第三話 精霊界はやっぱり危険かもしれません
「触るのは無理そうですね」
私と玲奈がそう言うと、アルデーヌが私達の前に出てきた。
「危ないので離れていてください」
私達は少しだけ扉から離れる。
「炎の精よ、我が呼びかけに応えよ。ファイヤー・ストロング・エクスプローション」
危なっ!
なんちゅう危ない魔法使っとんねん!!
扉が燃え尽きちゃうよ!?
行けなくなっちゃうよ!?
そう思ったけど、扉は無傷だった。
それどころか薔薇もそのままだ。
強いな。
「無理でした」
「うーん、どうしようね。リュミエールなにかない?」
『最初に訊きなさいよ……。あなたが薔薇に触れば解決よ』
「え、やだよ。怪我するじゃん」
『しない』
「する」
『しない』
「する」
『しないって言ってるでしょ!!ごちゃごちゃ言わずにやりなさい!!』
「はいぃ!!」
私はリュミエールに根負けして、ゆっくりと扉に近づいた。
そして、薔薇に恐る恐る触れた。
次の瞬間、薔薇は光を放ち、光の粒子になって消えた。
なんてアニメっぽい世界なんでしょう。
私は扉を思い切り押してみた。
「あれ?」
びくともしない。
「引き戸かな?」
私は扉を思い切り引いてみた。
「まさかのスライド?」
私は扉を思い切り横に引いてみた。
「シャッタータイプ?」
私は扉を思い切り上に持ち上げてみた。
『……なにしてるの?』
「いや、開かねぇなって」
『当たり前でしょ。魔法の合言葉で開けるのよ』
出たよ厨二病設定。
やれやれ。
「合言葉は?」
『開けごま』
「「ぶふっ!!」」
私と玲奈は思い切り吹き出した。
「開けごまって……」
「ざ、ザルすぎる……」
何だこの世界。
ファミリーネームだけじゃなくて、合言葉までダサいのか……?
マジでザルなんだけど……。
◇◆◇
――数分後
「もう終わったかしら?」
「「お見苦しいところをお見せしました」」
私と玲奈はリュミエールに深々と頭を下げて謝った。
だってさ、開けごまはないでしょ。
「よーし、いくよ。開け〜ごまっ!!」
私が言うと、扉が自動で開き始めた。
マジで開いた。
合言葉で開く自動ドアだった。
完全に開き切ってから、私はリュミエールとクソカスの方を見た。
「じゃあ、精霊界で合流しようね」
『ええ、気をつけてね』
私達はリュミエール達に背を向けて扉の中に入った。
扉の先には明るく、何もない。
しばらく歩くと、さっき通った扉と同じ扉が目の前に現れた。
「この先が精霊界……。二人共、戻るなら今だよ」
「戻りませんよ。俺はあなたを守るためについてきたんですから」
「私も戻りません、この生涯を美形と共に終わらせられるなら本望です」
一人変なこと言ってる人いたけどいいや。
私は扉を開けて、精霊界に足を踏み入れた。
明らかにどこかの建物のようなところに出てきたな。
「ここが精霊か――」
私はふと前を向いた。
そこにはズボンを履いている途中の男性がいた。
ちゃんとパンツは履いているけど……。
「いやぁぁあぁぁぁぁぁあああああ!!」
『わあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!』
女子は男子のパンツを見ると叫びたくなる。
byリディール
◇◆◇
『急に人の前現れて、着替え見て悲鳴あげるとかどう言うつもりだ貴様ら!!』
「いや、これは不可抗力で……」
『黙らんかい不埒者!猥褻人間!!』
「人間じゃなくて精霊のあなたには言われたくないですねーだ!!」
私と男性はお互いを睨み合っている。
女性の性質を知らないのか、この男は。
女子は男子の着替え見たら、鼻血吹いて倒れるか、悲鳴上げるかの二択なの!!
『まず、なぜ人間が精霊界にいる?通路は全て遮断されてるはずだろ』
「なんか、私の契約精霊が『特別な子だから行ける!』って言い出して。ダメ元で来たら来れました」
『ほう。……目的は命の宿木か?』
なんでわかるんだろう。
一言も呪いのこと話してないのに。
『命の宿木まで案内してやる。葉を取ったらさっさと帰れ』
「……人間に恨みでもあるんですか?」
『なぜそう思う?』
「だって、何だか辛そうだから」
『……行くぞ』
「え?でも私達の連れが……」
『精霊と契約者は命の一部を交換している。居場所くらいならすぐに分かる』
私達は男性の精霊について行った。
命の宿木って、何だか貴重そうな名前だから、すんなりもらえるとは思ってなかったな。
「あなたの名前は?」
『……リュメルト』
誰かと契約してるのかな。
リュミエールみたいに精霊界に帰ってきてるんだったら、早く終わらせてあげないと。
建物を出ると、そこは精霊会と呼ぶのにふさわしい光景が広がっていた。
ただ、活気はない。
しばらく歩いて、命の宿木と思わしき木に着いた。
『早く葉を取って帰れ。人間は嫌いだ』
私は命の宿木の根に立ち、葉に手を伸ばした。
あと少しで届く……。
『〜〜♪〜〜♪』
「歌声……?」
歌声に気を取られ、私はバランスを崩した。
「リディール王女殿下!!」
「りーあ!!」
え……?
玲奈の腕の中に私は倒れ込んだ、
「大丈夫ですか?リディール王女殿下」
「だ、大丈夫」
私はアルデーヌに手を借りて立ち上がった。
今耳に届いたのは……。
いや、そんなことより歌声だ。
この綺麗な歌声、もしかして精霊王の妃の声?
「あの、これって……」
私はリュメルトに訊こうと、振り向いた。
リュメルトは苛立ったような顔をしている。
「リュメルト、あなたまさか精霊王……?」
私が言うと、アルデーヌと玲奈が驚いたように目を見開いた。
「精霊王って、あの精霊王?」
「嘘……」
リュメルトが苛立ったような顔のまま、私達を見た。
その目は酷く冷たく、悲しみに満ちていた。
『貴様の言う通り、私は精霊王だ』
まさかの嫉妬大魔王の精霊王だったー!!
リュメルトは後ろを向いて、近くにいた精霊に話しかけた。
『おい、早くあの女を黙らせろ』
「ま、待ってください!」
私が言うと、リュメルトは私を見た。
冷たい目……。
よく知ってる、向けられたことのある目。
「どうして妃様と話さないんですか……?」
『浮気者と話す義理はない』
「でも、話さないと何もわからない!私の国で精霊伝説として語り継がれている話が事実かどうかなんて誰にもわからないじゃないですか!!」
リュメルトは私の近くに歩いてきた。
そして、私の頬を殴った。
「「リディール王女殿下!!」」




