表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うざいくらい慎重すぎる暗殺者  作者: 総督琉
第四章『悪魔が目覚める日』
63/76

第五十九話『余興、VS鳳』

 拐われた宮園の奪還に成功した速水。

 彼女は宮園とともにヘリに乗り、旅館へ向かっていた。


 そのヘリを見上げる者がいた。

 火事によって燃えた森のすぐ脇にある小さなビル。

 屋上に二人は立っている。


「王子、鉄甲狙撃砲弾の装填はできましたか」


「できましたが……本当に戦うつもりですか。今の速水は鳳さんでも勝てるか分かりません」


「お前は未来を知っているわけでもありません。であれば黙っていなさい」


「…………」


 王子を威圧し黙らせた鳳は、用意していた大きめの狙撃銃を手に取り、空飛ぶヘリコプターに銃口を向けた。

 まずスコープでヘリに乗る速水を見る。手を動かしているが、鳳を見る素振りはない。

 鳳は迷わず引き金を引き、ヘリのプロペラを破壊した。


「命中ですか……」


 王子は真っ青な顔で落ちていくヘリを眺める。

 焦げた木々が並ぶ森に再び煙が上がる。

 鳳は煙の起点に銃口を向ける。


 ヘリは落下した衝撃で粉砕しており、炎上している。

 スコープでヘリの周辺に目を向け、鳳は微笑む。


「足跡……か」


 森には雪が積もっており、足跡がはっきりと映っていた。

 足跡を辿った先に人影はいた。

 人影がスコープに映ったと同時、迷わず引き金を引いた。それが誰であれ、鳳にはどうでもよかった。


 だが引き金を引いた瞬間、銃口が爆発した。

 鳳は咄嗟に後ろに飛び、被害を免れた。


「いったい何が……、ああそうか。既にあの時私たちの場所は割れていたか」


「どういうことですか」


 状況を理解できない王子は鳳に説明を求める。


「速水はヘリが落下する最中に私たちの場所を察知し、この銃の射出口に弾丸を放った。弾丸が詰まった状態で狙撃したため、銃弾は軌道を逸れて銃身を破壊した」


 鳳は刹那の短時間で原因を究明し、王子に明らかにした。

 鳳は敵の強さを理解し、改めて興奮していた。


「楽しめそうですね」


「本当に行くんですか?」


「あなたはここで待っていなさい」


 鳳は遠足に行く小学生のようなうきうき気分でビルの屋上から飛び降りた。

 壁を疾走し、木々の側面に着地し、森を駆け抜ける。


(彼女は既に私に気付いている。ということは迎撃準備も──)


 鳳は刹那的に足を止めた。

 直後、親指サイズの弾丸が鳳の前の地面を削った。

 龍の爪が振るわれたような威力を目の当たりにし、鳳はさらに紅潮する。


「いいですね。あなたはいいです」


 鳳は銃弾が飛んできた方角を確認し、隠し持っていた短機関銃を二丁構える。


「勝負をしましょう」


 鳳は右手で構えた短機関銃で前方を乱射しつつ前進する。

 二百メートルほど走ったが、誰にも遭遇はしない。


「…………」


 鳳は乱射をやめ、木陰に隠れてリロードする。

 リロードの瞬間、発砲音。

 鳳は地面を蹴って飛び上がり、枝に捕まる。


 見下ろすと、先ほどまで立っていた地面には弾丸が突き刺さっている。

 即座に銃声がした方角に乱射するも、命中した気配はない。


(私が敵の居場所を全く掴めない。まるで遊ばれている気分ですね)


 鳳は自分の劣勢に危機感を抱いていた。


(まずはあなたの姿だけでも一見したいな)


 それでも鳳は笑い、果敢に抗う。

 短機関銃を捨て、次に取り出したのはグレネードランチャー。


(残弾数は五。さすがに少ない)


 とっておきの武器。

 火力は十分にあり、形勢を逆転することもできる武器。


 だが鳳はグレネードランチャーを全て真上に放った。

 すぐさま隠し持っていた狙撃銃を構え、真上に一列に並んだグレネードランチャーの弾に銃口を向ける。

 照準を合わせ、すかさず放つ。

 弾丸は五つのグレネードランチャー弾を全て貫通し、爆破させた。


 鳳の上空では特大の爆音が響き、爆炎が散る。

 さながら隕石とともに舞い降りたような一場面。


 これほどまでの武器を無意味に使用して、鳳の狙いは何か。

 この行為に意味はなかった。

 ただ鳳の気分を上げるためだけの演出。


 鳳の動きは格段に加速し、思考も加速した。


(どれだけ走っても足跡はない。だが木々には外的接触があったような跡がある。つまり一度も地面に着地せず、森を駆け回っている)


