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第四章 ・・・ 1

「やっちゃったなあ…」

 どんよりとした天気。いまにも雨が降りそうだ。

 そんな空は見えない位置に部室の中のソファは置いてある。

 悠汰のお気に入りの場所で、あたしは半分横になって、クッションを抱きしめながら何度目かのため息をついた。

 空と同じどんよりした気持ちで。

「またですかあ?もう元気出してくださいよ。大丈夫です…って!」

 ヒデが絨毯をコロコロしながら相槌を打った。

 一度は染み付いたこのソファも、どうやったのか、すでにヒデの手で完璧に綺麗になっている。

(ヒデは良い奥さんになるわ。はあー)

「だってさあ…フツー自分の母親と喧嘩するような女なんて引くでしょう?」

 そう、あたしは自己嫌悪にうちひしがれていた。やり過ぎたかなあ…って。

「珍しいですね、そんなに悩むなんて…。らしくないですよ玲華さま」

「えー、そーお?あたしだってウジウジすることぐらい…」

「そんなに好きなんですか?神崎さまのこ。あっ、無くなった」

 ちょうどコロコロの粘着テープ部分が終わったみたいで、サクサクと喋りながらヒデは替えを取りに棚に行った。

(好き……なんだよねえ)

 一度気づいたら、止まらない自分がいて驚いた。驚きの連続だ。

 いつもなら()()ん家のもめ事には手を出さない。手は出さないべきだと思っていた。そういうのは、あくまで当人たちの問題で、当人たちじゃないと解決しないものだと思うから。

「でもあまりにいつもと違うんだもん」

 悠汰が。

 なにも言わなくなる。

 顔つきからして違った。戦意喪失したみたいな。

 悠汰が護るって言ってくれたときは、心臓が止まるかと思った。それぐらい嬉しかったのに、あの失態だ。これじゃあ、どっちが護ってるんだか分からない。

(まー、護られるのなんてガラじゃないけどね)

「なにしてんのかなあ…いま…」

 ちゃんと食べてるかな、とか、ちゃんと寝てるかな、とか凄く気になる。

「そんなに気になるなら連絡とればいいじゃないですか」

 替えテープをセッティングすると、またコロコロしだしてヒデが言う。

「PCメールなら送ったけどねー、昨日。……あーあ、携帯プレゼントしようかなー」

「やり過ぎちゃダメですよ。ウザがられたら元も子もありません」

「…意外とマトモなこと言うじゃない」

 ちっ。ヒデのくせに。

 でも確かにその通りだ。タキシードあげてもそんなに喜んでなかったし。

 一緒にいた二日のなかで、一番喜んでくれたのは食事中だったかな…って思う。

(ちっ、料理か…)

「ねえヒデ。あたしにも料理ぐらい出来るわよね?」

「……………」

 なんとなく訊いただけなのに、ヒデはコロコロする手だけ動かして、あとはフリーズしやがった。

「ちょっと!無視とはいい度胸ね!」

「………玲華さま、そんなに好きなら言っちゃったらどうですか?」

「もう言ったわよ!コクったわよ!一昨日」

「えええっ!!」

 なぜかヒデが真っ赤になって慌てた。話を逸らしたくて言っただけみたいだった。ふんっ!

「で、神崎さまはなんて?」

「聞いてない…てゆーか、それどころじゃないみたい」

 本人も認めてるみたいだけど余裕がないんだ。あたしだってそれはそうだけど。

 久保田さんは結局帰ってきてないみたいだ。なにかあれば祥子さんからあたしの携帯に連絡が入る。そしてあたしから悠汰に連絡する約束になってるんだけど…。

 なにやってんだろうか、あの人は。無茶なことをしなければいいのに。

(なんかあって悠汰が悲しんだらタダじゃおかない!)

