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ワガママ無双 ~面倒くさがりが転生したら、必要なスキルが勝手に生えて街と国ができていた件~  作者: 七瀬ミコト


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第40話 何も起きない日は、だいたい良い日だ

 朝。


 ノアは、

 珍しく予定がなかった。


「……今日は」


 天井を見て、

 一言。


「何もしない」


 完璧な計画だ。


 市場。


 歩いているだけで、

 声をかけられる。


「ノアさん、

 これ余ってるから」


「味見、

 します?」


「昨日のパン、

 うまく焼けました!」


(……平和だな)


 果物屋。


「どれが

 甘いですか?」


「ノアさん、

 それです」


「……信用します」


 外れない。


 最近、

 そういう街だ。


 通りの角。


 子供たちが、

 地面に線を引いている。


「それ、

 何?」


「街道ごっこ!」


「ここが、

 ハブリス!」


「ここが、

 港!」


 ノアは、

 少し固まった。


(……浸透、

 早いな)


 昼。


 食堂。


「今日は

 おすすめありますか?」


「全部です」


「……困りますね」


 結局、

 いつもと同じものを頼む。


 隣の席。


 商人二人が、

 雑談している。


「最近、

 遠回りしなくて

 いいよな」


「道が

 静かだ」


「安心して

 寝れる」


 それが、

 何よりの成果だ。


 午後。


 何となく、

 城壁の上。


 風が、

 気持ちいい。


「……高いな」


 でも、

 威圧感はない。


 生活の延長だ。


 鍛冶区。


 職人が、

 揉めている。


「それ、

 先に使うな!」


「いや、

 順番だ!」


 ノアは、

 立ち止まった。


(……介入、

 必要か?)


 次の瞬間。


「じゃあ、

 半分ずつで!」


「それで

 行こう!」


 勝手に解決した。


(……楽だ)


 夕方。


 宿の前。


 掲示板に、

 紙が貼られている。


【本日、

 特に何もありません】


【通常営業】


 ノアは、

 思わず笑った。


 夜。


 宿の部屋。


 ベッドに倒れながら、

 独り言。


「……世界を

 変えたって

 感じ、

 しないな」


 それが、

 最高だった。


 この日。


 事件は、

 一つも起きなかった。


 英雄の出番もない。

 奇跡もない。


 だが――

 人はよく眠れた。


 それは、

 どんな無双よりも

 難しいことだ。


 ノアは、

 もう夢の中だ。


 面倒なことが

 起きない日。


 それを守るために、

 どれだけのことが

 積み上がっているかを。


 まだ、

 知らないまま。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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