
フレッドは、そんな皇太子に深く感謝し、これからもこの国に永住し、愛し子と共に皇太子を支えると誓うのだ。
国民は、この話に熱狂した。
女性は、愛し子と騎士の愛し合う姿に溜め息を漏らし、男性は忠義を尽くし愛する人を守る姿に熱くなった。またその2人の危機を救うのは、我が国の皇太子なのだ!
皇太子と騎士の2人の篤い友情に人々は感動し、愛し子のこの国の永住を心から喜んだ。
それまでは眉をひそめられていた、学園時代の皇太子達の失態すら成長と友情のためのスパイスとなり、評価がひっくり返ったのだ。
「なんだよ、あの劇。大勢の前で、赤い薔薇を一輪さしだし愛を囁くとか誰がするか!そんな恥ずかしいことをした覚えはない!この国にも、隠れながらではあるが、特に問題なく普通に馬車で来たんだが・・」
フレッドの言葉に、
「そんなんじゃあ面白くないじゃないか!ちゃんと劇作家に依頼したんだ。素晴らしくドラマチックに仕上がっただろ?」
俺の言葉に、フェルダンも付け加える。
「ちゃんと、劇の前には、これは愛し子クリスティーナ嬢の実話に基づき劇用に創作したものです。と伝えてますから、嘘は言っていませんよ。」
「とはいえ、実際に愛し子は騎士とこの国に逃げてきて婚姻し、隣の国の王子は罰せられた。クリスティーナ嬢とフレッドは爵位授与の場で、ジンと親しげに声を交わし、ジンの側についたんだ。ほとんどが実話だと思われてるけどね!」
アレフの言葉にフレッドが額に手をあてていた。
「この劇のお陰で、フレッドの男爵授与も2人の婚姻もスムーズだったんです。今や2人の邪魔をするものは、国中から謗りをうけますから。その2人の物語に、少し皇太子の活躍を増やさせてもらったんですよ。」
フェルダンの言葉に俺は続ける。
「俺の新しい恋も劇中にいれて欲しいといったのに、そこはスルーされたんだが?」
「それは仕方ありません。」
フェルダンの容赦ない言葉に俺は肩を落とす。
しかし、実際この劇のお陰で俺の株はあがり、皇太子としての地位を揺るぎないものとできた。
一時期盛り上がっていた第二皇子派もほぼ解散状態だ。
学園時代の行いと皇太子の座に揺らぎがみえたことで、上位の貴族令嬢に避けられていたが、これで、次の婚約者も見つかるだろう。
どうしても身分的に政略結婚となるのは仕方がないが、次の婚約者とは誠実に向き合おうと思う。
愛は簡単に落ちているものではなく、互いに大切に育てるものなのだと、フレッドとクリスティーナ嬢をみて学んだ。
自分の情けない部分、それを支えてくれる存在を決して忘れてはいけないのだ。
そんな和やかなお茶の間に、衛兵が飛び込んできた。
「大変です!愛し子様が暴漢に襲われたとの連絡が!!」
その言葉を聞くとフレッドは顔色をかえた。
「犯人は既に捕らえられており、愛し子様も無事です。ただ、犯人の一味に女性がいたようで、隣の王国の侯爵令嬢だと喚いておりまして・・。戯言だと最初は思われたのですが、確かに高い魔力で攻撃してきましたので、念のためご報告申し上げます。」
衛兵にはクリスティーナ嬢に関する事はどんな些細な事も報告するよう命じている。
「侯爵令嬢?名前はわかるか?」
衛兵の言葉に、フレッドが問う。王国の貴族なら、フレッドは詳しい。
「はい。あの、アリーナ・ソルベディオ侯爵令嬢だと申しております。」
「フレッド。知っているか?」
俺はフレッドに問うと、フレッドは頷いた。
「アリーナ・ソルベディオ侯爵令嬢は確かに王国の貴族令嬢だ。クリスを貶め、エリック殿下の婚約者におさまった令嬢だ。」
フレッドの言葉に、フェルダンが首を傾げた。
「その令嬢ならわかります。しかし、第二王子と共に平民に落とされたたずです。第二王子と婚姻し、田舎に追いやられたと聞いていますが。」