「なんですか?それ。なにがあったって、恋愛は別でしょう」

「えー、どっちがらしくないのよ。じゃあヒデは好きな子いんの?」

「ぼくだっていますよ」

 あたしの顔も見ないでコロコロしたままで、ヒデがあっさり白状した。初耳だ。

「誰?あたしの知ってる子?」

「ぼくのことはいいんです。いまはここで玲華さまのお手伝いさせていただいてる方が楽しいですから」

「あんたもねえ、いつまでもこんなことしてなくていいのよ。ヒデは使用人の息子だって悠汰に言ってたけど、ヒデが使用人なわけじゃないし、あたしが立場が上とかでもないんだからね」

 なんつーか…それってどうなんだろうって思って改めて秀和に言った。

 彼が好きでやってくれてるってことはわかっている。

 だけど、縛りだと感じるまえに、好きなときにやめて良いって、ちゃんと伝わればいいと思った。無用な負い目なんて感じずに。

「はい。わかってます。ぼくは父の仕事も尊敬してますし、玲華さまのことも…」

 途中でヒデの言葉が止まる。それは扉がノックされたからだった。

「はーい」

 ヒデがコロコロをやっと手放して客人を出迎えた。

 もうちょっと突っ込んで聞きたかったけど、解ってるみたいだからいっか、と諦める。

 ヒデが開けた扉から現れたのは、なんと綾小路だった。ノックして訪ねるなんて初めてのことだ。いっつもアホなこと言って勝手に入って来てたのに。

 ………間が悪いところは変わってないけど。

「やあ玲華。……邪魔だったかな?」

「とんでもないです!どうぞお入りください」

 ぽかんとしてたら、勝手にヒデが招き入れていた。まーいいけどさ。

「ずいぶん、くつろいでるんだね」

 クッションを離さないままのあたしを見て、綾小路が戸惑っていた。

 しょうがない、起きるか。

 上体を起こし、座り直して制服も整える。

「あなたはずいぶん節操が出てきたのね」

「もうそれは言わないでくれ」

 ちょっと気恥ずかしそうに言って向かいに座った。確かにネチネチ言い過ぎたかなあ、と反省する。

「聞いたよ。犯人に襲いかかって逮捕したそうじゃないか」

「襲いかかられたのよ!誰よ!間違った噂ながしてんの!」

 どこから漏れたのか、学校に来てみたらちょっと脚色された噂で持ちきりだった。

(あたしが襲いかかるって現実的に無理よ!)

 相手が来てくれてやっと特定の人物がわかったっていうのに。

 あの会場には校内の生徒もいたし、バレるのは仕方ないけど、こんな噂になったのはあたしが本性を出したからだろうな。自分ではそんなにギャップがあるとは思えないんだけどね。

「噂だからね、すぐ消えるさ」

「そんなくだらない話をしにきたの?」

「違うよ」

 続けて言う前にヒデが間に入った。

「なにかお飲みになりますか?」

 あたしのまえにある、九割り飲み終わったアイスコーヒーのグラスを見つめながら綾小路が言う。

「ここには冷たいドリンクもあるのかい?」

「ヒデが保健の高科先生から氷もらってきたの」

 おまけになんと保健室の冷蔵庫の一部を使わせてもらってるようだ。

 今日知ってあたしも驚いた。

 球技大会のバスケで突き指して保健室に行ったらしい。それをきっかけにいろいろと話が咲いたようで、高科先生と仲良くなったとのことだ。そしてさっき、氷をアイスボックスに詰めて頂いてきていた。

