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うざいくらい慎重すぎる暗殺者  作者: 総督琉
第二章『VS第Ⅴクラス』
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第二十六話『空っぽに薬莢をつめて』

「速水碧。お前はオレが殺したはずだ」


 赤羽は速水が生きていることに驚愕した。

 スコープに映った彼女は真っ赤に染まったはず。では今目の前にいるのはいったい誰か。


「殺す? そういえば先ほど銃声を聞いた。お前は一体何を撃った」


「銃声を……聞いた!?」


 赤羽の視線はスナイパーライフルに向けられる。銃口にはサイレンサーが付属している。

 つられて速水もスナイパーライフルに目を落とす。


「……まさか」


 速水はある考えに思い至った。

 なぜ赤羽が速水を殺したと思い込んだのか。普段の速水であれば簡単に思い至ったことだ。

 視線は自ずと窓の外、校庭に向く。窓縁に体を押し当て、血眼になる。


 校庭に転がる一人の女子生徒。頭から血を流して倒れている。

 それが誰か、一瞬で理解する。


「宮園、どうして……」


 悲しみが心を支配した。後悔が自分を飲み込んだ。

 涙が溢れた。

 心臓が痛いほど鼓動する。

 速水は胸を押さえてしゃがみこみ、顔いっぱいに冷や汗をかき、苦悶の表情を浮かべた。


「速水……?」


 首を傾げてわずかに表情を歪ませる赤羽。

 言葉を発することもなく、顔を伏せた速水に空洞を見つめるような視線を送る。

 彼は戸惑いを隠せなかった。自分の暗殺を澄ました顔で回避した強靭な相手が、たった一人の死で深く動揺したからだ。


 彼はそれに違和感を感じていた。

 それは最も重要なことに思えた気がした。


「赤羽、私を殺さないのか」


「今のあなたを殺したところで何になるんですか。多分、あなたの命を奪うことに意味はない」


 速水の背中は、赤羽の殺意を消失させるほど淡く、気泡のようなものに変わるほど空しいものだった。


「オレはあなたを超人だと思っていた。しかし間違っていた。あなたは暗殺者ですか。それとも学生ですか」


「私は……」


 雷が落ちるような衝撃が速水の頭を直撃する。頭を押さえ、しゃがみこむ。

 未知の痛みに支配され、知らない記憶が脳を埋め尽くした。


「何……、この気持ちは。脳が崩れてしまうような、痛いほどの刺激…………」


 その時、速水碧の心臓に刻まれた記憶が蘇る。


「そろそろだと思っていたよ。君の心臓が目を覚ますのが」


 白髪に白い肌、白い衣装を身に纏い、白い瞳を持つ少年。

 Cクラス末席、(かすか)(ほの)


「ようやく君を拝むことができた」


 少年は口に微笑を浮かべた。


「おはよう。()()()()()()

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