第45話 パーティーと夢と真実
「……捨てた……という事は、元はそうだったと認めるのね」
「……まあ……今となってはどうでもいい事です……」
「そう……」
「……ビオラどのは、何故こんな所……え?」
ビオラはジョッキや食べかけの串を両手に持ちながらテーブルに顔をつけ、左側を向いて思い切り爆睡していた。
「くー……くー……」
「……ええ……」
※ ※ ※ ※ ※
クラジューがゾーネをおぶり浮遊してトイレを探している中、ハロドックはアリシアの元に立ち寄った。
「らから~!!なんれリロリーひゃんはわらしにキスしらのっれひいれんろ!!」
「ごめんアリシア、何言ってんのか聞き取れない」
アリシアは一切酒を飲んでおらず、広場中に広がる酒の匂いだけでベロンベロンに酔った。
「るっろ……ずっと疑問らっらの!何れリドリーちゃん!わら……われ……私はリドリーちゃん知らなかったのに……何で好きなの……」
アリシアは少し落ち着き、少し冷水を口に含み、リドリーの返答を待った。
「……約束だから……あたしとあの子の……まあ、多分それが無くても……あたしはアリシアを好きになってた」
「……だとよアリシア」
「ん~~~!納得いか~~ん!!」
アリシアはリドリーの話をちゃんと聞いていたが思っていた答えと違い、ハロドックに冷水をぶっかけて不満を漏らした。
「冷たっ!」
「全然分かんないよ!!約束?知らねぇよ!!何で誰も私には教えてくれないし!!私をどうしたいんだよ!!私は誰かの道具じゃないんだよ!!バーーーカ!!!」
「……アリシア……」
アリシアは中々言い出せなかった自分の思いを、不器用に酔った勢いで赤裸々に叫んだ。
アリシアはただ知りたいだけだった……自分が何者なのか、一行達は自分をどう思っているのか、自分という存在が、一行達にどう役に立っているのか……。
今まで生きてきた環境が常に情報から隔離されていたためか、アリシアは誰よりも、「知りたい」に飢えている。
「なんや?どないしたんや?」
「うるせぇこのデカ〇ン野郎!!!」
アリシアは空気を読めずフラッと戻ってきたキリウスに、ハロドックにぶっかけた冷水の入っていたグラスを投げつけた。
そのグラスは見事にキリウスの股間に命中し、キリウスは股間を両手で押さえ地べたを転がって悶絶していた。
「だっははははは!!!やっぱしアリシアも酔ったらこうなんのか!!!継承者はこうなるって決まってんのかよっはははは!!!」
ハロドックはアリシアのアクションやキリウスの反応に、ただただ腹を抱えて笑うだけだった。
「う……吐きそう……」
「アリシア!!?」
※ ※ ※ ※ ※
「う~~~……」
「……お、終わったか?……」
自身も酔っていながらゾーネをおぶって浮遊していたため、ぐらぐら揺れゾーネの膀胱を絶え間なく刺激し、結局トイレが見つからないまま限界を迎えた。
ゾーネは竹林の隅の全く人のいない場所で用を足し、クラジューは数メートル離れ後ろを向き、耳を押さえ目を閉じてゾーネを待っていた。
「クラジューく~ん……」
「ど、どうした?」
「おしっこちょっとパンツに付いちゃった~」
クラジューがゾーネの方を振り向くとゾーネは右手にズボン、左手に下着をを持ち、下半身を露出した状態だった。
クラジューは咄嗟に目を閉じて後ろを向き、酔いでは無い赤面した顔でゾーネに訴える。
「え!?おいゾーネ!!とりあえず履け!!」
「でも~」
ゾーネは酒のせいで体が火照り、上の服を脱いでシャツ一枚という状況でもあった。
だがヘタレのクラジューには、そのシャツ一枚はゾーネの谷間を見せるため、それでも堪えた。
「たたた頼むだから!!服を着てくれええええ!!!」
※ ※ ※ ※ ※
サン・ラピヌ・シ・ソノの人々はパーティーが終わると手際よく片付け、小一時間で広場は元の芝生と木の根のみとなった。
ベイルは酔いつぶれ食い倒れ竹林の中で仰向けに爆睡、アリシアは結局一滴も酒を飲むこと無く酔いつぶれ、リドリーはビオラと共に芝生の上で爆睡。
ゾーネは結局着替える事無く竹林の中で爆睡、クラジューはゾーネに服をかけゾーネの隣で寝そべり半裸のままそのまま爆睡。