 ヒデはあたしが知るなかで一番年上キラーじゃないかと思う。

 確かに母性本能くすぐるタイプではある。…のかな?あたしにはよくわかんないけど。同い年だから。

「アイスコーヒーならすぐお持ちできますけど」

「じゃあ頼む」

 まるでウェイターみたいな受け答えをして、ヒデは楽しそうに作りに行った。

「ちょっと気になってね。……君は世羅君とケンカでもしたのかい?」

 話したかったのはそれか。あたしはため息を噛み殺した。

「そっか、聞いてたんだ。でもケンカじゃないわ」

「そうかい?神崎兄弟がややこしくしてるみたいだったけど」

 ちっ。しっかり聞いてやがる。 世羅と一緒にいたのが悠汰の兄というところまでちゃんと。

 あんだけ大きな声で喋ってたから、仕方ないといえばそれまでだけど。

「それは誤解よ。って…まさか悠汰にそういう話してないわよね」

「してないよ。というより出来なかった。なにやら事情がありそうだったからね」

 さすがは綾小路家の嫡男というところか。

 すべての情報を逃すことなく収集し、ちゃんと自分なりに噛み砕いて判断している。

「ならいいけどさ。世羅のことならなんでもないわ」

「ここにいないみたいだけど?」

 綾小路は痛いところ突いてくる。

「だから心配いらないって…」

「僕にも手伝わせてくれないかな」

 あたしの言い終わらないうちに、綾小路は両目を細めて笑って言った。

 またなにを言い出してんだろう、この人は。あたしは頭が痛くなった。

「あのねえ…」

「犯人探しをしてるんだろう?」

 ああ、やだやだ。頭がいいやつってこれだから。適当に誤魔化せない。

 仕方ない。まずは相手の力量を判断しよう。

 そう思ったときにヒデがアイスコーヒーを持ってきた。律儀にあたしのお代わりまである。遠慮せずにお礼だけ言って、新しい方を一口頂いてから話の続きを切り出した。

「なんか知ってることでもあるの?」

「ああ。少なくとも神崎よりは、な」

「……なによ、その言い方は。いっとくけどアリバイのことなら知ってるわよ」

「あいつ…口止めしたのに」

 独り言のように綾小路が呟く。

 ったく、コイツが原因か。すべての現況とまではいかないかもしれない。でも確実に綾小路の一言で悠汰は迷ったはずだ。

「言ってないわよ、悠汰は。知ってたの、あたしが!余計なナミ立てないでよ」

 僅かに綾小路は意表をつかれたみたいな顔をした。

 やっぱり悠汰は損するタイプだ。あの正直すぎる態度のせいで誤解が多い。

 それでも最近は徐々に雰囲気が柔らかくなっている。まだ不安定なときはあるけれど、怒鳴る回数が明らかに減っていた。

 でも、それでライバル増えんのは困るんだけどな…。複雑だ。

「それは悪かった。誰も君には伝えないと思ったんだよ」

「まー、確かに誰も言ってはいないけどね。なんとなく耳に入るものなのよ」

 適当にあたしは流した。まさか警察の情報を探りましたなんて、冗談でも言えない。いまの綾小路にはまだ。

「で?目撃者の悠汰より知ってることってなに?」

「…そうだな、じゃあ犯人のことを推理してみないかい?」

「推理?」

「例えば、通り魔の犯人が別に捕まったことで分かることがある。梶さんを殺害した犯人は通り魔に見立てた殺り方をしてるけれど、そうするにはどうしても必要な技術がいる」

「それは…心臓の位置ね」

「そう。どれも背後から正確に心臓を狙ったひと突きのみで即死させている。知識のないものには到底無理だ。実際に今回捕まった犯人は外科医だったそうだよ」

 満足そうに綾小路は頷く。

 気づかなかったわけではないが、それならばどうしても腑に落ちないことがある。

「浅霧家のなかにそういうことに()けている人はいないわ」

 医師はもちろん、それに近い職種の人もいない。

「どうして、浅霧にこだわる必要がある?」

「それじゃ…誰が?」

「まずはプロファイリングを聞いてくれるかい?先程言ったような殺害方法では、梶さんのような大人の男性を殺害することは女性には無理だ。力が無いし、敵うものでもない。これで世羅君は外される」

