プロローグ 『終わりと始まりのはざま』
連載書いてみました。
あらすじ欄にも書きましたが、この小説は大量のゴキブリの描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
「僕が、僕たちが、一体何をしたっていうんだよ‼」
少年は空を見上げて叫ぶ。地に膝をついた彼のその腕には血塗れになり浅い呼吸を繰り返す少女が抱えられている。
傾いた夕日が赤く染めた空は無数の戦闘機が浮かんでいた。
ミサイルが橙に燃やした地面は無数の黒い虫の骸で埋め尽くされている。
周りには誰もいない。人間だけでなく、命を未だに保っている生き物は少年と少女の二人だけだった。
そして少年の腕の中の少女もまた、その命を今にも散らそうとしている。
「待ってよ! まだ死なないでよ! 僕を一人にしないでくれよ!」
少年は救急救命の方法など知らない。何もできない無力さに怒りがわく。
戦闘機の機銃から放たれた弾丸が少年をあざ笑うかのように乾いた地面を抉る。
そのうちの一発が少年の腕の中の少女を軽々と吹き飛ばした。無惨な姿の少女が地面を転がる。もはや少女はピクリとも動かない。
泣き出しそうな表情で、少年は少女に手を伸ばそうとする。だが、その手が少女に届くよりも早く鉄の塊が少年を貫いた。
少年の腹からドクドクと血液が流れ出る。気を失いそうな激痛が襲ってくる。
――痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い‼‼
でも、それでも!――
それでも少年は地面を這いずって、少女へと必死に手を伸ばした。
――諦めて、たまるかよ!
「ウ、アアアアァァァァ‼」
言葉にならない叫びを上げて少年は手を伸ばす。
生まれてからたった一人だけ、大切だと思える人がいた。
生まれてからたった一人だけ少年を恐れず、嫌わず、ずっと側にいてくれる人がいた。
空っぽだった少年を温かい何かで満たしてくれた。人の、生き物の優しさを教えてくれた。
だからこそ少年は手を伸ばす。最後に残ったたった一つの大切だけは何としてでも守り抜くために。
伸ばした手が少女の手に届く、瞬間――
少年の手がはじけ飛んだ。
手首から先がなくなり、温かい鮮紅が迸る。もはや許容量を超えた痛みは痛覚を麻痺させ、何も感じさせない。
――でも、それでも
「絶対に、諦めない!」
少年は残った片手で少女を引き寄せる。
例え片手はなく、腹に穴が開き、今にも失血で気を失いそうなそんな瀕死の状態でも。
まだ片手は残っている。まだ意識は残っている。まだ命は残っている。
希望はまだ、残っている‼
「お願い……、みんな。もう……一度だけ、僕たちを……、救っ……て……」
少年は小柄な少女の体を抱きしめ、そして意識を手放した。
その後のことを知るものは誰もいない。
自分は嫌いじゃないです、ゴキブリ。その強さは中々に見るところがあると思います。
短編もあるのでもしよかったらどうぞ。https://ncode.syosetu.com/n9390eg/




