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シリスとリザードキング、プロンとベティ

 あ、危なかった……!

 深く息を吸って荒い呼吸を整え、うるさいくらい脈打つ鼓動を鎮める。

 あと一歩、あと一手、あと一瞬でも、最後の一刀が遅れていれば、地に伏していたのは私だっただろう。

 それほど、リザードキングとの戦いは熾烈だった。


 かつてグレヴァフは同じような一騎打ちで相討ちになり、命を落とした。

 だけど、今回の私とは違いがいくつかある。

 ひとつは、この体のサイズだ。小さい分だけ軽いから速く、最小限の動きだけで攻撃を避けられた。

 加えて、キングの本当の武器が槍ではなく、腕であると知っていたのも大きい。

 そしてなにより、あの魔法だ。


 正式魔法。世間に認知されている魔法の大元となる原初の奇跡。

 おかげで私は、一時的ではあるけどグレヴァフの持つ身体能力を取り戻し、こうしてキングに打ち勝った。

 だけど、なぜ急に欠けていた記憶が蘇ったのか。

 そして、なぜ私が正式魔法を使えるのか。

 これだけは、どうしても思い出せないでいる。


 ……そもそも、前世の記憶がある理由すら定かではないのだから、今さら頭を捻っても答えが出るはずないよね。

 これまでだって深く気にしてなかったし、うん、やめよう。

 今はとにかく疲れたから、ゆっくり休みたい。


「シリスさーん、聞こえますかー!」


 天井の大穴から透き通るような声が降ってきた。これはプロンかな?

 どうやら、上も無事だったみたいで安心する。


「シリス様ー! ご無事ですかー!?」

「こっちは大丈夫ー! でもロープかなにか垂らしてくれると嬉しいかなー!」

「すぐに用意する! もう少し待っててくれ!」


 今度はベティと、アズマの声か。

 この様子だと地上のウォリア―を全滅させたようだ。さすがは勇者といったところだね。

 そういえばディーネは……まだ気を失っているか。

 キングが言っていた通り、勇者として目覚めたばかりだから今回は不覚を取ってしまったけど、その力がなければ私の記憶が戻るより先に大槍に貫かれるか、ぺしゃんこに潰されてしまっていただろう。

 助けに来て、逆に助けられるなんて、あまり格好が付かないな。

 目覚めたらお礼を言っておこう。


 あ、そういえば勝負ってどうなるのかな?

 このままリザードキングの魔石を提出すれば、最後に首を刎ねて倒したのは私だから、私たちの勝ちになったりして……。


「マタ勇者ガ来ルカ」

「えっ!?」


 あり得ないと思いつつ、その歪んだ声の主の亡骸へ振り返る。

 そこには変わりなく、岩場の上に転がるキングの首と、頭部を失って倒れた巨体があった。

 いや……それはおかしい。なぜ頭部が残っているんだ?

 胴体は魔石が残っているからわかる。でも切り離された頭部は、すぐに黒霧となって消えてなくなるはずだ。

 警戒している私の前でキングの首は明確に瞬きをし、口を動かし始める。


「シリス、我ヲ打チ倒シタ、真ナル勇者ヨ」

「い、生きてる……?」

「イイヤ、我ガ肉体ニ宿ル、魔力ガ強大故ニ、僅カナ猶予ガアルノダ」


 そうか、魔物は魔石を失えば即座に消滅する。それは魔石からの魔力供給が途絶えるからだ。

 これは逆に言うと、強い魔力が込められていれば、完全に抜け切るまでしばらく活動できるということではないか?

