第63話 炎の舞い
「きべらあああああ!!!!」
「っぐ……」
ルブラーン正門付近では、殺戮依存症の発作により発狂するリアに対し、キリウスが対応していた。
「げえっへへへへ……」
「……気持ち悪いなあホンマに……」
リアは止めどなくキリウスに剣を振りかざすも、キリウスは吹っ飛ばされて壊れた民家の中にあった剣を拾い受け止めた。
一度攻撃を受ける度にキリウスの持つ剣は折れ、キリウスはリアが向かってくる度に剣を拾い受けていた。
「脆いなあ……」
するとキリウスは剣を放り捨て右手を握り、親指を上に、人差し指をリアに向ける銃のような形を右手で作った。
そして人差し指の指先に小さな火の球を繰り出した。
「〝炎槍弾〟」
キリウスがそう言うと、火の球は凄まじい速さでリアに発射し、槍のような貫通力のある形状と化してリアに向かっていった。
しかしリアは剣で、容易くそれを弾いた。
「ばらああええ~」
「ちっ」
キリウスは同じ炎の球を何十発も撃ち放つも、リアはダッシュでキリウスに近付きながら確実に全ての球を剣で弾いた。
「なんでやねん……」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」
そしてリアはキリウスの左側の首を狙って振り抜いた。
キリウスは避けきれず左腕で首を庇い、剣をもろに受ける。
「……お、斬れてへんやん」
リアの剣の刃は熱により溶けたような形となり、切れ味は完全に落ちていた。
「りりびひりいいいい……」
「ほなもうちょい調子乗るか」
するとキリウスは地面に右手の平を置き、右手に火を灯した。
その火は地面に細く2通りに広がっていき、キリウスとリアを囲むような円形を造り出し、その火は燃え上がり円形の火は壁のように渦巻きながら2人を囲っていた。
「〝炎渦監獄〟」
これにより、ルブラーンの街は広範囲に渡り燃え広がっていった。
「ぴあああああ!!」
リアは跳ね上がり脱出しようと試みるも、炎が巻き上がりリアを邪魔する。
「あかんあかん、意外とスキ無いでそれ……てか、何でワイこんなん知っとるんや?……」
しかしリアは剣の切っ先をキリウスに向け、刺しにかかった。
「っう……」
キリウスはかわすも、右横腹を僅かに斬られた。
「冷たっ……」
「ぱるうううう!!!」
リアの体からは冷気を発し、徐々に加速していった。
キリウスは全てかわそうとするも、僅かに傷を負い続け徐々に一撃一撃が強く重くなっていったのをはっきりと感じた。
「っく……ぅあ……」
「づえええああああ!!!!」
(よう分からんまま戦ってるけど、意外と出来るもんやな……記憶無くす前に染みついてるんか?……結構色々分かるな……
……あいつは今呼吸法変えて体温めちゃくちゃ上げてるけど、オーバーヒートせんように冷気と共鳴しとるな、狂っとるけど頭は回っとる……
……それやったら範囲狭めとるワイがあかんやん!?何してんねん!!)
それはキリウスのほとんど思いつきのような無茶苦茶な理論だが、それほどまでに、共鳴というものは強大なエネルギーを秘めている。
キリウスは〝炎渦監獄〟を解き、それらの炎を自らの体に収束させ自傷した。
キリウスの体は負荷に耐えきれず火傷を負っていた。
「いやあムズいし痛いで、わざと攻撃くらうんは……って言うても聞こえてへんか」
「ぜえええがあああ!!!!」
キリウスは正面から向かってくるリアの切っ先を慣れてきた目でちゃんと見て、それに追いつく反射神経でかわし強烈なラリアットを加えた。
「あがっ……」
「さっきから遅すぎやねん、なめとんのか」
キリウスの右肘はリアに直撃し王宮に向かって吹っ飛ばされるも、キリウスが先回りしサッカーでのバイシクルシュートのように、オーバーヘッドでリアを地面に蹴り飛ばした。
リアは街の被害を顧みず暴れ回ってきたため、ルブラーンは半壊状態となっていた。
そこに無関係の人々の血が一滴も流れていないことは、端から見れば奇跡に等しいものだ。
「〝吸収放火〟……あらゆるダメージや負荷を体内に吸収し、その分を上乗せして攻撃力を爆発的に上げる、らしいで……
……なんか頭ん中に入ってきただけやけど…呪力言うらしいわ」
キリウスは気絶するリアの顔の側に立った。
「まだ生きとるんか……」
キリウスはトドメを刺すため、リアの首元を踏みつけるために右脚を大きく上げた。
「じぎゃああああああ!!!!!」
その瞬間リアは、キリウスの気配を察知したかのように突然目を見開き断末魔のような叫び声を上げた。
キリウスは両耳を塞ぎ、ゾッと鳥肌が立ち冷や汗も出たため、リアから距離を取った。
「っぐく……うるさ……」
そしてリアから激しい冷気がルブラーンを覆い、ルブラーンの敷地内の地面は全て凍り付いた。
リアは立ち上がり、リアの剣には強度が高く純粋で透明度の極めて高く刃を形作った氷を纏っていた。
「しいいいいああああ~」
「……ええやんけ、来いや」
いつの間にか闘志がフツフツと炎のように燃えていったキリウスは、渇いた上唇を舌で撫でるようになめ、笑って体勢を立て直した。
