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婚約破棄、承知いたしました。ただし、返していただくものがあります。  作者: あけはる


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第2話 清算

これで完結です。

 

 おい、聞いたか!

 バルデ侯爵家の染色工房が止まったらしい・・・!


 噂が王都に広まるまで、半日もかからなかった。


 工房の門は固く閉ざされ、煙突から煙は上がらない。

 いつもなら忙しく出入りしている荷馬車は、一台もいない。


 生命線である染料、これが届かなくなった。


 そしてその供給元は――


 ローゼン伯爵家、お抱えの商会。


 つまり。


 エリシアが言った通り

 侯爵家の事業は、彼女の家、

 つまりローゼン伯爵家に支えられていた。


 その支援が、打ち切られた。


 王都の商人たちは目ざとい。

 おのおのの利益を求め、一斉に動き出した。

 

 そしてそれは銀行も同じだ。

 未払いの請求書が、まとめてバルデ侯爵家に届けられたのである。


 フレデリックがミレーヌに与えていた宝石や衣装の代金は、

 全てバルテ侯爵家へとつけられていたからである。


 フレデリックとミレーヌの華やかな生活は

 ほとんどが借金で出来ていたのだ。


 婚約破棄の夜、王城で息子の失態を知った父であるバルデ侯爵。


 最初に言った言葉は


 ――「お前は、我が家を潰す気か!!!」。


 即刻、

 フレデリックは謹慎となり、爵位継承権をはく奪され、領地へ送られた。


 だがあきらめの悪いフレデリックは領地からエリシアに手紙を書く。

 そこには

 ”早く支援を再開しろ!”という内容が、高慢な尊大な文言とともにつづられていた。


 数日後、ローゼン伯爵家からの返事が届き尊大な態度で開封させるフレデリック。

 美麗な封筒に金字の宛名。


 「エリシアのやつ、やっと反省したか、まあ許してやらんこともない」


 期待に胸を膨らませフレデリックが読んだ返事は―――


 「契約は終了しております」


 たった一言。


「・・・あのくそ女!」


 面目をつぶされたフレデリックは顔を真っ赤にしてそう叫んだらしい。


 黙ってみていたバルデ公爵は呆れたように頭を振った。


「フレデリック」


「……父上?」


「これは、お前の、責任だ」


「エリシア嬢との婚約はただの結婚ではなかった。知らなかったとは言わせない」


「破綻しかけた我が家の事業を、守るための契約だ」


「それを忘れて低俗な女狐に騙され入れ込んだあげく、全部壊したのは」


 侯爵は静かに言った。


「お前だ」


絶望に目を見開くフレデリック。


「次期当主は弟のエイドルフで決まりだ、先ほど一族の承認を得た」


 長い沈黙が落ちる。


 まるでフレデリックの暗い未来を暗示するかのようだった。



 男爵令嬢ミレーヌも、王都から姿を消した。


 フレデリックを篭絡し侯爵家へ入り込み

 私腹を肥やすことをもくろんでいたが

 バルデ侯爵家の悲惨な財政状況を知った途端、こう言ったらしい。


「わたくしは騙されていたのですわ!」

「フレデリック様に強引に誘われて、非力な私は断れなかったのです!」


 だが社交界の令嬢たちは冷静だった。


 婚約者のいる男性に近づいては、夜会で勝ち誇っていた女など、

 誰が信用するだろうか。


 「はしたない女」

 「貞操のないメギツネ」

 

 噂が噂を呼び、

 嫁ぎ先の打診も途絶え

 社交界からつまはじきにされ、じきに姿を見せなくなっていった。



そして――


 王城の温室。


 エリシアはルシアンと向かい合っていた。


「改めてお礼を言わせてください」


 ルシアンは言った。


「わたくしは契約を整理しただけです」


 エリシアは微笑む。


 だがルシアンは首を振った。


「あなたは、あの場で誰もが言いにくいことを言った」


「救われたご令嬢も多いでしょう。あなたに感謝しているようですよ」


 ルシアンは笑う。


「良識ある貴族たちはみな、

 ローゼン伯爵家と親交を結びたがっているようです」


「それは父が、喜びますね」


「そして私も、同じ思いです」


 ルシアンは一歩踏み出した。


「私はあなたと、仕事がしたい」


 まっすぐな視線。


「ともに北方へ来ていただけませんか」


 すらりと長い手が差し出される。


「父から産業改革の拠点を任されました」


「・・・北方の離宮ですね」


「ええ」


 ルシアンはその金の瞳に笑みをたたえ頷く。


「羊毛、染織に薬草。可能性を秘めた産業が多い」


「私にはあなたの力が必要です」


 美しさ力強さに、少し甘い視線をのせたルシアンを前に

 エリシアはいたずらに首を傾げた。


「殿下」


「はい」


「それは、雇用の、お誘いですか?」


「そうですね。今は、とでも言っておきましょうか」


 ルシアンはエリシアを見つめてほほ笑む。


「ですが、その先を」


 真剣な顔。


「考えていただけると、嬉しいですね」


 彼は照れたように頬をかく。


「すぐに返事は求めません」


「ただ」


「あなたが王都で消費されるのは、許せない」


 そのまなざしは優しい。


「あなたには、もっと広い場所が似合う」


 エリシアはしばらく考え覚悟を決めた。


「では」


「まずは北方へ伺います、その先は」


 エリシアは少しだけ意地悪に言葉を切った。


「殿下次第、です」


 ルシアンは楽しそうに笑った。


「それは努力しないといけませんね」



エリシアが、北方の離宮での幸せな未来を手に入れた瞬間だった。

なんとか完結できました・・・!


最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマ、感想などいただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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