 さすがに離れた胴体は動かせないみたいだけど、首だけでも私を丸呑みにできるほど大きく、決して油断できない。


「シリス、我ガ魔石ヲ砕クノダ」

「なんだって?」


 予想外の言葉が飛び出し、私は思わず警戒を緩めてしまった。

 だけどキングには、すでに戦う意思がないように思えたのだ。


「どういうこと? どうして私に魔石を砕かせようとするの?」

「勇者共ニ、クレテヤル、グライナラバ、勝者タル貴様ニ、ヤロウ」


 ふと、気付く。グレヴァフの記憶に、ひとつ思い当たる知識があったのだ。

 魔石に含まれた魔力は、砕いた者が吸収して自分のものにできると。

 ただし人が保有できる魔力量には限界があり、器となる肉体に相応の空きがなければ、魔力は漏れ出しては無駄に消費するだけとなってしまう。

 故に、多くの者が魔石をまったく役に立たない代物だと考えている。


「私が砕いたとして、それだけの魔力を受け切れるか」

「最後ノ、一振リデ、ワカッタ……貴様ハ、マダ魔力ガ、足リテイナイ、ト」

「魔力が足りていない?」

「ドレダケノ器カ、知ラヌガ、恐ロシイ小娘ダ」


 くつくつと牙だらけの口を歪めて笑うキング。

 だとしたら私という器に不足分を注げば……きっと今以上の魔力を扱えるようになるだろう。現状でも、まだまだ余裕があるくらい残っているのに。

 ちょっと疑わしいけど、納得できる部分もある。

 道中でリザードマンの魔石を砕くたびに、体の調子が良くなって剣筋に磨きがかかった現象も、すべて説明できるからね。


 そんな力の根源とも呼べる魔石を後からやって来た勇者アズマではなく、打ち勝った私に譲りたいというキングの……戦士の矜持は、心から共感できた。

 僅かにギルドへ提出するっていう選択肢もチラついたけど、今の私は冒険者よりも、戦士の気分だったのだ。


「わかった。お前がそう言うのなら、私が受け取るよ」

「勝者ノ特権トイウ奴ダ……当然ノ権利デアロウ」


 再びカタナを手に取り、首を失ったキングの亡骸へ近寄る。都合良く仰向けになっているので、胸の上に立って真下へ向かって一突きする。

 引き抜くことなんて考慮せず思い切り根元まで刺し込むと、硬いなにかに当たって刃先が止まった。

 一度カタナから手を離し、今度は逆手に掴むと、持ち手側の先端……柄頭と呼ばれる部分を、もう片方の手の平でぶっ叩く。

 ハンマーで打ち込まれた杭のようにカタナは魔石を砕き、噴き出る血液が私の頬を濡らしながら、同時に濃厚な魔力が流れ込んで来た。


「くっ、これが……すごい、溢れそうなほどだ」


 魔力を失った亡骸は黒霧となって崩壊を始め、そのすべてが完全に虚空へ消え去ると、私はキングの命そのものを受け取った気がした。

 拳を強く握り締めると、新たに自分の身に宿った膨大な魔力が感じられる。それは荒れ狂う嵐のようで、抑えつけるのにも苦労するほどだ。

 戦いの勝者として、この力は決して無駄にしないと固く誓おう。

 だから安らかに眠れ……。


「ウム、ソレデ良イ」

「あ、まだ生きてるんだ」


 首の方は完全に切り離されてるんだから当然か。

 なんか変に意識しちゃって恥ずかしいな。

 こっちの気恥ずかしさなんて理解していないのか、キングは言葉を続ける。


「シリス、貴様ガ本当ニ、グレヴァフ、ナラバ全テ思イ出シタノカ?」

「……そうだね。さすがに素で忘れている部分はあるけど、最後の辺りははっきりと覚えているよ」


 グレヴァフもまた、大量発生したリザードマン討伐に参加しており、そこで相対したキングとの一騎打ちで同じように首を断ち切ったのだが、腹を爪で貫かれて相討ちとなり、命を落とした。

 それが傭兵グレヴァフの最後であり、シリスが誕生する始まりだ。

 しかし私はこうして生まれ変わったので、厳密に言えばグレヴァフが蘇ったわけじゃないけど、キングは記憶にある姿のままで復活している。

 これに対して、魔石を残していたからだとキングは語った。

 詳しい意味までは明かそうとしないけど、魔物の魔石は確実に砕かないと復活する危険性があるのだと肝に銘じておこう。


「ソレデ、他ニハ何カ思イ出シタカ?」

「他? そう言われても特にないけど……」

「ナラバ、マダ完全デハナイ、ヨウダナ」

「どういう意味?」

「グレヴァフ、ヨリモ、モット前ダ」


 言っている意味が、言葉の真意がわからない。

 まるで、グレヴァフよりも前の記憶があるみたいな言い草だ。

 ……本当にそんなものが存在するのか?


