第十六章:すれ違い ――“神の騎士たち”
王都への道のりも半ばを過ぎた頃。
一行は、霧深い峠道に差しかかっていた。
「……視界が悪い。」
アレクが馬を止め、周囲を見渡す。
「この辺りは、昔から“霊気が濃い”って言われてる。」
レイが静かに答える。
「魔獣は出ませんが、代わりに“人の気配”が消える場所だ。
……気をつけろ。」
そのとき――
「前方より騎馬隊接近!」
神殿の使者が声を上げた。
霧の中から現れたのは、
白銀の鎧に身を包んだ騎士たちの一団。
その胸には、神殿の“聖印”が刻まれていた。
**神殿騎士団・第七巡察隊**。
異端審問と戒律執行を担う、神殿の“影の刃”。
「……あれが、神殿騎士団。」
ユリウスが小声で呟く。
「なんか、空気が重いな……。」
ミヒャエルが眉をひそめる。
騎士団の先頭に立つのは、
黒馬に跨った長身の男。
顔の半分を仮面で覆い、
その瞳だけが、鋭くレイたちを射抜いていた。
「……“あの者”が、うわさの”つなぐもの”か?」
男は馬を止め、レイを見つめた。
「……。」
レイはだまって、その視線を受け止め、
無言で馬を進めた。
「……何者ですか、あの男?」
ティナが不安げに尋ねる。
「……知らない方が、いい。」
レイの声は低く、鋭かった。
「でも、覚えておいたほうがいい。
“神の名を語る者”が、
必ずしも“正義”とは限らないと。」
神殿騎士団は、何も言わずに去っていった。
だが、その背中は、まるで“監視者”のように感じられた。
「……あれ、絶対また出てくるパターンだよな。」
ミヒャエルがぼそりと呟く。
「ええ。しかも、ただの騎士ではないな。」
アレクが頷く。
「……あの仮面の男、
神殿の“異端審問官”かもしれません。」
ミヒャエルがぼそりと呟いた。
レイは空を見上げた。
霧の向こうに、うっすらと王都の尖塔が見え始めていた。
「……急いだほうがいいだろう。」
ぽつりと振ってきた雨にアレクが嫌そう顔を浮かべた。
「今頃、神殿は、私たちを待ちかえているのかな。」
ユリウスがうんざり顔で見えてきた王都の小塔を睨みつけた。
あの先に神殿がある。
「嬉しそうに歓迎する顔で、牙を隠しながらかな。」
ミヒャエルはなぜか嬉しそうな顔だった。




