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俺の山でデスゲームをするんじゃない  作者: 鍵っ子
俺が管理する山でデスゲームをするんじゃない
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こういう系の舞台の代表、山

「いやぁあああ!? しゃぶりつくされるぅぅぅぅううううう!?」


「……???????」


 ……差し伸べた手が凄まじい誤解答でキャンセルされた時、人と言うのは、最早感情を捨て去った満面の笑みを浮かべるしかない。俺はこんな山の中腹で悟ってしまった。




 ――俺の朝は、筋肉に日の光を浴びせる事から始まる。

 その後は黒光りする我がボディーを姿見でチェック。二度三度ポーズをキメて、今日も健康体なのを確認。洗面台で頭をガリガリと磨き、食卓に着く。そしたらテレビをつける。


『――先日、○○山の内部で不審な人影が目撃されたというニュースで』


 今日のニュースをチェックしつつ、パンとサラダと野菜ジュースの食事。それを終えたら着替えを済ませる。職場は山だ。装備はキッチリと。確認を終えたらいざ仕事へ出発。暫く、木の間からこぼれる朝日に目を細めながら歩いて……


『――皆さんこんにちは。帰否山へようこそ。今日はとても楽しいゲームデイです』


 ……その結果として、なんか山の開けた所に沢山人が集まってるのを見つけた訳なんですよえぇ。なんだあのデカいスピーカーにコンテナは、馬鹿にしてんのか。スピーカーに至っては設置の許可とれや。不法投棄でしょっ引くぞ。


『皆さんの目標はこの山から無事脱出する事。脱出できなければ皆様の命の保証はありません。正に、命を懸けたデスゲーム、となっております。どうぞ、お楽しみくださいませ』


 こんな野生動物とかもいっぱい居る山であんな、登山向きじゃない格好の人が。しかも二十人の大所帯で。アレも関係者か? つーかなんだよ、デスゲームって。山舐めてんのか埋めるぞ。


「い、命をかけたって……っていうか、俺、なんでこんな山の中に」

「――兎に角降りよう! こんな山の中に何時までも居たくねぇよ! どうせスマホも圏外だよ、外に連絡だって、出来るもんか!」

「そ、そうだ! こんな所居る必要もねぇだろ! 降りろってんなら降りてやるよ、言われなくてもな! アンタらも! ボサっとしてると日が暮れんぞ!」


 ……いや関係者っぽくないな。全然ってあ、ちょっと、待って、止まって。散り散りにならないで! ……ち、畜生行っちまった。しまった観察してないで直ぐに声をかければよかった……! 俺の馬鹿ぁ……!


「――……」


 どうしようか。ここらへんはパトロールとか何度もしてるし、一応地形迄ある程度は頭に入ってるけど……四方八方に歩いて行っちゃったし、誰に声かければいいのか。そもそも誰に声かけてもその間にどっか行っちゃうし! しくじった!

 せめて一人でも残ってれば、話の一つでも聞けたというのに……ん?


「ど、どうしよう……」


 あ、あれは……間違いない! 一人だけ女の子が残ってる! 木の根っこの近くにしゃがみこんでた! 重要な参考人だ。即確保安定。良しダッシュ!


「ひっ、何!? も、もしかして、まだだれか残ってたり……し……」


 軽く手を振って出来るだけスマイル。挨拶よりも、先ずは視覚的に安心を届けないと危ないという奴だ。ビビらせちゃいけない。焦って逃げ出して怪我とか罪悪ががが。へーい、三つ編みメガネの底の彼女、お茶しなーい? いやここにカフェとかないけどさ。


「……い」

「?」


「いやぁあああ!? しゃぶりつくされるぅぅぅぅううううう!?」


「……???????」


 ――そして、場面は冒頭に戻る訳なのだが。




 俺は、一体何をしたというのだというのだろうか。神様、出来れば教えていただけませんでしょうか。JKを山で追い回す変態にならねばならない罪とは! まぁ他より明らかに図体デカいけど! 怖いだろうけど! 顔面に当たる枝が痛ぇからそろそろ逃げないで!


「ああああっ! たす、たすけっ! ば、ばけ、ばけっ!」

「ハァ……グフッ!」


 というかね君! そんな山の中でめちゃくちゃ走ったらヤバいって! 山の危ないのは野生動物だけじゃないから! 斜面とかも、人にとっては普通に危ないんだから――っ!


「あ――」


 あ、足滑らせ……!? と、止まれっ……いや、無理だっ……! 


「お、ち」

「グォオオオオオオォォォッ!?」


 ち、畜生! こんな所で人死になんぞ出そうものならお叱りは免れない! モウ、本当に世話の焼ける……! 飛び込むしかねぇか!


「っあ」


 滑り込んだ! 抱えて、後は転がる前に、頭を……どっかに……! 刺されっ! 朝磨きをかけた俺のヘッドバッド……っ!


「――っ!」

「んっ……あ、れ?」


 ……く、首が痛い。斜面に思いっきり頭突きして、頭がスパークしておる……と、とはいえ止まった。あのまま転がってたら、マジで二人して重傷とかあり得たしな……折れてないよな二本とも。えっと、引っこ抜いて……あ、良かった。無事だ。


「……いたく、ない……で、でもなんで……? ぜんぜん、ちとかも」


 ったく、このベイビーは本当に。心配かけてくれて……。


「あたっ」


 お仕置のデコピンじゃい全く。お陰で姫抱きなんていう恥ずかしいことしなきゃなんなかった……ちょっとは落ち着いて欲しいぜ。全く、一目見ただけで逃げ出すとは、種別差別も良い所だ。


「……おでこ、いたい……ってぎゃあああああ!?」

「!?」


 あちょ、やめろこら! 暴れんな!


「やめて! 離して! 私は美味しくないです! 肉もあんまりありません!」


 食うかッ! 俺は元から肉は食えんわ馬鹿者! 穀物とかならいけるが! あ、ちょっと鼻を、鼻を殴るのは止せっ! マジで! 最近リング外したばかりでデリケートだからそこは! 


「ひ、ひぃいいい……ん、ん? というか……ふく、きてる?」


 そりゃ着てますよ。裸で出歩くわけがないでしょうよ……


「……それにこれ、もしかして、た、たすけて、くれた? わ、私」


 あぁ、良かった……無害って思って貰えた……ったく、幾ら俺がゴツイからってそこまでビビらんでもいいじゃんか。仕方ない。あんまり数がないんだけど。名刺を上げようじゃないか。これでちょっとは警戒心解いてくれると嬉しいんだけど。


「え、名刺? あ、すいません、ご丁寧に……えっと」


『農林水産省 林野庁 森林管理局 治山課 特別森林官:牛頭八太郎』


「……」

「――ブモゥ」

「……えっとミノタウロスって、公務員になれるんですね」


 失礼な! ミノス島出身の由緒正しいミノタウロスだぞ! なれるに決まってるだろ!


という事で。新作でございます。よろしくお願いいたします。

主人公は可愛くもカッコ良くも無い、鼻息の荒い牛面ですが、気に入って下さると幸いです。

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