「リザードの長、キング……お前は私の、グレヴァフのなにを知っているんだ?」

「ククク、ソレヲ我ガ話ストデモ思ウタカ? ……ダガ、敗者ノ努メトシテ、ヒトツダケ教エテヤロウ」


 私に向けていた視線を、大穴から覗かせる夜空へと移すキング。小さな輝きが点在する暗黒の空が、その人ならざる瞳に映り込んでいた。

 もう残された時間は少ないらしく、徐々に鱗の色合いがくすみ始めている。


「復活スルノハ、我ト貴様ダケデハナイ。ソノ日マデニ、全テノ記憶ヲ取リ戻シテイナケレバ、貴様ハ必ズ敗北スルダロウ……心スルガイイ」

「……誰が現れたって、私の敵なら斬ってやるさ」

「クカカカカッ! ソレデコソ我ヲ破ッタ英雄ヨ!」


 大笑いするキングの顔にヒビが走る。とうとう限界だ。

 さっきの話が事実なら、魔石を失った以上はもう二度と蘇らないだろう。


「……シリス、貴様ハ、カツテ我ニ語ッタナ。人間ハ成長シ、強クナルノダト」


 その言葉は私がグレヴァフだった頃、キングと死闘を繰り広げる前に言葉を交わした時のものだ。

 あまりに人間を小馬鹿にするから、カッとなって言ってやった記憶がある。


「ああ、たしかに言ったね」

「貴様ハ、正シカッタ。虫ケラダト感ジテイタ人間ニ、敗北シタ今ダカラコソ、我ニハ理解デキル……故ニ、貴様ハ、ヨリ強クナレ。誰ヨリモ、何ヨリモ、我デハ到達デキナカッタ頂キヘ登ルノダ。ソノ時、我ノ敗北ハ、礎トナル」


