幕間:友達だから
「ォオオオオ……ォォ……ゥゥゥ」
タウロスさんが床に崩れ落ちている。さっき飲んだので、お酒は何杯目だったろうか。お爺さんとお母さんと牛頭さんに代わる代わる注がれて、ドンドン飲み干していた。お酒が好きなのだろう。だからと言って、そんなに弱る程飲む事も無いと思うけど。
「ォォッwォォッホwォォオオオオオオオッホッホw」
「ヴォッヴォッヴォッヴォッヴォッヴォッヴォッ」
どうしてなのか牛頭さんとお爺さんの二人は大爆笑してるけど……お母さんはそれを見て凄い優しい目をしている。牛さんの顔色は分からないけど、そんな感じがした。
「――ゥ、ゥゥゥ!」
「オオオオオオゥン……? ンンンン? ォォォウ!」
タウロスさんの肩をツンツン小突く牛頭さんは、多分お兄さんに注意しているのだろうと思う。飲み過ぎだと。どうしてか顔が半笑いだけど。
「――ッシ」
まぁ、テンションが上がってるのは、さっきからお爺さんがコッソリフルーツオレにお酒ちょっとずつ混ぜ込んでるからだとは思うけど……どうしてなんだろうか。酔い潰したいのだのだろうか。牛頭さんを。
「ォ……ゥェ……」
「ウィィィィイ……ングッ……ッハァ!」
あ、また呑んじゃった。大丈夫なのかな。自分でフルーツオレ注いで飲んでると思ってるけど、全然お酒飲んじゃってるし……
「お母さんに……聞いても分からないけど、止めた方が、位は言った方が」
そう思って、牛頭さんのお母さんの方を見ると、其方ではなくケータイを眺めていた。アーこれは駄目そうだなぁ、と思っていたけど、それ以上に気になったのは……その画面を、お母さんが凄い真剣な目で見ていた事。
「……」
気にならなかったと言えば嘘になる。牛頭さんのご家族がどんな人なのか。知りたくなってしまったというか。という事で。
「何、見てらっしゃるんですか?」
「……ンォ?」
思わず聞いてしまった。お話して、少しでも仲良くなれればと思った、というのもない訳ではなかった。そこまで真剣に見ているのが、なんなのか。
「ン」
「えっと……? あれ、ここって」
確か、海外の大きな会社、だった気がする。私でも知っているような企業で、そこの化粧品は、母さん……私の母さんからおススメされたのを覚えている。
「此方の会社の化粧品、興味あるんですか?」
女性なのだからそうではないか……と思って聞いてみたのだが、彼女は黙って首をふった。その仕草が……何となく『そういうの縁ないし』と言っているように、見えなくも無かった。牛頭さんとこの一年居たから、そういうのが少しでも分かるようになったのか。
「……ん?」
ちらりとだが見えるスマホの画面。其処に写っていたのは……薬のページだろうか。擦り傷に使う塗り薬、そして紅い救急箱
「フゥン……」
そして、牛頭さんに向けるその視線は……少し、憂いの色が浮かんでいる様に見える。そう言えば思い出す。上京した息子さんに、救急箱などを仕送りする人は案外多いのだという。
「……牛頭さんが心配なんですか?」
「ッ……ンンン」
そう問いかければ、バレてしまったか、とでも言うかの頭を掻いているお母さん。昨日擦り傷だらけで、物凄い事になってしまっていたし……牛頭さんは、多分アレくらいの傷じゃ屁の河童だろうし、それをお母さんも分かっているんだろうけど。
「牛頭さん、無茶しますもんね……そうさせてしまった、私が言うのもなんですけど」
「……」
どんな時だって、ピンチに真っ向から立ち向かっていって。無傷で大暴れして……でも何時もそうだとは限らないのに。そんなの気にもしないで。
「――私も、牛頭さんの友達です。あんまり無茶しないように見張ってみます」
「ォォウン?」
「効果があるかは分かりませんけれど……私だって、牛頭さんに無茶して欲しい訳じゃありませんし。こうやってお話しできたのも、何かの縁だと思いますし。あの人のお友達として、出来る事はやってみます」
世間話でもする積りだったけど……この一年、ずっと付き合ってきた、大切なお友達だから。少しでも、心配する気持ちは分かったから。
「――フッ」
「わぷっ」
そうしたらお母さんは……不敵に笑って。グリグリと頭を撫でてくれた。それが、何となくだけど、『任せるよ』と言ってくれた気がして。
「ありがとうございます……お母さん」
それはとても嬉しい事だった。牛頭さんは大切な友人だから。その人の家族に信頼して貰えた、というのが。なんか、恋人とか、そういう人がするような感情? 感覚? なのかもしれないけど、そう言うのでは一切ない。
「大切な友達として、お母さん達と、一緒に牛頭さんと関わって行きたいです」
この感情が何なのかは、形容しがたいけれど……
「よろしくお願いします」
きっと悪い物じゃないと、思うんだ……けども。
「えっと……早速無茶しそうになってますから止めてきますね」
だからっていって速攻でお酒で目を回しそうになって居るのはちょっと……やっぱり誰かが傍で見るのはもう、何て言うか必須な感じがするんだよなぁ、この人。
あ、因みにコレは次の話へのフリみたいなもんなんで。はい。
次はお母さん視点です。