キリウスとニコラスはこのパーティーで開催された最強飲んだくれ選手権に出場、ニコラスは予選で呆気なくダウンしその場で爆睡。
キリウスは予選決勝と合わせて30樽飲み干し優勝、全く酔うこと無く完全優勝しそのノリで会話に入りアリシアの一撃で気絶、そのまま爆睡。
うさちゃんは木の根の中から毛布を取り出し、レオキスと共に一行達にかけた。(クラジューとゾーネは察して放置した)
レオキスもまた眠りにつくとうさちゃんとハロドックは住宅地の海沿いにある砂浜に座り、二人きりで会話をしていた。
「……ここから人間界を出るのか?」
「ああ……だが、すぐって訳にもいかねぇな」
「どういうことだ?」
「……親子の問題を解決してからだ……俺も色々あるし……何より、俺とベイルとの契約がある」
「どういうことだ?」
「まあんな事はどうでもいい……ニコラスはどうだ?制御出来てるか?」
「完璧だ……既に全てを理解してコントロール出来ている……人族でも難しいあの呪力のコントロールを、ペンギンである彼がよく成し遂げたな」
「は?あいつメスだぞ?」
「え?」
「あいつはメス=男だと思ってる、だから卵を産むのは男だと認識している」
「……そ、そうなの……」
「まあ面白ぇから放置してんだけどな~」
「はは……」
「じゃ、今回連れてくわ……すまねぇなシシ……」
「構わない、私とお前の仲だ……だがハロドック、これが本当に……マナクリナの願いを叶えられるのか?」
「……間違いなくでけぇ戦争は起きる……俺がこれからやろうとしてんのは、その始まりを告げる鐘の音でしかねぇ」
「……ハロドック、お前は幾つの戦争を見てきた?幾つの屍を見てきた?幾つの血を浴びてきた?……私ですら分からないのに、お前は、その全てと向き合っても……それを成し遂げようと言えるのか?」
「───今、戦争を知る奴は何人いる?……〝魔法大戦〟、〝魔神の聖戦〟、〝千年戦争〟……人類は大きな戦争を三度繰り返して、千年戦争以降コーゴーが台頭して、小せぇ小競り合いはあっても国や世界を巻き込む戦争は起きなくなった……あったとしても小競り合いも全部コーゴーが未然に防いできた……
……だが戦争を知らねぇ奴がいれば、その惨劇がどんなものか知らず力をつけ戦争をやりたがる」
「……そうはあってほしくないな……」
「知ってる奴が語り継いでも実際の経験とは話になんねぇ……人災は忘れた頃にやってくる……悲しみを知らない奴が、痛みを知らない奴が、恐怖を知らない奴が、思い通りに事が運ばねぇのを理由に簡単に選択肢に入れやがる……」
ハロドックは両拳を握り締め、戦場で見たあらゆる光景がフラッシュバックしていた。
自身の隣で喉を打たれ一言も発しないまま死ぬ兵士……戦場に巻き込まれ今にも死にそうな痩せ細った子供……血塗られた自分の両手───。
いつしか力を身に付け戦場を駆ける自分の足……〝狂犬〟と怖れられ孤独となった自身の世界……そして最後に自分に夢をくれ、初めて恋をし、愛してくれた、少女の笑顔……。
(大丈夫、ハロドックの夢は叶うよ……それはもう私の夢でもあるから、2人なら……絶対……)
「───シシ、俺が求めるのはマナクリナの願う平和な世の中じゃねぇ……俺とあいつの夢の……平穏な世の中だ……それに辿り着く唯一の方法に足を突っ込んで、俺は呪われた……初代継承者が俺に遺した思いを託される奴らをな」
ハロドックはそう言いながら、住宅地の方から歩いてくるアリシアを見た。
「あ、いた……」
「アリシアさん、起きられたんですか?」
「はい……なんか起きちゃって……頭痛い……えっと……さっきはすいませんでした……酔ってあんなこと……」
「おー座れ座れ、ちょうどお前の話だから」
「私の?」
ハロドックは特に咎める事無くアリシアを砂浜に呼び、ハロドックの横に座らせた。
アリシアは座り、波打つ海を眺めていた。
「何で波打ってるんだろう……」
「知るか」
「……あの……ハロドックさんは……〝ホシノキズナ〟がどんなモノなのか……知ってますか?」
「……ああ……知ってる」
「なら!教えてくれませんか!?」
「断る」
