二次元の嫁暗殺計画 その五
マンションの入り口でトールはしばらくガチ泣きをしていた。黙って泣いているのがその証拠だろう。
「まぁ……とりあえずですねぇ、一度アースガルズに戻りましょうねぇ。皆で話し合えばですねぇ、何とかなりますからぁ」
何とかブラギが支えることによりトールは立ち上がる。しかしそれでも未だに泣いている。とにかくブラギは歩かせて駐車場へと向かわせる。もう夕方であり、外は黒い雲に覆われている。もしかしたら雨も降るのかもしれない。
駐車場に入ると、様々な車がある中でトールの『トリプルタング』は目立つ。一目で凄まじいスピードが出ることが分かるだろう。まさにモンスターマシンのようだ……
………………!
突然の凄まじい光に二人の神の思考は吹き飛んだ。そして同時に凄まじい雷鳴と衝撃波が襲った。
最初悲しみに埋もれていたとはいえ、トールは何が起きたのかわからなかった。いや、トールにとっては自分の理解が超えていることがあまりに異常だった。
何故なら雷神であるトールにとって、雷とは自分を象徴するものの一つみたいなものだ。そのトールが理解できないような雷。それが今、目の前に落ちたのである。
落雷の後、煙と共に凄まじいほどの爆音が響いた。『トリプルタング』を中心にして駐車してあった車のガソリンに引火した音なのだろう。もはや『トリプルタング』は影も形も無い。ただ黒鉛の炎をあげるばかりだ。
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!! いやああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
突然狂ったようにブラギが叫びをあげた。そして屈んで、額を思い切り地面にこすりつけて祈るように手を組んだ。彼女の白いスカートは凄まじい勢いで黒く濡れていき、コンクリートも黒く染めた。
そこでトールは辺りの避雷針さえ避けて落ちた凄まじい雷の正体に気がついた。
確かにトールは、ロキに対峙したとき髪の毛を一本飛ばした。もしもあれが素手で殴るだけならば、よかったのだろう。決してニヴル・ヘルに送ることが無いからだ。だがミョルニルは本当にニヴル・ヘルへと送ってしまう。だから、決して正当な理由無くミョルニルでロキを傷つけてはならない。もしも本当に、髪の毛一本でも傷をつけたら……
「ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい許してください許してください……お母様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そうだ。
この雷は、母上……最高神オーディンの力だ。
そう考えて、あまりの恐怖にトールは思考を停止した。




