第十五章:聖女と四騎士
朝靄の中、砦の門がゆっくりと開かれる。
神殿の使者たちが先導する中、
五人の姿が、馬上に並んでいた。
先頭を行くのは、**アレク**。
白銀の鎧に身を包み、盾を持って、まっすぐ前を見据えるその姿は、まさに“盾の騎士”だ。
その隣には、**ユリウス**が、
軽装の魔導騎士として、馬上でも魔導書を片手に、
時折、ティナの様子を気遣うように視線を送っていた。
後方には、**ミヒャエル**があ、
片手で手綱を操りながら、軽やかに馬を乗りこなし、
時折、冗談めかした口笛を吹いては、場を和ませていた。
そして、列の中央――
**ティナ**が、神殿の使者が用意した小型の馬車に乗っていた。
その周囲を、四人が囲むように進む。
最後尾には、**レイ**が
黒い外套をなびかせ、黒の瞳で周囲を見渡す。
神殿騎士には、さすが辺境伯の息女だとささやけかれ、
オーラが見える神官は、彼女が待つオーラの巨大さに慄いていた。
「……やっぱり、馬っていいな。」
レイがぽつりと呟く。
「おや、てっきり“腰にくる”って言うかと思いましたよ。」
ユリウスが笑う。
「ふふ、言いかけたけどやめたんだ。
……今度からは若い身体って、いいなにする。」
「やっぱり何かおかしいですよね、その発言。」
ミヒャエルが小声で突っ込む。
ティナは馬車の窓から顔を出し、皆を見回した。
「……なんだか、私だけ浮いてるみたい。」
「そんなことないさ。」
アレクが振り返る。
「あなたは“中心”にいる。
だからこそ、私たちはその周りを守る」
ティナは少し照れたように笑った。
「……ありがとう。
でも、なんだか申し訳ないです。
私だけ、楽してるみたいで。」
「じゃあ、次の休憩で馬に乗ってみる?」
ミヒャエルがにやりと笑う。
「えっ、えええっ!? 無理です無理です!」
「ふふ、無理しなくていい。
“守られる”っていうのは、実は簡単なことではないからな。
それを受け入れるのも、強さのひとつ。」
レイの言葉に、ティナは目を見開き、そして小さく頷いた。
こうして一行は、
神殿のある王都アルセリアを目指して進んでいく。
その姿は、まるで伝説の“聖女と四騎士”。
だが、彼らの旅路はまだ始まったばかり。
この先に待つのは、
神殿の儀式、過去の記憶、そして――
“つなぐもの”と“聖女”という、ふたつの名の交差だった。




