第78話(最終話):銀河の果てまで、終わらないハネムーン
祭典の喧騒は、遠い銀河の彼方へと消え去りました。
全宇宙が跪いた結婚式を終え、大陸要塞『インペリアル・エルシア』は今、新しく生まれ変わった宇宙の最深部――私とギルバート様だけが知る「静寂の聖域」へと辿り着いていました。
窓の外には、私の魔力で咲かせた銀色の花々が、星屑のように舞っています。
「……陛下、まだそんなに見つめていらっしゃるのですか?」
私がソファで寛ぎながら声をかけると、ギルバート様は私の隣に深く腰を下ろし、その強靭な腕で私の体を独占するように抱き寄せました。
彼の指先が、私の薬指に輝く「銀河の核」を封じ込めた指輪を愛おしげに辿ります。
「……ああ。……まだ足りない。……宇宙を閉ざし、神々を跪かせ、全次元をお前のために塗り替えたが……。……それでも、お前という存在を私の虚無の中に閉じ込めておきたいという飢えが、一向に収まらんのだ」
「あらあら。……それでは、わたくしが窒息してしまいますわよ?」
「……構わん。私の愛でお前を満たし、呼吸さえも私の魔力で行えばいい」
ギルバート様はそう言って、私の額、まぶた、そして唇へと、重く、熱い接吻を落としていきました。
かつて私を「泥」と呼んだ世界はもうどこにもありません。
今、私を包んでいるのは、世界で一番強く、世界で一番不器用な男が、その生涯をかけて私に捧げると誓った「狂気」に近い全肯定。
ふと、私は遠い下界に視線を向けました。
そこには、かつて私を捨てた実家の者たちが、石像のように固まって空を仰ぎ見ている光景がありました。
彼らはもう、私を思い出すことさえ許されません。ただ、失った「何か」が、自分たちの宇宙をこれほどまでに美しく変えた「神」であったことだけを直感し、そのあまりの格差に絶望して生涯を終える。
「……さようなら。わたくしを捨ててくださって、本当にありがとう」
私は心の中で、静かに告げました。
彼らが私を捨てなければ、私はこの方の「孤独」に触れることも、この広い銀河を手に入れることもなかった。
不幸は、最強の幸せへのスパイスに過ぎなかったのです。
「エルシア。……何を見ている。お前の瞳には、私だけを映していればいい」
ギルバート様が、私の視線を遮るように私の頬を包み込みました。
その紅い瞳には、宇宙の支配者としての威厳ではなく、ただ一人の女性を愛し抜くことを決めた「男」の、切実な熱情だけが宿っています。
「ええ、陛下。……これから始まる長い長いハネムーン、飽きさせたりしませんわよ?」
「……フン。飽きる暇などない。……お前を慈しみ、飾り立て、世界一の幸福を更新し続ける。……それが、これからの私の唯一の『仕事』だ」
ギルバート様が指先を鳴らすと、要塞の全ハッチが音もなく閉じ、宇宙の全ての通信が断絶されました。
光子一つ、視線一つ。
誰の侵入も許さない、二人だけの永遠。
捨てられ令嬢だった私は、今、銀河で一番甘い監獄――「愛」という名の絶対領域の中で、微笑みました。
私たちの物語に、終わりの言葉は必要ありません。
なぜなら、この輝きは、宇宙が尽きるその瞬間まで、いえ、尽きた後さえも、
たった一人の少女を愛でるために、永遠に爆発し続けるのですから。
皆様、第78話……そして『捨てられ令嬢は、全宇宙の支配者(溺愛皇帝)に拾われる』。
最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございましたわ!
「泥を啜る生贄」から「宇宙の女王」へ。
エルシア様が辿り着いた、この上なく理不尽で、最高に甘美なハッピーエンド。
ミオ、最後の一文字を書き終えた瞬間、お二人の幸せな姿が銀河の彼方へ消えていくのを見て、感動で筆を置いてしまいましたわ。
ギルバート様の「お前を慈しむのが唯一の仕事」という台詞……!
あんなに重くて甘い宣言、エルシア様でなければ耐えられませんわね。
元婚約者たちの「一生届かない後悔」も、完璧な形で描き切ることができました。
この物語を愛してくださった皆様の応援という名の「魔力」があったからこそ、二人は運命を食らい尽くし、永遠の幸せを掴むことができたのです。
もし「最高のラストだった!」「二人の未来に幸あれ!」と感じていただけましたら、
最後に【評価(★★★★★)】や【完結お祝いのメッセージ】をいただけますと、ミオは次の「宝石のような物語」を紡ぐ勇気をいただけますわ。
皆様、またどこかの銀河でお会いしましょう。
それでは、永遠の愛が皆様の元にも届きますように。
「西園寺ミオ」より、愛を込めて。




