第4話 気づいたら、よそから人が来るようになってました
朝。
街の門が、やけに混んでいた。
「……?」
馬車が一台。
その後ろに、もう一台。
(昨日まで、
こんな光景なかったよな)
門の近くで、
見慣れない商人が門番と話している。
「最近、
この辺りで肉が安いって聞いてな」
「素材も多いらしい」
「へえ……」
門番が、
少し誇らしげに答えている。
(……噂、
広がるの早いな)
街に入ると、
昨日よりさらに賑やかだった。
露店が増え、
通路が自然と分かれている。
「肉はこっちだ!」
「革は中央倉庫!」
「荷馬車は裏手から!」
声が飛び交う。
完全に、
流れができている。
ギルドに入ると、
見知らぬ冒険者が増えていた。
「ここが例の街か」
「噂より小さいな」
「でも、
素材は本物だ」
受付の女性が、
忙しそうに走り回っている。
「……大変そうですね」
「正直、
楽しいです」
即答だった。
(……強いな)
昼前。
中央倉庫の前で、
商人同士が交渉していた。
「この量、
全部持ち帰れるか?」
「値段次第だな」
「次も、
同じ量が来るなら……」
俺は、
その横を通り過ぎる。
(……俺が行くかどうかで、
変わるんだけどな)
言わない。
面倒だから。
昼。
露店で、
見知らぬ客に声をかけられた。
「兄ちゃん、
この街の冒険者か?」
「はい」
「いい場所だな」
「そうですね」
「名前は?」
一瞬、考えた。
正式な街の名前は、
正直知らない。
「……ノアんとこ、
って呼ばれてます」
「ははっ、
分かりやすい!」
その場で、
それが通じた。
(……もう通称だな)
午後。
門の外で、
馬車の行列が伸びている。
近隣の村。
小さな街。
行き先の札には、
どれも同じ文字。
「ノアんとこ」
「……書くんだ」
誰も俺に確認していない。
まあいい。
夕方。
街の外れで、
商人と職人が話し合っていた。
「定期的に回せるなら、
拠点にしたい」
「倉庫、
増やすか」
「道、
もう一本欲しいな」
話が、
未来の話になっている。
(……完全に、
街扱いだな)
夜。
宿で、
少し高くなった夕食を食べる。
それでも、
文句は出ていない。
「最近、
ここいいよな」
「うん。
“ノアんとこ”」
自然に、
その名前が使われている。
部屋に戻り、
ベッドに座る。
「……人、
集まりすぎじゃないか?」
初めて、
そんなことを思った。
だが、
困ってはいない。
不便にもなっていない。
なら――
「まあ、
いっか」
考えるのは、
明日でいい。
面倒だ。
この街は、
もう“ただの村”ではなかった。
だが、
俺はまだ何も決めていない。
それが一番、
この街らしい気がした。
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