キリウスは全身凍傷に遭い耳や鼻も凍り付き、体を動かせば体のどこかが切れて血が流れ、吐く息は白くなっている。
「いっひひひひっひひ~」
(あかん、動いたら死ぬわこれ……足と地面くっついて動かんし……吸収した分を体温維持に回さんと……それでも間に合わんし、めちゃくちゃ寒い……熱気と共鳴したいけどワイの周りにあらへん……)
「ばああ」
するとリアは氷の地面をものともせず、さらに加速してキリウスに斬りにかかった。
キリウスは左手でいなしにかかるもキリウスの左手は簡単に斬れ、親指以外の指の部分が第二関節まで斬り落とされた。
「っぐ……はぁ、はぁ、はぁ……」
キリウスはなんとか両足を地面から引っこ抜き、滑りながらもリアとの間を取った。
「はぁはぁはぁはぁ」
キリウスの呼吸はかなり早くなっていた。
「めぅらぁああああ~」
(足の感覚が全然無い……体中痺れとる……勝手に体がガクガク震えるから体が切れる……左手から血ぃ止まらへん……向こうはワイを舐めとる……あともうちょいや……)
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…うぃっはははははは!!!!」
リアは正面からキリウスに飛びかかり、めちゃくちゃながらも、洗練された剣さばきで振り回していった。
「っ……くそ……動きづ……おわっ!と……」
キリウスは辛くもかわしつつリアからスキを探ろうとするも、氷の地面に足を滑らせ、尻もちをついた。
「やあっはっはっはっはっはっはっはあああああ!!!!」
そのスキを一切の躊躇もなく、胸の真ん中目掛けて剣を突いた。
しかしキリウスは右手で剣の刃を握っていた。
「もう痛くも痒くも無いわ」
すると剣はキリウスの握っている部分から徐々に纏う氷が溶け出し、刃も僅かに溶け始めていた。
「きしいいいいいいい!!!!」
リアは思わず剣をキリウスの右手から振り抜き、キリウスから間を取った。
それまでは何振り構わず突っ込み、恐れを知らなかったリアがこの時のキリウスには確かな恐怖を覚えたようだ。
キリウスは起き上がり全身から蒸気を発し凍傷も治りだし、キリウスの立っている位置の氷は溶け出していきそれらは徐々に広がっていった。
「呼吸を早くして血の巡りを早くして熱を体内で作る、その熱気と共鳴してまた体から熱を作るの延々作業、やっと追いつき追い越したわ……
……んで溶けたときに出た蒸気とかも、それで温められた周りの空気も───全部ワイの味方や」
「えあらあああばばばばばば!!!!」
リアは絶えずキリウスに向かい剣を振り下ろしにかかるも、キリウスは余裕の笑みを見せながらかわし顔や腹部に10数発の拳を入れ上空に蹴り上げた。
「頭悪すぎやろ、正面から突っ込んできてばっかやったら猿でも対処するわ」
キリウスは跳び上がり上昇するリアの上に到達した。
「〝獄炎拳〟」
キリウスは右拳に火を纏い、リアのみぞおちに思い切り殴り込んだ。
その際にキリウスの右拳を纏う火がさらにリアに衝撃を乗せ、二重攻撃によりリアの地面への落下速度は増しリアが落ちると地面が大きく凹んだ。
「……もうええやろ」
キリウスは綺麗に着地し、僅かに息のあるリアの元に歩み寄った。
「はいトド……メ……」
(───もう誰も殺しちゃダメだよ?約束!破ったら……そうだね~……串刺しね!)
キリウスがリアの首根っこを右脚で踏もうとした瞬間、キリウスの脳内にはっきりと女の声が流れてきた。
「……なんや……またこいつか……」
それは以前、自らの名前を教えてくれた声だった。
それが一体誰で、自分とどのような関係性があるのは一切分からない、記憶に無い。
時々、それが怖くなる。
例えば道端で会って少し話した誰かの声かもしれないし、幼少の頃から共に育った家族かもしれない。
戦っていた敵かもしれないし、命よりも大切な愛する人かもしれない……可能性なんていくらでもある。
彩りの無い火山島から何年も何年も海を眺めながら、手がかりとなる記憶の糸をを探していた。
それが見つかるよりも前に、ベイル達と出会ったのだ。
「しいぃぃいぃぃああああ!!!!」
するとリアは突然起き上がり、キリウスに殴りにかかった。
「はぁ……意味分からんわ」
キリウスは頭の中に流れてきた声とリアに向かってそう言い放ち、リアの攻撃をかわし軽く蹴り飛ばし、右手を銃のポーズに形作りリアに人差し指を向けた。
「───〝超光炎放閃〟」
キリウスの指先からは莫大な炎のエネルギーが収束され巨大なビームのように炎が放たれ、宙に吹っ飛ぶリアの心臓を無慈悲に貫いた。
その攻撃でリアは即死し、力の脱けたまま地面に落ちた。
「……あああ~やっと終わった……ワイ意外と強いな……めちゃくちゃ疲れたけど……」
※ ※ ※ ※ ※
キリウスは意味も無く王宮に向かって歩いていくと、号哭するビオラを見つけた。
「……お前どんだけ泣いとんねん……水たまり出来かけとるで?」
「うっ……うぅ……ああ……」
「あかんわ……左手ももうちょいで治るな……」
キリウスはビオラの前にあぐらをかいて鎮座した。