 きっとキングは、こう言いたいのだろう。

 自分では届かなかった戦士の頂点を目指せと。

 もし、それが成し得たならば、キングはそこへ至るまでの糧となり、決して無為な死ではなかったと証明される。

 それはどこか諦め切れない夢を託す、切実な願いにも聞こえた。


 言葉で誓うのは簡単だ。

 だから私は、この偉大な戦士に敬意を表するためカタナを掲げた。

 借り物とはいえ、彼を倒した剣だ。この際、構わないだろう。


「この剣に誓おう。私は必ず、誰にも負けない戦士になると!」

「ウ、ム……感謝シヨ……ウ」


 ついに黒霧となって崩れ去るキングは、間際に小さく呟いた。


「……ヨ、我ノ、……捧ゲ――」


 最後まで言い切れず、跡形もなく消滅する。

 リザードキング討伐は、ここに完了した。

 だけど私は不思議と、心から喜ぶ気分にはなれなかった。

 生き残れたのは嬉しい。ディーネも、みんなも無事だったのは最上の結果だ。

 それでも、グレヴァフだった私を知る最後の者が、この世から消えてしまった事実に、ちょっとだけ寂しくなってしまったのだ。


 ……まあ、あまり落ち込んではいられない。勝ちは勝ちだからね。

 勝者はそれを祝わなければ、敗者に対する侮辱になってしまう。

 戻ったらみんなで祝勝パーティでも開こう。


 それにしても、あまり聞き取れなかったけど、あの最後の言葉……どうも不穏な気配がしていた。

 私には、こう聞こえたから。


『魔物の王よ、我の命を捧げよう』


 改めて周囲を見渡す。

 この地下遺跡は、いったい誰がなんのために作ったのだろう。

 なぜディーネを生贄の儀式めいた方法で殺そうとしたのだろう。

 不吉な想像をしたせいかゾッとする寒気が私を襲った。

 まさか……ね。






 シリスさんが、あのリザードキングを討伐して戻って来ました。

 さすがはシリスさんです。ワンダーです。

 このような偉業は、聖天教の聖騎士たちでも不可能でしょう。

 私の目に狂いはありませんでした。シリスさんこそ真の聖女……今では、それを越える存在であると私は確信しています。


 さて、そんなシリスさんが大活躍をしていた頃、私はというとリザードウォリア―たちを相手に手間取っていました。

 周囲には冒険者パワーズの皆さんに、月華美刃のヴェガさん、炎の勇者アズマ、そしてベティさんが一丸となって応戦していますが、相手の数も多く、陣形が崩れないよう持ち堪えるのが精一杯です。

