第6話 気づいたら、もう村じゃありませんでした
朝。
外が、やけに明るい。
音も多い。
人の気配も、昨日より濃い。
(……まだ朝だよな?)
宿を出て、すぐ分かった。
道が、違う。
昨日まで、少し曲がっていた道が、
まっすぐになっている。
その横に、
新しい杭が打たれていた。
「……え?」
さらに進むと、
交差点ができている。
しかも、
直角だ。
(碁盤の目……?)
「おはようございます!」
リリアが、帳面を抱えて走ってきた。
「……何が起きてます?」
「起きてますね!」
即答だった。
「昨日の石材で、
区画を引き直すことになりまして!」
「誰が決めたんですか」
「決めてません!」
「……?」
「“今やらないと後で面倒”って、
皆が言い出しただけです!」
(それ、
めちゃくちゃ分かるな)
街の中央。
昨日まで倉庫だった場所が、
市になっていた。
屋根付きの通路。
整然と並ぶ露店。
肉。
魚の干物。
革製品。
簡易防具。
「……常設?」
「はい!」
リリアが胸を張る。
「もう仮設じゃ足りないので!」
さらに外へ。
城壁が、広がっている。
低かった壁が、
一段高くなっている。
「これも?」
「これもです!」
「早くないですか」
「素材があるので!」
(素材、
強すぎるな)
街の端。
昨日まで何もなかった場所に、
新しい建物の骨組みが立っている。
「……誰の家ですか?」
「まだ決まってません!」
「……?」
「人が来る前提で、
作ってます!」
(前提なんだ……)
昼。
街の中心で、
商人と冒険者が話している。
「拠点にするなら、
ここだな」
「ダンジョン近いし、
物資も安定してる」
「……“ノアんとこ”、
便利すぎるだろ」
完全に、
定着している。
ギルドに入る。
掲示板が、
昨日の倍になっていた。
依頼も、
明らかに増えている。
「……冒険者、
増えました?」
「はい!」
受付が、疲れた顔で笑った。
「でも、
みんな満足してます!」
(それなら、
いいか)
夕方。
街を見渡す。
まっすぐな道。
整理された区画。
人の流れ。
「……完全に、
街だな」
もう、
村とは呼べない。
誰が決めたわけでもない。
だが、
全員がそう思っている。
夜。
宿の部屋で、
ベッドに腰を下ろす。
「……広くなったな」
窮屈さは、消えている。
歩きやすい。
分かりやすい。
無駄が少ない。
楽だ。
それが、
一番大事だ。
この日。
ノアんとは、
完全に「街」になった。
名前も、
役所も、
宣言もない。
だが――
人が集まり、
物が巡り、
道が繋がった時点で。
もう、
戻ることはなかった。
次は、
人が増える。
それが、
次に来る“面倒”だ。
俺は、
その予感だけを抱えて、
眠りについた。
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