↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Past Letter  作者: 東師越
第3章 ホシノキズナ
101/711

第98話 奪われゆく希望

 同じ頃、地下15階ではベイルによりさらなる地下へ落ちる事無く留まったニコラスがどれほど攻撃しようとも、アリシアを巻き込む巨大な機械には傷一つ付かなかった。


 既にベイルとケイナンが落下して10分以上経ち、ニコラスも高出力のビームを撃ち続けているため体力が落ち始めていた。


 「アリシア!!!!」


 そんな中シュベレットとの激戦を終えたリドリーが全速力でこの部屋に降りてくる。


 「遅~せぇぞ助っ人~」


 「アリシア……アリシアはどこだ!!!!」


 「そ~この密閉ベッドの中だ」


 リドリーはニコラスからアリシアの居場所を聞き出し、アリシアの眠るカプセルを覗いて眠るアリシアを確認した。


 「……アリシア……今出してあげるから」


 リドリーは地斧デゼルトで閉ざされたカプセルや機械と繋がる管を攻撃するも、やはりニコラス同様全く傷は付ける事は出来なかった。


 「くそっ!!!!アリシア!!!!!」


 「お~いおい、〝聖器(ポーマ)〟でもかよ……」


 すると機械から出ていた騒音に近い音量の機械音が止まり、アリシアのカプセルには謎めいた赤い液体が注入され、10数秒でカプセル一杯に注入された。


 「アリシア……アリシア!!アリシア!!!!」


 リドリーはカプセルを思い切り右拳の小指側を下にドンドンと叩きながらアリシアに呼びかけるも、アリシアからは全く返事はなかった。


 「アリシア!!!!アリシア!!!!起きてアリシア!!!!!」


 (……何……誰……うるさい……今……すごい気持ちいいのに……)


 目を閉じてはいるが意識は微かにあり、リドリーの必死の声がアリシアの耳には届いていた。


 「起きろアリシア!!!!早く起きろ!!!!」


 (起きろって……いいよ……別に……私はもう……死ぬんだし───お父様の邪魔しないで……)