「はっ?なんでそんな令嬢がこの国にいて、クリスティーナ嬢を襲ったんだ?」
4人で顔を見合せた。
「その令嬢から話を聞こう。」
俺は衛兵に、牢に行く事を告げた。
※※※※
いつの間にかこの国の帝都に流れついていた。
帝都では一層、クリスティーナが持て囃されていて、怒りが増す。
その頃この国の、ある貴族の使いだという男と偶然知り合った。私の事を知ると、男は、私の魔力を貸して欲しいという。
クリスティーナを拐い、ある貴族にクリスティーナを渡したいというのだ。
男に連れられ、それなりに小綺麗な屋敷に案内されると久しぶりに、ドレスと宝石を身につける。
成功したあかつきには、この国の貴族との縁談を整えてくれるという。
悪い話しじゃなかった。
クリスティーナに一泡ふかせることが出来るのも魅力的だ。
作戦は、クリスティーナが散歩に出る時間に、人気を見計らい男が道を聞く振りをして近づく。
一瞬クリスティーナが意識を反らした隙に、隠れていた私が魔力で攻撃する。その攻撃で倒せればよし。倒せなくても隙をみせた瞬間男が眠り薬のハンカチを吸わせ倒れさせる。
あとは、周りに人が集まりだすだろうから、介抱する振りをして素早くその場を離れる作戦だ。
男いわく、彼女には怪力の加護があるので、そばに護衛がいないらしい。作戦が失敗すれば、今後は護衛がつくだろうから今回が一度限りの大きなチャンスだ。
「作戦にのってもいいわ。でも、クリスティーナを捕まえたら私に少し好きにさせてね?一度痛い目に合わせないと気がすまないの。」
男はいやらしい顔で笑うと、顔に目立つ傷をつけないようにといいながらも否とはいわなかった。
その夜は、クリスティーナの泣き顔を思い浮かべて気分よくベッドで眠りについた。
決行の日ー。
地面に倒れていたのは、私と男だった。
クリスティーナは、私の全力の魔力攻撃を弾いたのだ。
下級貴族にしては魔力が強いのは分かっていたが、上級貴族である私をいつの間にか遥かに越える魔力を有していた。
怪力だけかと思っていたが、いつの間にか魔力も上がっていたのだ。
慌てた男が、クリスティーナの口をハンカチで押さえようとした瞬間、クリスティーナは男を腕で払った。
それだけで男は向こうの家までふっとんで倒れていた。
他にも連れ去る際手を貸す仲間がいた筈だが、逃げ出したらしい。
私も慌てて逃げようとすると、何処からともなく、人が現れ拘束された。
「愛し子様に仇なした者は、逃げようとした者含め全て捕まえた。・・愚かな。本当に愛し子様に1人の護衛もつけられてないと思ったのか?ある貴族が愛し子様にご執心との噂を聞いた王家が念のため「影」をそばにつかせ護衛していたのだよ。」
そんな言葉を聞きながら、やってきた衛兵に私は引き渡された。
「離しなさいよ!私を誰だと思ってるの?王国のアリーナ・ソルベディオ侯爵令嬢よ!」
私の叫びは、誰にも聞きいれてもらえず、牢に連れていかれ、魔力封じの手錠をかけられた。
※※※※
「はぁ。疲れた。」
牢から戻った俺は執務室で溜め息をついた。
フレッドは怒りで真っ赤になっている。
牢の中の女は聞いていられないほどクリスティーナ嬢を悪くいい放ち、俺が皇太子だと聞くとコロリと殊勝な態度にかえ、色目を使ってきた。
しかもフレッド曰く、多少草臥れているが、アリーナ・ソルベディオ侯爵令嬢で間違いないらしい。クリスを貶めた令嬢をフレッドは忘れていなかった。
「ここで処刑してもいいですが、折角、あと一週間で王国の王がこの国に来るのです。更に恩を売ることにして引き渡しましょう。」
フェルダンは悪い笑みを浮かべる。
確かに、今回の件を企んだ貴族については既に捕縛命令をだした。この国で愛し子に手を出そうとしたのだ。今後の見せしめのためにも極刑とする予定だ。
