第一話 精霊界に宿り木を探しに行きたいです
――半月後
『リディール、あなたの呪いを解く方法が見つかったわ』
ある日、リュミエールが私にそう言ってきた。
しばらく見ないと思ったら……。
「それはありがたいんだけど、この数日間どこにいたの?」
『精霊界』
「わぁお」
精霊界ってあれだよね?
嫉妬深い精霊王と、人間と浮気した精霊王の妃がいる精霊界だよね?
そんなところに行ってきたの?
『精霊王はまだご乱心だったわ。美しかった精霊界の植物が黒く淀んでいたの』
「精霊伝説ってかなり前の話だよね?嫉妬長くない?」
『精霊は不老不死だもの。人間と違って切り替えができない精霊もいるわ』
そっか、精霊は不老だもんね。
寿命の短い人間とは違い、精霊は不老だから時間はたっぷりある。
しつこい男すら恋を諦める人間と、しつこい男が永遠に一人を思い続ける精霊。
種族の違いってすごいな。
『昔、ずっと精霊界に響いていた美しい歌声はもう聞こえない。聞こえるのは精霊界の奥深くで、絶望したような声で悲しそうに歌う声だけ。精霊王はそれを聞いても、嫉妬で耳を塞いでるだけ』
「……」
『……まあ、そんな話は置いといて、呪いの解呪よ。クソカスと色々調べてたんだけど、精霊界にある命の宿り木の葉には、どんな呪いや病気も治す効果があるの』
命の宿り木か……。
昔本で読んだことあったような……。
確か、精霊界にある伝説の木だよね?
精霊伝説は数百年も前の話だから、実際に命の宿木を見た人はこの世にはいない。
昔は精霊界と人間界は互いに向こうの世界に行くことができた。
人間は精霊界へ、精霊は人間界へ。
精霊界へ繋がる扉は、どの国にも一つはある。
しかし、精霊王の妃の不貞が発覚してからは、人間と契約していない上位精霊は精霊界へと姿を消した。
そして、メッチャツオイ王国やその他の国の精霊界への扉は固く閉ざされ、精霊界に人間が立ち入ることは二度となくなった。
「じゃあ、宿木の葉をちぎってきて」
『リディール、あなたが行かないと意味がないのよ』
「え?」
『宿木で呪いを解くためには、呪われた本人が行かなければならないの』
え?
絶対に行きたくないんだけど。
マジで行きたくないんだけど。
「あっ、でもさ、精霊界に行くための扉は全部閉ざされてるわけだし、私が行くのは無理でしょ」
『あなたならあの扉を開けれるわ』
おっと、だとしても行きたくないぞ。
呪いは解きたいけど、一人で精霊界に乗り込むのは嫌だ。
よし、話をそらそう!
「そういえばさ、精霊王の妃ってどうして人間界に繋がる扉を使わなかったの?」
『あの扉は人間用だもの』
「人間用?」
『人間と精霊は体の仕組みや魔力が違う。だから、人間のために作られた扉を使うと、精霊は人間界へ繋がる異空間から出られなくなるの。だから、精霊は精霊は自分の魔力で異空間を開いて地上に降り立つの』
へー、多分細かい設定まで書いてなかった小説がリアルになると、こんな細部まで知ることができるんだー。
リュミエールが「話をそらすな」みたいな顔でこちらを見ている。
『あなたは特別な子なんだから、多分いけるわよ』
「特別な子?」
『ええ、特別な子。まあ、二人くらいなら連れて行けるんじゃないかしら』
「え?じゃあ――」
◇◆◇
「リディール王者殿下……なんで俺連れてこられたんですか!?」
「ようこそ〜。来てくれてありがとう」
「王女殿下、流石に軽々しく異性を部屋に招くのはどうかと……」
アルデーヌが私にじとっとした目を向けてくる。
やっだー、その顔はリュミエールがよくしてるやつじゃーん。
リュミエールが使用人の姿でクスクㇲと笑っている。
さっきまで眠っていたクソカスが起き上がって私の傍に来た。
「私、精霊界に行こうと思うの」
「精霊界……?まっ、待ってください。それって、精霊王の嫉妬で閉ざされた、あの精霊界ですか?数百年誰も行ってない、行ったら二度と戻れないって言われてる……!?」
「うん。私の呪いを解けるものが、精霊界の命の宿り木なの」
アルデーヌは考えるような仕草をした。
私の足元へ来たクソカスを抱き上げて、アルデーヌの回答を待つ。
「いいですよ、お供いたしましょう」
「本当?ありがとう!よし!じゃあ行こう!!」
私がテンションアゲアゲでみんなに言うと、部屋の天井から誰かが降ってきた。
全員が固まり、地獄みたいな空気が流れる。
落ちてきた女性が頭を抑えて起き上がる。
アルデーヌが私を庇うように、その人の前に立ちふさがる。
落ちてきた女性は私達を見て、顔を真っ赤にして叫んだ。
「あー!もうクッソ!!だから影なんかになりたくなかったのにぃぃいいい!!」
え?
影?
ってことは、この人が今の私の影!?
なんか嫌なんだけど!?
「えっと、あなたのお名前は……?」
「ファ!?リディール王女殿下が私に話しかけてくださってる!?声可愛い!やっぱロリはいいなぁ。ぐへへへへ!この世界に来れてよかった〜!!眼福〜!!」
あ、この人、オタクだ。
ちょっと待って?
この世界に来れてよかったって言わなかった!?
「あなた、転生者?」
「……え?」