   ※ ※ ※ ※ ※




 「自分から?」


 「ああ、強要はしていない」


 凄まじい激戦を繰り広げるルブラーン最奥の地下空間の〝天樹ルブラーン〟の幹の上。


 圧倒的なベイルの次から次へと止まらない攻撃の手に防戦一方だったケイナンだが、それら全てを受けてかわしほとんどダメージは無い。


 しかしやや疲れが見えるベイルは一体間を取り、出方を窺うと同時にアリシアがカプセルに入っている理由を聞く。


 当然気絶させたならば容易だろうが、ベイルの察知した気配が正しいならばアリシアははっきりと意識はあった。


 気は失わせたがベイルがたどり着くまでに起きたのかと引っかかっていたベイルはケイナンに問い、その答えはあまりにもあっさりと帰ってくる。


 「当たり前だろう……第2代継承者以降、ハロドック・グラエルはあらゆるセキュリティを掻い潜り、打ち壊し、奪ってきた……ならば視点を変えればいいだけだ


 ───奪われる前提であいつ自身を操作すればいいだけの話だ」


 「……どうやって?」


 「スイッチを作って、都合の良い時に押すだけだ」




   ※ ※ ※ ※ ※




 ベイル達がルブラーン付近に瞬間移動してくる少し前、地下15階ではアリシアとケイナンとの対話に遡る───。


 「無力なお前が唯一役に立つ……お前にしか出来ない役目だ」


 「……絶対に、絶対にやらない!!!!」


 「……はぁ……」


 武力の行使はせず言葉でアリシアを説得させようとするケイナンだったが、予想を上回る抵抗を見せるアリシア相手に難航していた。


 何故ここまで抵抗するのか、それは連れ出したハロドック及びその他大勢が必ず助けにきてくれる希望を持っているからだろうと推測する。


 何も無ければ容易いが、正義を持った者がそれに逸れた言動を強要されてもただでは引き下がらないのは当然だ。


 思い通りにならないように毒されてしまったと嘆きのため息をついたケイナンは、アリシアに近付き高圧的な表情でアリシアを見下ろす。


 「っ……」


 つばを飲み込み緊張が走るアリシアに下されたのは、たった二言の言葉だった。




 「───〝跪け、我が道具〟」




 ケイナンがそう言った瞬間、アリシアの頭からは王宮から逃げベイル達と共に過ごした日々の記憶が何もなかったかのように一瞬で消え去る。


 アリシアの目の色は徐々に褪せていき、何の疑いも無く右膝を付いてケイナンに跪いた。


 「……君たち、終わったのなら早急に避難したまえ……ここが戦場になる前に」


 「は、はい!!」


 ケイナンの一言で、この場にいた人々は速やかに階段を上って避難シェルターへと向かっていった。


 「……さあ、ここに入れ」


 「はい」


 感情が欠落した声で返事をしたアリシアは立ち上がり歩き、カプセルに入り仰向けに寝そべった。


 ケイナンはルブラーンからハロドックの行動は止められないと過去を振り返り知り、ルナを利用して装置を取り付けさせ取り返す算段をつける。


 そしてアリシアが眠っていた間に常に催眠をかけ、アリシアが知らない間に自身の体はケイナンの一言で人形となるように開発されていたのだ。


 力を駆使せず科学技術と催眠術により、〝ホシノキズナ〟継承者を手中に収めることに成功したのだ。


 そしてケイナンはアリシアの右腕に一本の注射を打った。


 「麻酔だ、さあ眠れ」


 「はい……」


 そしてアリシアはすぐに眠り、ケイナンは呼吸器を取り付けてカプセルを閉じ主電源の大きなレバーをゆっくりと上げた。


 機械は大きな音を上げ稼働し始める。


 「……本作動に時間がかかるのが難点だが……それだけ正確ということか……ジェノサイドの技術力は恐ろしいな……」




   ※ ※ ※ ※ ※




 現在に至る。ベイルとケイナンとの会話は続いていた。


 「精神は情報と同じだ、少し弄っても一度広がってしまえば元に戻すのは不可能だ……あいつは俺には逆らえない……そしてベイル・ペプガール……お前もだ」


 するとケイナンは剣を構え直し、一部のスキも無いオーラを放つ。


 「……ようやく本腰か」


 「まさか、勝てるとは思っていない……この500年に備え、本部の序列内くらいには入れる程度にはなったつもりだが……特等10位からもお墨付きだし」


 「たかがそんなんで、何のために俺とやんの?殺す気ねぇのに」


 「……お前の力量を、知る必要のある方がいるんでね」


 「……王が犬ってのも、笑えるな」


 初撃と同じくベイルが先手を打ち呆気なく懐に入ってみぞおちに右拳を直撃させた。


 「っと……勝つ気ねぇんじゃねぇのか?」


 「同じく負ける気もさらさら無い」


 最高のタイミング、最高の距離、最高の威力で放ったベイルの右拳は確かにケイナンに直撃するが、ケイナンはその場から全く動く事無くベイルの右拳を受けきる。


 余裕の笑みでダメージも皆無なままケイナンはベイルの顔面を蹴り飛ばし、吹き飛ぶベイルは壁に強く激突し15メートルほどの高さの場所にめり込む。


 「ふっ……っ!?……」


 そのままベイルを一突きで仕留めようと腰を下ろし跳ぶ姿勢に入った瞬間、足元から何の前触れも無いまま大爆発が起きる。


 地面が大きく抉れ爆風はこの地下空間中に吹き荒れたが、ケイナンは煙に咳き込むのみで大したダメージは無い。


 「ちっ」


 めり込んだベイルは舌打ちをして自らで脱出し地面に降り立つ───瞬間にケイナンは目の前にまで襲いかかり、ベイルの首をはねようと薙ぐもベイルはしゃがんで回避し、睾丸に振り上げた右脚を直撃させた。


