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第十六話 『飛翔するG』


「さあ、みんな。食事の時間だ」


 夜の闇より深い漆黒のゲートが無数に開く。木々の間から差し込むわずかな光さえ吸い込んでしまいそうな闇の扉。そこから現れるのは、つややかに光を反射して輝く黒の体。

 無数に開かれたゲートからさらに無数に現れた彼らは、暗闇の中にその身を隠す。


 ゴキブリたちの、狩りが始まる。


「行け、みんな!」


 僕の声を引き金にして、ゴキブリたちが行動を開始する。


「ッ! これは、しくじってしまったようですね」


 ここに来て初めて、男の余裕の笑みが崩れた。僕に襲いかかろうとした足を止め、油断なく周囲を警戒する。


 カサカサ、カサカサ。


 男が動きを止めたことで静寂が満ちた木々の中、足下を何かが蠢く音だけが耳に届く。

 彼らの黒い体は吸い込まれるように暗闇の中に紛れ、どこにいるかも分からなくなる。人工の光が存在しないこの場所なら、視覚で認識するのはまず不可能。夜の闇は彼らの最も得意とするフィールドなのだ。


「……囲まれた? いいでしょう、受けて立ちますよ」


 男は一瞬崩れた笑みを作り直し、構えをとる。


 それを待っていたかのようにゴキブリたちは男に向かって飛びかかった。


「ッ!」


 男が跳躍。殺到するゴキブリをかわすと、地面に足を突き刺すように勢いをつけて着地しようとする。


「危ない!」


 僕が叫ぶと同時に着地地点の真下に集まっていたゴキブリたちが散開。間一髪で踏み潰されるのを回避する。


 男は押し寄せるゴキブリたちを踏み潰そうと再度跳躍する。

 しかし、


「みんなを倒そうと思っても、僕のように一筋縄ではいかないよ」


 跳躍した瞬間を狙うように、木の上に待機していた数十匹のゴキブリたちが男の頭の上から飛びかかる。

 足下ばかりに木をとられていた男は落ちてくるゴキブリたちを回避できない。それでもさすがと言うべきか、とっさにナイフを振るい、空中の数匹を両断した。


 またみんなを死なせてしまった。死地に特攻させた悔恨と、みんなを殺した男に対する強い怒りが僕を襲う。思わず男に向かって突っ込んでいきたい衝動に駆られるが、なんとか自分を押さえ込む。


 怒っているのは僕よりも、彼らの方なのだから。


 みんなが纏う雰囲気が一変する。


 僕はぽつりと呟いた。


「ゴキブリたちは仲間を殺された怒りを忘れない」


 一度仲間を殺され、怒ったゴキブリたちは、たとえ僕が止めても止まらない。仲間の敵を討つまで進み続け、たとえどれだけの犠牲を払おうとも、それをさらなる怒りの糧にして突き進む。


 上から奇襲を仕掛けたゴキブリたちは切り払われる仲間を顧みることもなく、男の頭や肩にとりついた。そのまま服の隙間に入り込み、もしくは服をも食いちぎって男の体に噛みつく。


 しかし今回の敵は強かった。


「何のこれしきッ!」


 顔にとりついたゴキブリたちをつかみ取って握りつぶすと、体に噛みつく十数匹はそのままに、下から押し寄せるゴキブリたちへの攻撃を再開する。


 だが、怒りを帯びた彼らは先ほどまでとは違う。

 彼らは回避行動を一切とらなかった。落ちてくる足に踏み潰されるに任せ、地に足がついた一瞬を狙って死に物狂いで男にしがみつく。


 男が一歩地に足をつくたびに十匹のゴキブリたちが踏み潰され、二十匹以上のゴキブリたちが男の足を這い上がる。


「クッ!」


 さすがの男も数分前の余裕は完全に崩れ去っていた。


 次々と男の体を這い上がるゴキブリたちはすでに百匹を超え、噛みつかれたことで服もボロボロに破れていた。


「くそっ、それならせめておまえだけでも!」


 男は自棄になったのか、ゴキブリたちに噛みつかれることもいとわず、僕に向かって襲いかかってきた。


 しかし、その行動はすでに予想済みだ。準備はもう終わっていた。


「ねえ知ってる?」


 僕は呟き、目の前の虚空に手をかざす。


「ウオオオオオオオオオォォォ!!!」


 男は必死の形相で僕の方へと駆けてくる。

 でも、もう遅い。


「ゴキブリってさ、飛べるんだよ?」


 僕の目の前の空間にいくつものゲートが開く。

 普段はそこから現れるゴキブリたちは地面に落ちるが、今回は違う。

 ゲートから出てきた彼らは羽音を立てて宙に浮かんでいた。


「行けっ!」


 僕の合図によって千を超える黒の弾丸が男に向かって飛んでいく。


「こんなものオオオォォォ!!」


 男はひるむ様子もなくこちらへ突進してくる。

 そう。確かに一発一発の激突の衝撃では大きなのダメージを与えることはできない。

でも、


 すべての攻撃を一点に集めれば、


 個々の力は人間に遠く及ばず、簡単にひねり潰されてしまうような小さな存在だとしても、数を合わせ、力を合わせれば、強者を倒す革命となり得る。


 狙いは首。男の首筋に向けて弾丸は殺到する。


「アガッ! グガガガガッ!」


 喉の一点に集中して放たれる連撃は、数秒で男の意識を刈り取った。



読んで下さりありがとうございます!

謎の男との戦闘回が終わりましたが、いかがでしたでしょうか。Gがカッコよく描けているといいのですが……

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