 辛うじて勇者アズマの火炎だけがウォリア―を薙ぎ払い、確実に数を減らしているので、時間はかかりますが勝利は間違いないでしょう。

 あのような者に頼るようで悔しいですが、今は効率を最優先させます。

 加えて、ベティさんが癒しの魔法で負傷者を回復させているため、こちらの損害は皆無だったのも、大きな勝因であると言えます。


 ……いえ、実のところ、もうひとつ理由がありました。

 それがなければ、負けはしなくとも死者が出ていたはずです。

 他の人たちは誰も気付いていません。それも当然でしょう。

 私も聖天教に聖女候補として属していた頃、機密事項のひとつとして知り得ただけなのですから。

 一般の人が知っていたら、そちらの方が大問題です。

 つまりそれは、彼女が一般人ではない証左でもありました。


「ベティさん、少しよろしいですか?」

「あ、プロン様! どうかされましたか? もしやお怪我でも?」

「いいえ、ひとつお聞きしたいことがあります」


 大穴からシリスさんとディーネさんを救出して、拠点へ戻る道中のことです。

 すでにリザードマンはキングの敗北を悟って逃げ出したため、最低限の警戒だけで大湿地帯を歩けています。

 もはや陣形すら組まない気楽なものです。

 なので私は、今のうちに彼女を見定めることにしました。


「ベティさんは、シリスさんの敵ですか?」

「な、なにを言っているんですかプロン様? ベティは――」

「貴女はただの冒険者ではありません。恐らく隣国のノードランに属している高貴な出の者でしょう」


 単刀直入にはっきり突きつけましたが、ベティさんは落ち着いていました。


「どうして、そんな風に思われたのですか?」

「先ほどの戦いで癒しの魔法を使っていましたが、他にも妙な魔法が、あの場にいる皆さんに付与されていると気付いたからです」


 具体的な効果までは不明だったものの、それは戦っている皆さんの戦闘能力を向上させるような補助の魔法でした。

 ですが、通常の魔法にそのような大掛かりなものは難しく、なにより私は似たような魔法に覚えがあります。


「あれは正式魔法ですね?」

「……そこまでご存知でしたら、私も話さない訳にはいきませんね」


 ようやく観念したようでベティさんは口調を改めました。それまでの幼い印象はは鳴りを潜め、少し大人びたように見えます。


「それが貴女の本当の姿ですか」

「いえ、どちらも私ですよ。プロン様」

「どうであれ構いません。では改めて問いますが、シリスさんの敵ですか?」


 私の手には聖騎士の槍が握られています。

 もし、おかしな動きを見せたら私は躊躇いなく振るうでしょう。

 これまで観察していたところ、本当に戦闘能力は皆無のようでしたので、まず避けることも、防ぐこともできないはずです。

 それを知ってか知らずか、ベティさんは微笑みながら口を開きます。


「私はシリス様に大きな御恩があります」

「……続けてください」

「まず、私は推測通りノードランの第三王女ベルティクス・ノス・エオルゲインと申します」


 どうやらベティさんは王女だったようです。

 貴族の者かと思っていましたが、大差はありませんね。


「プロン様は、シリス様の以前の活動をご存知ですか?」

「……傭兵のことでしょうか?」


 少しだけシリスさんから聞いた覚えがあります。

 孤児院のみんなには内緒だよ、と念を押されているので、あまり大きな声で言えませんが、たしか所属していた傭兵団と一緒に隣国で活動していたと……。


「そういう縁ですか」

「話が早くて助かります。ですが私はベールで顔を隠していましたから、私が一方的にシリス様の顔を知っていたのです」


 数か月前まで、ノードランでは王位継承権を巡って戦争が起きていました。

 詳しくは知りませんが、恐らくシリスさんたちはベティさんの陣営に雇われていたのでしょう。

 当然、活躍したシリスさんは雇い主であるベティさんと直々に面会する機会があったでしょうから、そこで初めて出会ったようですね。

 そういえば戦争は過激派がすべて潰され、残された穏健派が停戦条約を結んだため収まり、シリスさんの傭兵団も北方へ移動したと聞きます。

 穏健派のひとつが、ベティさんの派閥だったのでしょうか。


「だとしても、なぜここにいるのですか?」

「穏健派と言っても、表立って争わないだけなんですよ。私も命は惜しいです」


 暗殺から逃れるために亡命したようですね。


「本当は僻地でひっそりと暮らす予定でしたが、色々とあって馬車も従者も持ち出した金品も失いまして……


 追手か、もしくは裏切りにでも遭ったのでしょう。

 あまり興味はありませんので、続きを聞きます。


「いっそ本当に自由に暮らそうと思い立った時、シリス様のことを思い出したのです。あの方のように、冒険者となって暮らしてみようと……幸い、魔法の腕には自信がありましたので」

「では、あの街に来たのは偶然だったのですか?」

「それは……期待はしていました。どこで暮らしているのか等は、本人から色々と聞かせて頂いていましたから……いつかパーティを組めたら、なんて」


 これだけは本心だとわかるぐらい、ベティさんは嬉しそうに話します。

 あとは酒場でディーネさんとの会話を耳にして、恩を返すつもりで名乗りを上げて、現在に至るようです。

 シリスさんに素性を知られないよう無知な小娘を演じていたのも、もし王女だとわかったら仲間にしてくれないと考えた結果のようでした。

 たしかにシリスさんは、とても優しい方なので、知っていたらリザードマン討伐に参加させなかった可能性がありますね。


「それにしてもプロン様が正式魔法をご存知だったとは驚きでした」

「以前、私は聖天教に属していました。……正確には聖女候補だったのです」

「え、候補というと……では、いったい?」

「私にも色々ありまして、詳しくは長くなりますから後日お話します」


 すでに私の中でベティさんは、シリスさんを害する者ではないと判断されていました。むしろ同士という思いが強く、だからでしょうか、私のつまらない過去を語ってもいいとさえ感じています。


「その頃に知り得た知識ですが、正式魔法の存在と、その使い手のひとりがノードランにいるという情報だけ流れて来たのです」

「聖天教はそこまで……あ、ちなみに私の正式魔法は『安寧の箱庭(ロイヤルガーデン)』と呼んでいますので、よろしければ以後はそのように」

「どのような効果なのですか?」

「そうですね……前線で戦う者の能力向上、でしょうか? 実は私にもよくわかっていない部分がありまして」

「そもそも正式魔法とは、どういった物なのですか?」

「ええっと、本来は王家秘伝とされている話なんですけど……構いませんね。正式魔法というのは――」


 こうして新たな同士を得た私は、お互いの情報をやり取りします。

 特に魔法に関してベティさんは詳しかったので、細かく追及しました。

 これで魔力制御を不得手とするシリスさんに、少しでも手掛かりを見つけられたら、きっと喜んで貰えるはずです。

 それと正式魔法が実在すると確認できたので、これもシリスさんに教えてさしあげなければ……いえ、ベティさんも自分から説明したがる可能性がありますね。

 惜しいですが、ここは二人同時という形が、最も穏便に済みそうです。

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