落ちました
異世界で仕事をするならどんな職業がいいかな。
ギルドでお金稼ぎ?いや、今の私には薬草取りが精一杯だ。
食堂で住み込みで看板娘として働く?いや、伝手がないしそもそも看板娘を名乗れるほどの器量がない。
最大限のコネを使ってシュベルトの侍女!いやいや、気品の欠片もない私が王子様の側で働ける訳がない。
ちょっと現実逃避しながら膝を抱え座り込む私。
「なんでこんなことになったのかな」
町の片隅で一人座り込んで、バックの中身を確認する。
入っているのは一日分の携帯食のみ。
昨日深い森で見つけたのは、完全に灰になってしまった小屋の跡地だった。
庭にあった薬草を植えていた畑も全滅だった。
状態から見て小屋が焼かれたのは、一ヶ月前後だろうとセルビス達が話していた。
あれだけ綺麗に灰になっているにもかかわらず周囲の木に燃え移っていないのは、魔法を扱うことが出来る上級者だ。
誰が一体何のために燃やしてしまったのか。
結局何も手掛かりの無いまま、私達はその場を立ち去ることになった。
その日はまた美味しいとは言えない夕食をとって宿に泊まった。
セルビスが何も言わないので、私も今後どうなるのか聞くことが出来なかった。
結局もやもやとした夜を過ごしあまり寝ることが出来なかった私は、今日はちゃんと聞いておこうと気合いを入れて部屋をでた。
その瞬間、また『落ちて』しまったのだ。
「ここはどこなんだろう」
幸いなことに治安が悪い場所ではなさそうだ。
朝早い時間にもかかわらず、賑やかな明るい声が響き渡っている。
暫く呆然としていると店の開店の準備を始めた年配の女性が見えたので、意を決して話しかけることにした。
「おはようございます」
「おはよう!まだ準備は出来てないよ」
「いえ、ちょっと聞きたいことがあるんです」
「どうしたんだい?」
女性は動かしていた手を止めて、不思議そうに首を傾げた。
「あの、ここはセンダルセン国ですよね?」
「そうだよ。あんた旅人かい?」
「えっと、はい。王都にいる知人を訪ねに行く途中なんです」
ここが知っている世界であることにほっとしていると、女性が不審そうな目を向けてきた。
「あんた一人かい?王都へはここから乗り合いの馬車を使っても二十日はかかるよ」
「あ、いえ連れがいます」
「そうかい。道中は魔物も出るからね。気を付けるんだよ」
「ありがとうございます」
再び開店準備を始めた女性にお礼を言って、ふらふらとその場を離れれた。
無理だ。
今日の宿泊費すらない私には馬車に乗るお金なんてない。
「とりあえずお金を作らないと…」
どうしよう。
日雇いの仕事を探そうにも、私みたいな子供を働かせてくれるところなんてないだろう。
でもこのままでは宿どころか明日の食料すら危うい。
暫く立ち尽くしていた私は、ひとつの案を思いついて町を歩き回った。
とりあえずお金を作ろう。
今日を生きなければ明日はない。
目的は王都に行ってセルビス達に会うことだ。
その先のことはその時考えよう。




