第47話 止めに来た人が、一番状況を動かした
最初に動いたのは、
ベルグラントでも
カリクスでもなかった。
第三国、
ラーデン王国。
規模は中堅。
立場は中立。
そして――
自分たちは賢いと思っている国だ。
「仲裁に入る」
王の一声で、
決まった。
「戦争になる前に」
「双方を
落ち着かせる」
理念は、
正しい。
ラーデンの使節団は、
まずベルグラントを訪れた。
「ご理解ください」
使節が言う。
「カリクスは」
「敵意を
示していません」
「……だからこそだ」
ベルグラント将軍は、
低く答える。
「反応しない」
「抗議もしない」
「それが、
不気味だ」
「ですが」
「このままでは」
「貴国が
孤立します」
その一言で、
空気が張り詰めた。
「……脅しか?」
「事実です」
使節は、
悪気なく答えた。
悪気がないのが、
一番厄介だった。
翌日。
使節団は、
ハブリスへ向かった。
「仲裁の席を」
「設けていただけませんか」
丁寧な申し出。
リリアが、
ノアに伝える。
「……断りますか?」
ノアは、
即答しなかった。
「……仲裁、
ですか」
少し考えてから言う。
「それって」
「誰かが
正しい前提ですよね」
リリアは、
黙る。
「今回は」
「全員、
自分が正しいと
思ってます」
「だから」
「席を作ると、
面倒が増えます」
「……お断りします」
それが、
返答だった。
ラーデン使節は、
困惑した。
「中立なのでは?」
「はい」
リリアが答える。
「だから、
仲裁しません」
理屈は通る。
だが――
空気は通らない。
使節団は、
王国へ戻る。
報告は、
こうまとめられた。
「カリクスは
協調を拒否」
「話し合いを
避けている」
「状況を
静観している」
事実だけだ。
だが、
印象は悪い。
噂は、
さらに歪む。
「カリクスは
高みの見物だ」
「戦争になっても
痛くない」
「だから
止めない」
ベルグラント。
将軍が、
報告を読む。
「……見たか」
「やはり、
余裕だ」
ラーデン。
王が、
ため息をつく。
「……なぜ」
「こんなに
話が
通じない」
それは、
ノアのせいではない。
夜。
ハブリス。
ノアは、
宿の部屋で
静かに言った。
「……止めに来る人ほど」
「事態を
動かします」
リリアは、
苦笑する。
「次は」
「……どこが
動きますか?」
ノアは、
窓の外を見る。
「……もう」
「誰が動いても」
「止まりません」
それは、
予言ではない。
ただの、
状況整理だった。
この日。
戦争は、
まだ始まっていない。
だが――
全員が
一歩ずつ
前に出た。
戻る理由は、
もう、
どこにもなかった。
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