「そうね」

 間違いない。世羅は違うんだから。

 素直に頷いてから、ふと疑問点を感じた。ならばなぜ刑事は世羅を見張っていたのだろう。一介の高校生が気づくことだ、警察だって簡単に思い付くことのはずだ。

「男性で医学の知識があるものが犯人だと思う。そしてその中でも梶さんより体力のあるもの」

 なぜか焦らすように綾小路は一旦言葉を切って、アイスコーヒーを飲んだ。

 その術中にはまり、すでにあたしは綾小路の話から逃れられない。

「そういえば、神崎惣一さんって、医学部志望なんだってね」

 綾小路の言わんとしてることがわかって、あたしはイヤな顔をした。

「悠汰のお兄様が犯人だと言いたいの?」

「怒らないでくれ。あくまでも、ただの推理だ。可能性の話をしてるんだよ。彼なら心臓の位置も把握できてるだろうし、力だってあるだろう」

「いえ…無理だわ。まだ高校生って聞いてるわ。いくら志望してるからって…。それに動機がないもの」

 やっぱり腑に落ちなくて、あたしはかぶりを振る。

 可能性の話でもこんな話はしたくなかった。いくら贔屓目で見ていると言われようとも、悠汰の兄というのは考えたくない。

「動機なんかは後から見つかるものさ。だいたいそういうのは本人しかわからないからね。……では神崎の父親が絡んでるとは思えないかな?れっきとした内科医だそうだよ」

「いい加減にしてくれる?いくらなんでも神崎一家を絡めすぎよ」

 あたしはなるべく冷静に否定をした。ここでキレるのは得策じゃない。

「だけど玲華。不思議には思わないか?あの日あのタイミングで……しかも世羅君とともに現れた神崎惣一に。彼は一体何しに来たんだろうね?」

 なにをしに……か。あたしだって知りたくて仕方なかった部分だ。だけど悠汰には聞けそうにない。

 答えられない変わりに、あたしは一番ありえない疑問を提示した。

「そもそも、世羅が梶さんを殺した犯人と一緒にいると思う?」

「………騙されてるんだとしたら?」

「世羅が?」

 迷いながらも言った綾小路に、間髪入れずに切り返す。警戒心の強い世羅が、とくに男性に騙されるなんて考えられない。

「意外と、騙されやすい人っていうのは、彼女みたいな人だったりするよ」

 足を組み換え頬杖をついて、なんか首を傾けて諭すように綾小路は言った。

 なんて意地悪な…。

 これでは逃げ場がない。 四方八方塞がれて、あたしは返す言葉を失った。

「警察もすべてを読んでいて、世羅君を張っている振りをして神崎惣一を調べていたのかもしれない。いや、それともはじめから尾行をしていたのは、神崎惣一だったのかもしれないな」

「どうして尾行のこと知ってるのよ?」

 いくらなんでも情報を持ちすぎてる。あたしでも、あのパーティの夜に目撃していなければ掴めなかった。

 いや、正直なところあたしは目撃してない。悠汰に言われて見たけれど、遠すぎて分からなかったんだ。

 悠汰の目の良さに脱帽した。そして動体視力も良い。前にあやなちゃんが告白した場面のときも、萩原くんのちょっとした動きに気づかれたのだ。それはスポーツでも活かされてる。

「睨んでる顔も素敵だけどね、怒らせるつもりで話してるんじゃないんだよ」

「逸らさないで」

 端的に答えを促す。目線だけで捕らえて逃がさない。

 考えたくないが、久保田さんになにかあったら、今のあたしたちには助ける術がない。少しでも早く、確かな情報が欲しがった。

 綾小路は信用に足る人物か、迅速に判断しなければならない。

「まったく…。変わらないな、君も。ちょっと二人と会話したときに気づいたんだよ。刑事の目線に」

「いつ?」

 どのタイミングで。

「あの夜、ちょっとダンスに疲れて僕は夜風を当たりにガーデンへ出たんだ」

 なぜか語り口調で綾小路は言う。

 一応綾小路はモテる。年齢層幅広く、毎回ころころ相手を変えて踊っているのをよく見ていた。

 あたしには解らない!そういう女性の心境がっ。

「ああ、念のために神崎のダンスだけは一通り見ておいたけどね。ぷっ」

 聞いてもないのに、わざわざ言うかっ!そういうこと!しかもこのあたしのまえで!

