第十八話 『敗北するG』
大分遅くなってしまい、すいません!
代わりと言っては何ですが、いつもよりも少し長くなっています。
「私の所属する組織の名前は特務派遣部隊、通称メダリオン。君たち『セクトニアの忌み子』を捕縛、処理する特殊部隊です」
男の口から出た言葉に思わず僕は耳を疑った。
なんだか現代日本にあるまじきファンタジックな単語が出てきたよね。何だろう、この人ゴキブリが怖くて変になっちゃったのかな?
僕が男にジトーとっした視線を送っていると、それを察したのか男が慌てた様子で口を開いた。
「誓って嘘はついてないですよ? 耳慣れない単語が多いでしょうから、これから説明します」
「じゃあ、まずメダリオンとか言うのからお願い」
「分かりました。メダリオンは『フェルグラント騎士団』という、とある民間の組織に属しています。ここでは騎士団と呼ぶことにしますが、騎士団は主に全世界の平和を目的として設立された組織ですが、まあご覧の通り非合法活動にも手を出しているわけです」
何というか、カルト系の宗教みたいに行き過ぎちゃった集団ってことでいいのかな?
それはそうと、なんだこのネーミング。
「一応聞いておくけどこのネーミングって……」
「ああ……それはうちの団長がつけたものでして、まあ、なんと言いますか、そういう方なのですよ」
男は乾いた笑いを浮かべてそう言った。
……うん。今のでなんか大体分かった気がする。
「それで? あなた達はどんな目的があって僕たちを狙うの? それがさっきの『セクトニアの忌み子』とかいう単語と関係があるんでしょ?」
「そうですね。その名前もまた団長の命名な訳ですが、まあとりあえず『セクトニアの忌み子』というのは、君たちのように虫に関わる不思議な能力を持った者のことを言います」
「それってつまり僕とハルカのほかにも同じような人がいるってことなの?」
思わず僕は男の言葉を遮って声を上げてしまった。
「ええ、いますよ。現在確認されているだけでも、この地球上には君たちを含め34人の『セクトニアの忌み子』が存在しています」
ハルカと出会った時点で、他にも似たような人間がいるかもしれないと予想はしていたが、思ったよりもいるみたいだ。まあそれでも、確率的には二億分の一ぐらいの超少数派な訳だけれども。
「で、なんで僕たちを狙うの?」
「それは君の能力があまりにも強力すぎるからですよ。ただでさえ、『セクトニアの忌み子』の持つ能力というのは一国を一夜で滅ぼしかねない力が多いのですが、その中でも君の力は頭一つ飛び抜けている。自覚はないかもしれないですが、その能力をフルに駆使すれば一夜で世界をも滅ぼすことすら可能ですよ? あの女の子はついでのようなものです」
言われてみればそれもそうかもしれない。僕の『虫を無限に生み出す』能力は文字通り虫を無限に生み出すことができる。今でこそゴキブリしか生み出していないけれど、小さい頃はよく蜂やバッタなども生み出していた。スズメバチみたいな危険な虫はとてつもなく強力な武器になるだろうし、バッタだってその旺盛な食欲で通り過ぎた土地を更地に変えるとまで言われている。
確かに使い方次第では人類を滅ぼすことさえできてしまいそうだ。
「ですから、あなたは我々の中では最優先抹殺対象なのです。それはたとえあなたがその能力を悪用する意思を持っていなかったとしてもです。暴走という可能性が存在する以上、迅速かつ確実な対応が必要とされるのですよ」
「暴走? それってどういう……」
「能力者の負の感情が一定以上に膨れ上がったときに、能力が能力者の制御を離れて暴走を始める現象のことです。どの程度で暴走に至るかは個人差がありますが、一般的に強力な能力者ほど暴走を起こしやすいといわれています。おそらく強すぎる能力が故に制御が難しいのでしょう」
ま、マジですか……。そんなヤバイ爆弾抱えた能力だったのか……。
いつも冷静であることを心がけてはいるけれど、これからはもっと強く肝に銘じておこう。
「まあそんなわけで、私たちは君のことをなんとしてでも殺さなくてはならないんです、よっ!」
僕が暴走という新事実に気をとられ、男から意識をそらしたその一瞬を狙って男が動いた。
エビのように体全体を使って飛び跳ね、縛られたままの両足で異常な体勢から鋭い蹴りを放つ。
見事に意識の空白を突かれた僕は、しかしなんとか反応して上半身を後ろにそらし、蹴りをかわす。男の足は僕の顔の数センチ前で止まった。
しかし、男の狙いはそこではなかった。
まっすぐ伸びきった男の足のその先、靴の側面に金属でできた何かが取り付けられているのを僕の目が捉えた、その瞬間、
まるで拳銃の引き金を引くが如く、男が足首をひねる。
シュッ!
ほとんど音もなく、何かが男の靴から飛び出す。
さすがにこれはよけることができない。右肩に鋭い痛みが走る。細い針のような物が突き刺さる感覚。
「どうやら私の方が一枚上手だったようですね」
足を地面に下ろしながら男が微笑みを浮かべる。
「ッ! これは……」
その針の効果に僕は思わずうめき声を上げた。心臓が鼓動し、血液が回るごとに体中から力が抜けていく。そして十秒と経たずに僕はあっけなく地面に倒れ込んだ。
「その麻痺毒は最新型でしてね。即効性と効果がとても強いにも関わらず、副作用が全くない優れものなのですよ」
そう言いながら、男はどこからともなく取り出した小型ナイフで拘束を解き、立ち上がって服についたほこりを払う。
そして一歩、地面に倒れ伏す僕の方へ足を踏み出した。
「さて、これで立場が逆転したわけですが」
僕はただ男を上目遣いに睨み付けることしかできない。
ゴキブリたちが僕を守るように立ち塞がり、男を威嚇する。
「おっと、落ち着いて下さい。私は彼を殺すつもりはありませんよ。少なくとも今はまだ。今日は想定以上にダメージを受けてしまったので、今殺してしまったら私は怒り狂ったあなた達をさばききる自信がありませんから」
そんなことを言っておきながらも男の表情は余裕のままだ。
「ああ、安心して下さい。あの女の子にも今のところは手を出さないことになってますから。……ここで片方だけ殺すとろくなことにはならないでしょうし」
後半の言葉の言葉は呟きになっていて僕には届かなかった。
「それでは、私は仲間に顛末を報告しなければなりませんのでここでお暇させていただきます。その麻痺毒はあと十五分ほどしたら切れると思いますよ」
男がきびすを返す。
「あ……、ま……て……!」
僕は思うように動かない震える手を男に伸ばした。
その声に男は足を止めた。そして、一体何を思ったのか、自分の首元に手をかけた。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はフェルグラント騎士団、特殊派遣部隊『メダリオン』所属。諜報、暗殺担当、ゼクスと申します。以後お見知りおきを」
男――ゼクスはそう言うと、かぶっていた何かを引き剥がす。マスクの下からこぼれ落ちた髪がは月明かりを受けて金色に輝いた。
「それではまた、どこかで」
ゼクスはそのまま、振り返ることなく歩き去って行った。
いつも読んでくださりありがとうございます。
改めて、一週間の間、投稿することができず、申し訳ございませんでした。
重ねまして、このたび知り合いのなろう作家様主催のシェアワールド企画に参加させていただくことになり、その準備のためにこの作品の更新頻度を下げようと思っています。具体的には一週間に一話くらいになるかとおもいます・
企画の詳細は後日、後書きか活動報告でさせていただきますが、SF寄りの異世界ファンタジーになると思います。
もしよろしければ、これからも応援していただけると嬉しいです!




