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うざいくらい慎重すぎる暗殺者  作者: 総督琉
第四章『悪魔が目覚める日』
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第五十六話『救出と対決、誤解』

 工場の地下に囚われた宮園。

 彼女を救出するべく、速水は用意された試練を次々と突破していた。

 どんな試練が待ち構えていようと、躊躇いなく突き進み、強引な歩みを見せる。


 既に日付は変わり、修学旅行三日目の昼頃。


 最後の試練まで迫った。

 その部屋は真ん中に底が見えないほど深い穴があり、向こう側へ渡るには一本のロープだけが残されている。

 向こうに行くには三十メートルはあるロープを渡るしかない。

 速水は周囲を観察し、気付く。


「合計九十のセンサーとライフル。銃弾を避けつつ行けってことか。ハードモードだね」


 綱渡りだけでも至難の技であるのに、銃弾をかわさなければいけない。

 速水はこの状況に笑っていた。


「いいね。そうでなくちゃ面白くない」


 速水はロープの端を握ると、壁に埋め込んであるロープを切断した。

 自然とロープは向こう側に弧を描いて落ちる。

 幾つかのセンサーが速水の動向を検知し、銃弾が浴びせられる。

 速水が対岸の壁に足をつけるやいなや、そのままロープを掴んだまま壁を駆け上がる。

 発射される弾丸よりも速く動き、あっという間に崖の向こう側に到着し、試練を突破した。


「なんか最後まで手応えなかったな。こういうの久(・)し(・)ぶ(・)り(・)だから緊張したのに」


 速水は最後の部屋にある扉に手をかけた。

 ──瞬間、爆裂が駆け抜ける。

 コンクリートの壁を爆砕し、天井を叩き落とす。地下九階、上層の瓦礫が雨のように降り注ぐ。


「そうか……。まあ、そう来るよね」


 速水に逃げ場はないように思えた。

 瓦礫が激しい音を立て、地上の工場も原型をとどめず崩れていく。


 その様子を地上から見ている人物が一人。

 金髪を揺らす女性。

 彼女の瞳は崩壊する工場を映す。


「この程度で死ぬはずがないよな。──有(・)栖(・)川(・)麗(・)」


 崩壊しきった工場は砂塵を舞い散らす。

 彼女は崩壊した工場の側から立ち去ることはなく、何かを待つように立っていた。


 彼女の期待通り、崩壊した工場に動きが見られる。

 瓦礫が吹き飛び、地下から続く空洞が出来上がった。そこを這い上がり、一人の人物が現れた。

 その人物は目の前に立つ女性を見るなり、陽気に銃を構える。


「宮園潮、じゃないな」


 金髪の女性の容姿は完全に宮園潮と同じだった。

 だがその人物は一瞬で雰囲気の違いを感じ取り、別人だと言い放った。


「お前こそ速水碧ではないだろ。有栖川麗」


 その人物──速水に向かって金髪の女性は訴える。


「既に心臓は目覚めているはずだ。氷夜が上手くやってくれたからな」


「へえ、氷夜は君たちの協力者なんだ」


「とぼけるなよ有栖川」


「だから私は有栖川じゃないって。勘違いしないでくれる」


「はぁ?」


 金髪の女性は、相手が本気でそう言っているように感じ、怒りと殺意を入り混ぜた吐息を漏らす。

 相手の真意を掴めない金髪の女性は困惑していた。


「こちらの目的は有栖川の奪取。お前の態度はそれを勘づいているからか」


「馬鹿言っちゃいけねーよ。有栖川以外の奪取は信用を落とすことに繋がるよ」


「……うざいな。本当にうざい」


 金髪の女性は舌打ちをし、隠し持っていたナイフを二本取り出す。


「昨夜森で起こった火災、あの時既に速水碧は別人になっていることは確認した。速水特有の慎重さはなく、挑発的な態度をとっていた。お前が速水であればありえない」


「だとしても、私が有栖川だという証拠はあるのか」


 速水と思われる人物は、挑発的な視線を相手に送る。


「そもそも別人になるということは、身体が何かに乗っ取られたってこと。それはつまり速水の肉体に仕掛けた心臓が目覚めたことを意味する。その心臓は氷夜によって入れ換えられている」


「お前も同じってことか」


「俺は変装の名人だからな。ただの変装だよ」


「今回の誘拐事件の首謀者は八神ではなくお前だったか。──鬼灯」


「は……ッ!?」


 鬼灯という名を呼ばれたことに、金髪の女性は驚愕する。


「何を知っている」


「何を知っているかは肝心ではない。肝心なのは誰が知っているかだ」


 金髪の女性の質問にまともに答えるつもりはない。


「忠告しておく。君のバックにいるのがどの国であれ、どの組織であれ、私には及ばない」


 彼女は空に銃口を向ける。


「なぜなら私は、うざいくらい最強の暗殺者だから」


 その台詞とともに引き金を引いた。

 銃声が廃工場地帯に響き渡る。

 その音が合図だったのか、ヘリが突如として姿を現した。

 ヘリから垂れ下がったロープを速水は咄嗟に掴んだ。


「暗殺学園か」


 金髪の女性はヘリを睨む。

 開いている扉に見えたのは宮園。


「拘束を解いたか。さすがに速水に鍛えられただけはある」


 金髪の女性は遠ざかるヘリをただただ見ていた。




 ヘリの中に入った速水。

 速水は宮園と対面する。


「どうやら私たちのクラスの委員長、恋沼は変装していた敵だった」


 速水は何も言葉は発することなく、宮園が第一声を発した。

 速水は無言で頷き、席について一息つく。


「ねえ、今のあなたは誰?」


「説明しただろ。私は──」

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