予定外の令嬢は、王国への恩を売り付ける駒とし引き渡し、令嬢は王国で厳しい処罰をうけて貰おう。
実は、ようやく隣の王国と愛し子についての話し合いの決着がついたのだ。
当初は、愛し子の引き渡しを強硬に申立てていた王国だが、この国の貴族となったフレッドと愛し子の婚姻が明らかになるとトーンダウンしていく。
貴族の婚姻による移住は、婚姻した国での身分を得ることが各国間の契約により正式に認められているからだ。
また、強硬に捲し立てていた王国の王が隠遁し、新しく王となった元王太子は理知的で公平だった。
新しい王は、まず、我が国に赴き愛し子へ直接謝罪を行うことを申入れてきた。その帰国の際、愛し子は王と共に一時帰国をし、王国の国民に愛し子と王が和解したこと。愛し子と家族の縁は切れておらず、王国は変わらず愛する故郷であること。今後も愛し子と王国は往き来があることを国民に周知し、事態の幕引きをはかりたいとのことだった。
我が国としても、隣国と争いたいわけではなく、この国への移住を正式に認められれば文句はない。
また、クリスティーナ嬢もフレッドも王国の実家の事を心配していることも知っていた。家族の絆をみせることで、王国の2人の実家も無下な扱いはされず守られることとなるだろう。
俺は、王国の最終打合せの書類にサインをした。
ー週間後。
王国の新しい王は、評判通りの公平な王であった。真摯な姿で謝罪する王と、丁寧に言葉を返すクリスティーナ嬢の関係は誰がみても良好で、これからの新しい関係をみてとれた。
ただ、そんな王に、アリーナ嬢の事を告げるとなんとも言えない冷めた表情を一瞬みせたのが印象的であった。
監視の隙をみて男と逃げていたアリーナ嬢の行方は王国でも探していたらしい。
賠償金を王国が肩代わりし、自国に連れ帰るという王に、処罰を聞くと笑顔で返された。
「もう二度と、この国にも王国にも現れることはないとお約束しましょう。」
彼女の未来はきっともう何処にもない。
※※※※
王国に帰れると喜んでいたのに、私に与えられたのは、粗末な服と食事。
手荒く繋がれ馬車に揺られた後には、酷い状態の牢に入れられた。
遠くで、クリスティーナの帰国を喜ぶ国民の声が聞こえる。
牢の前にいる見張りも嬉しそうに、王とクリスティーナの話をしている。
「クリスティーナはただのみっともない田舎の下級貴族よ!」
私が叫ぶと、怒った見張りから水をかけられた。
はぁ?この私にむかって何てことするのよ!
「お父様をよんで!あんたなんか、すぐに首をきってやるから!」
私が叫ぶと、
「それは無理だな。」
静かな声が聞こえ、扉から現れたその人は、
「アルフォード陛下!陛下!早くここから出して下さい。私は陛下の弟であるエリック様の妻です。王家一族の私にこの扱いはおかしいでしょう?」
私の言葉に、アルフォード様は冷めた目で私をみつめる。
「他の男と懇ろになり弟のもとを去ったのに、都合のいいときだけは妻というのか。それに間違っている。エリックも君も既に身分は平民だ。」
その言葉にカッとなる。
そんな私をみながら、
「君の父上は降爵後離縁し、既に引退したよ。一応連絡もしたが、もう娘はいないとの解答だ。」
「そんな!酷い!」
「酷いのは君の頭の中だ。命だけは取らないようにし、エリックと2人静かに暮らすよういった筈だ。まさか隣国にいき、しかもクリスティーナ嬢を狙うとは。」
そんな事いわれても、私は手伝っただけだ。クリスティーナを狙ったのは隣国の貴族なのであって私ではない!
私は悪くない!
「もう君の話は聞きたくない。君の処刑は決定事項だ。」
そういって立ち去るアルフォード様を私は呆然と見送る。
処刑?
この私が?
わからない。
わからない。
私のどこが悪いというの?
私はどうしてこうなったの?
ねぇ。
どうして?
彼女の問いに答える者は誰もいない。