(それも笑い付きで!)

「あんたねえ!」

「どうして玲華は踊らなかったんだい?」

 この野郎っと思って勢いづいたら、変わらない態度で綾小路は訊いた。

 収まりつかなくなって妙な間が空く。

「っ、なんでもいいでしょ!」

 正直あんときはそれどころじゃなかったし。ちくしょー、やっぱり踊っておけばよかったか。

 きっと悠汰ならあたしが踊ってと頼んだら、踊ってくれたと思う。嫌そうな顔をしながらも、ぎこちなく、でも丁寧に扱ってくれただろう。

 もう、あんなチャンスはこないかもしれないな、って思ったらちょっと寂しかった。

「それよりなに話したの?その二人と」

「奥の草むらから会話が聴こえるから、見てみたら先に二人がいてね。僕を見てすごく気まずそうな顔してたなあ」

「二人はどんな話をしてたの?」

「さあ…数秒だったからね。僕もそのあと挨拶をしたくらいさ」

「うそでしょう?言わないのなら…」

「本当だよ。あの場で無粋な真似は僕には出来ないからね」

 綾小路は肩をすくめた。

 ダメじゃん。せっかく絶えて聞いていたのに、肩透かしを食らった気分だった。

 ため息をついて横を見ると、結局あたしたちの会話中、ずっと秀和はコロコロしっぱなしだったようだ。絨毯剥かれるんじゃないかしら!


   * * *


 どんよりした空は耐えることなく、夕方にはそのまま雨となってすべてをはきだした。

 遠慮することなく大地に降り注ぐ。

 あたしは家のリビングから雨の音を聴いていた。

 結局、綾小路の申し出には丁重にお断りした。別に信用できなかったとかそういうことではない。

 あの話、悠汰にはできそうにない、と思っていた。本当は言うべきかもしれない。ひとつの可能性としてそれがあるのなら。ちゃんと話して、調べて、否定できる材料を探すべきなのかもしれない。

 確かに綾小路の推理は、むちゃくちゃだけど一応筋が通ってる。

 これで、なんらかの動機が見つかれば…。

 手帳にあったRの文字。イニシャルだった場合該当しないけれど。悠汰のお父様の名前はなんだろうか。

 綾小路は断ったあとも、「なにか詰まったら言ってきてくれ。いつでも力になるよ」なんてキザに笑っていた。

 気持ちは嬉しいけど、素直に喜べない。綾小路の気持ちがわかっている以上、それに応えられないのならば、借りはつくるべきではないのだ。

 彼の心配の内容はわかる。あたしと世羅のことだ。確かにこんなふうに口を聞かない喧嘩は初めてだった。

(まずは世羅の気持ちを知らないと…)

 考えないといけない。

 振り出しに戻って1からちゃんと、考えないといけない。世羅からはなにも教えてもらえないだろう。

 彼女の態度があからさまに違ってきたことは、梶さんが殺されたことが原因だとは思えない。

 どこかにヒントがあったはずだ。知らず知らずのうちに、あたしは見逃していたはずのなにかが。

 彼女はいきなり感情を表す人間じゃないから。それは長いつき合いでわかってる。

 ―――もういいんじゃないか。

 そう世羅は言った。長いつき合いだからこそもういいと。それから…。

(悠汰の名前を出したんだ)

 なんの脈絡もなく。

 ……本当に?

 世羅が意味もなく悠汰の名前を出すだろうか……。世羅の気持ちのなかに悠汰が関わっている?

(まさか…)

 あまりに想像し難い、ひとつの可能性があたしの胸に渦巻いた。

 悠汰と話したい。すごく…。

 まだ、一日しか離れていないのに、すごく悠汰と話したい気持ちでいっぱいになった。

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