 ようやく敵の手掛かりを掴み、居場所を追跡できる。

 だが敵も容易くはなく、跡を辿って追ってくる鳳へ弾丸が放たれる。

 それら全てをかわし、時々ナイフで弾丸を弾き飛ばす。


(さすがに重い。丁度力が入りにくい角度からの狙撃)


 鳳の弾丸弾きはすぐに対策された。

 だが、鳳もまた敵に対応していた。


 発砲音。

 鳳は弾丸が自分のどこに命中するかを事前に察知し、アクロバティックに回避した。


(力の入りにくい場所を読めばどこに撃ってくるかは明白。相手が実力者なら読みやすい)


 鳳と敵との距離は詰まっていく。


(先ほどの発砲音との距離は三百。徐々に縮められている……が、発砲音以外の音は皆無。わずかな風の音だけで捉えるのは集中力を使いすぎる)


 鳳は耳で風の音を聞き、相手の居場所を大まかに知っていた。

 だがあまりにも相手が音を立てないため、近距離でしか不可能。


(これ以上の長期戦は不味いかも)


 鳳は更に一段階加速し、相手との距離を格段に詰める。

 相手の動きが止まり、そこへ鳳はナイフと拳銃を構えて飛び込む。

 ──が、間違いだった。


 速水はグレネードランチャーを構え、今にも引き金を引くところだった。


「私のか」


(弾丸は自前か。あらゆる弾丸は装備しているということか)


 鳳は両腕を盾にするような動きを取るが、もし直撃すればただでは済まない。

 速水が完全に引き金を引いた時、鳳はガードを解除して一気に速水に飛び込んだ。

 その際、鳳は笑っていた。


 速水が引き金を引いた瞬間、グレネードランチャーは爆破した。


(六発目は必ず自爆する改造版グレネードランチャー。直撃したならあとはとどめを刺すだけ)


 鳳は拳銃を構え、数発を浴びせつつ、確実にナイフで心臓を貫けるように距離を詰める。


 爆炎に包まれた速水。

 そこへ躊躇なく鳳は迫る。

 だが接近して気づいた。既にそこに速水はいない。いや、最初から速水はいなかった。


「速水そっくりの機械人形ですか」


 鳳の背後には速水が迫る。

 速水の蹴りを紙一重でかわす鳳だが、第二撃、頭突きが鳳の頭に炸裂し、視界がぐらつく。

 千鳥足で距離をとろうとする鳳だが、速水は全て読んでいた。


 雪の敷かれた地面に仰向けに転がり、その上に速水が乗る。

 速水は間髪入れずナイフを振り下ろす。


(これが伝説。仕方ないわね)


 鳳は口に含んだ小型のスイッチを押した。

 瞬間、特大の爆発が森の大地を揺らした。

 わずかに硬直した速水。その一瞬で鳳は意識をはっきりとした状態まで回復させ、ナイフに小型スイッチを突き刺す。

 小型の爆発がし、速水は後ろに飛ぶ。

 鳳は顔に炭を浴びた。


 速水は落ちていた狙撃銃を拾い、背を向けて走る鳳に一瞬で照準を定めた。

 発砲と同時に鳳もノールックで背後に発砲していた。

 お互いの弾丸がぶつかり、飛散する。


 速水は鳳を追跡しようとするが、森の周囲を確認し、追跡をやめた。

 足早に森を抜け出す。

 速水と鳳が別々の道で森を抜けた頃、森が大爆発に包まれた。



 王子が待機しているビルまで帰還した鳳。

 王子は鳳の帰還に驚いていた。


「鳳さん、勝ったんですか」


「いえ、今回は決着をつけることができませんでした」


 鳳は敵の強さに興奮していた。

 炎上する森を見て、頬を紅潮させる。


「伝説と言われるだけはありますね」


 鳳は顔についた炭を払い、歩き出す。


「早くここを去りますよ。彼女が追ってくるかもしれませんから」


 鳳は王子とともに速やかにその場を後にした。

 最後、鳳は森を名残惜しそうに見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