 「っ!!」


 「うおおおらああああ!!!!」


 怯んだスキに顔の右側を左手で握りつぶすように掴み地面に3度打ち付け、天井に向かって投げ上げる。


 投げ上げられたケイナンは天井に激突はせず粘着性のある透明な網に掛かり、身動きが取れない状況で目の前にピンボールほどのサイズの球が視界を埋め尽くすほど無数に高速で向かってくる。


 ケイナンは力尽くで剣を持つ右腕を引き剥がし向かってくる球を弾き飛ばす……しかし全ては防げず幾つかは体に直撃するがこれも大したダメージではなかった。


 それどころか無数の球が罠だった粘着性のある透明な網を引きちぎり、ケイナンは地面に落下し着地する。


 「いいのか?」


 目の前で仁王立ちになって待ち構えるベイルの姿を見ると突然視界が揺れ動く。


 平衡感覚が無くなりフラつき両手両膝をつくケイナンの四肢も徐々にマヒし動かなくなり始めている。


 「こ……これは……」


 さらにケイナンを襲うのは背中や四肢の後ろ側からの焼けるような激痛……粘着性のある透明な網に掛かった部分は強酸で肉体を蝕み始める。


 「うおおおらあ!!」


 さらに追い打ちをかけるベイルは強い重力をかけ、ケイナンが完全に身動きが取れなくなったところを顔面を右脚で蹴り飛ばし、無抵抗で吹き飛び仰向けとなったと同時にベイルは矢の形状をした輝く光を左人差し指の指先から鉄砲のように撃ち放った。




 「はぁ……はぁ……はぁ……」


 光の矢がケイナンに直撃すると地下空間全体が光に包まれ視界は遮られ、目を閉じたベイルはかなりの疲労で息も切れている。


 「───それで終わりか?ベイル・ペプガール」


 ベイルの前に立っていたのは、何事もなかったかのように無傷ノーダメージで嘲笑の表情を浮かべるケイナン・クルエルその男だった。


 「っぐ……はああっ!!!」


 ベイルは再び右拳でケイナンに殴りにかかるが、ケイナンはいとも容易く向かってくるベイルの右腕を剣であっさり切断する。


 「……っ……」


 ベイルにはケイナンが自身の腕が斬られる剣閃を視認出来ず、斬られてから数秒後に斬られた事を理解する。


 そしてケイナンはベイルを左脚で蹴り飛ばし、ベイルは平行にかなりの速度で壁に激突し、全く動く気配も感じさせないままケイナンはベイルの腹部を剣で貫いた。


 「かはっ……」


 すぐに剣を抜き、ベイルの腹部からは出血が止まらず口からも血を吐き、右手で傷を押さえて両手両膝を地面につく。


 「どの攻撃もかなり威力の高いモノだったが、全てにおいて物足りない……従来の力で引き出せば俺は今頃死んでいるが……手を抜いた……いや……抜かねば勝負にもならないのか」


 トドメを刺さないケイナンは余裕を見せ、ベイルから数メートルほど間隔を取る……笑みは崩していない。


 「……なん……で……」


 「何故?お前のその頑丈な肉体も攻撃力も、呪力で膂力をカバーしていたのだろう……ならば簡単な事だ」


 「っ……」




 「───我が呪力は〝滅力亡呪(デリート)〟……くらった呪力による傷やダメージは全て無かった事に出来───対象の呪力を使えなくさせる……お前と同じく〝五聖〟の1つだ」




 安定してなおかつ強い力を持って戦うためには呪力が必須のベイルに、ケイナンのその呪力は為す術を無くす代物だった。


 これにより、ベイル・ペプガールの勝機は絶たれた───。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。