第45話 助けないは、敵対だと勘違いされる
噂は、
途中で形を変える。
「カリクスは助けない」
「困っている街を見捨てた」
「力はあるのに、使わない」
事実は混ざっている。
解釈が、歪んでいる。
その噂を、
都合よく受け取った勢力があった。
国境近くの小国、
ベルグラント。
資源が少なく、
物流も弱い。
そして――
焦っていた。
「カリクスは」
ベルグラントの軍議。
「中立を装っているが」
「実際は、
選別しているだけだ」
誰かが言う。
「助ける価値のある街は助け」
「そうでない街は切る」
「……次は、
我々かもしれない」
空気が、
一気に重くなる。
「なら」
将軍が、
低い声で言った。
「先に踏み込むべきだ」
反論も、
あった。
「敵意はない」
「攻める理由がない」
「経済圏を敵に回すのは、
得策ではない」
だが――
恐怖は、
理屈に勝つ。
「攻めないまでも」
「圧をかける」
「通行権を、
制限する」
「物流を、
揺さぶる」
“戦争未満”の選択だった。
数日後。
変化は、
静かに出た。
「……通れません」
街道で、
兵が立ちふさがる。
「理由は?」
「上の命令だ」
それ以上、
語らない。
商人が、
戻ってきた。
「関所で、
止められました」
「税が、
急に倍に」
小さな、
だが確実な圧迫。
ハブリス。
リリアが、
報告をまとめる。
「……ベルグラントです」
「通行制限と、
臨時課税」
「明確な敵対ではありませんが」
ノアは、
少し考えた。
本当に、
少しだけ。
「……面倒な
やり方ですね」
怒ってはいない。
だが――
嫌そうだった。
「どうします?」
リリアが聞く。
ノアは、
即答しなかった。
「……こちらからは」
「何もしません」
意外な答えだった。
「……放置、
ですか?」
「はい」
「理由は?」
「今、
反応すると」
「正解を与えます」
リリアは、
一瞬考えて、
理解した。
「……誤解は、
自分で
育てさせる」
「はい」
それが、
ノアの選択だった。
数日後。
影響は、
ベルグラントに返った。
「……税収が」
「物流が、
減っています」
「代替路が、
ハブリス経由で
組まれたと……」
誰も、
予想していなかった。
圧をかけたつもりが、
自分が外れた。
将軍が、
歯噛みする。
「……何も
してこないのに」
それが、
一番怖かった。
夜。
宿の部屋。
ノアは、
ベッドに横になる。
「……誤解って」
独り言。
「解こうとすると、
余計に
面倒だな」
だから、
放置する。
この日。
ベルグラントは、
一歩、
不利な位置に
自分で立った。
カリクスは、
何もしていない。
だが――
戦争の種は、
確かに蒔かれた。
水をやるかどうかは、
まだ、
世界次第だ。
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