「っ……どうして……」
「それはお前が自分で気付かねぇといけねぇからだ、他人から知ればそれで満足するだろ?それじゃダメだ───〝ホシノキズナ〟は、そんな安っぽい代物じゃねぇ」
「……そんな……」
「まあでも、お前に今必要なのは教えられる」
「……何ですか……」
「覚醒だ」
「覚醒?」
「……今回再会したことで、お前にはその素質があることが立証された……歴代で継承者は9人いるが覚醒したのは、〝ホシノキズナ〟の存在を確定させた初代継承者と、〝千年戦争〟をその力で終結させた5代継承者の2人だけ……お前にはその2人の共通点がある」
「……何ですか……」
「〝自分が欲しいと思う者がその数だけ必ず自分の元に集結〟した事だ」
「……え……」
「ただの有象無象じゃねぇ、ちゃんと〝死神魂〟持ってた……ラルフェウは最初ベイルにはそれが必要だと力説しただろ?あれは、ベイルに必要な者が現れて欲しいと、無意識下でアリシアに思わせるためだ、
……結果アリシアの欲しい者とベイルの欲しい者は同一化する……ま、イレギュラーはいるだろうけど……それは誰の力でも無く、ただの運だ」
「……え……じゃあ……皆は……私が、知らない間に呼び寄せた……って事?」
「そゆこと、んな偶然が繰り返される訳ねぇだろ……各々出会った場所にいた理由は違えど、そこにアリシアが現れるように、〝ホシノキズナ〟は勝手にアリシアを操作していた……
この〝ホシノキズナ〟の〝集結〟の力が勝手に出てるってのが覚醒に必要な条件だ、〝ホシノキズナ〟はお前を認めてるからな」
「……そう……なんですか……」
「おいもっと嬉しそうにしろよ、選ばれたんだぞ?5000年の歴史でたった2人しかいなかったのに」
「……実感が湧きません……私は……そんな……というか、何でハロドックさんは継承者の事そんな詳しいんですか?」
「今んとこ8人全員俺の女」
「ええっ!!!?……そ、そうなんですか!?」
アリシアはシシに答えを求めたが、シシも初耳だったらしく驚いていた。
「……いや、私はマナクリナしか知りませんので……ですが、マナクリナとこいつは間違いなく恋人同士でした」
「……何でそんな……」
「俺よく分かんねぇんだけど、初代に一目惚れされてそれから初代に呪いかけられて、そいつそういう呪力だったから……その呪いが……俺は必ず〝ホシノキズナ〟継承者に出会うってのでよ……」
「意味分かんない……」
「で、俺は出会ってしまう訳であって恋人同士になる……まあ、それは俺も納得してる」
「してるんだ!」
「ここまでだ、後は自分で知れ」
「……は……はい……」
(……部分的にしか話せないみたいな口ぶりだったが、かなり話したと思う……これ以上にさらに大きな何らかがあるのか?)
シシは疑問に思いながらも、口に出すことはなかった、それは自分が知るモノでは無いと直感的に理解したからだ。
「んでアリシア、ベイルはどうだ?」
「どうって……面倒くさい」
「だな、違ぇねぇ」
「……あと……キューちゃんはベイルは〝死神〟なんかじゃない~みたいな事言ってたけど……実際どうなんでしょうか……」
「あいつは間違いなく〝死神〟の異名にふさわしい男だ」
「……そうなんですか」
「……まあでも、ちゃんと人の心は持ってる、女の子好きになったりもした」
「……あのベイルが?……」
「おう……700年くらい前だっけか?……相思相愛だったぞ?俺らを横目に」
「……考えられないです……想像もできない……」
「あいつどんだけ嫌われてんだよ……」
「嫌いっていうか……あ、まあ嫌いも入ってるのかな?」
「ははは……あいつの背負ってる刀は、その女の子の形見なんだぜ」
「……形見……って事は……もう……」
「聞きたいか?ベイルのガチ恋物語」
「はい……是非」
「それは、私も気になるな……」
「じゃあ暇だし上手いこと事実しか述べねぇように話してやるよ……遡る事700年前、俺達は人間界であの船に乗ってあての無い旅をしていた───」
何で波打ってるのでしょうねー、ねー。
てな訳で次話から、ベイルの過去が一部明らかになります。
よろしくお願いいたします。




