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アースガルズの私様  作者: 富良野義正
F5攻撃ラグナロク
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F5攻撃ラグナロク その五

 かくして長く続いた《F5攻撃ラグナロク》の後には、誰のホームページも残らない。


 軟弱なサーバーは一度落ちたら再び復旧することはない。かくして、アースガルズのインターネットは滅びてしまったのか?


 いや……『ニヴル・ヘル.com』からの転送がある。何も無い無地のサーバーにデータが送られる。


 おお……これは、バルトルのファンサイトではないか。いや、それだけではない……ホズのプロフィールだけのホームページも復旧したではないか。


 最初の方に落とされたトールの娘モージとマグニの日記も復旧を開始している。


 なるほど、『ニヴル・ヘル.com』は巨大なデータ倉庫だったのだ。鯖落ちしたデータを復旧させサポートする有志のバックアップサイトだったのだ。


 だが神のホームページが全員戻るわけではない。この《F5攻撃ラグナロク》によりニヴル・ヘルの容量は一杯になってしまった。だから、最初の方に落ちたのしか保存されていない。


 フレイもトールのサイトも保存されていない。ロキやヨルムンガンドのサイトも保存されていない。もう戻ることもないだろう。


 オーディンのサイトも二度と復旧することはない。『アースガルズ.com』で検索したとき、消されたページのリンクが表示されるばかりだ。しかし《F5攻撃ラグナロク》のオーディンの痕跡は残っている。『ロキたんメモリアル』フォルダーとディスクトップの画像がオーディンの名前入りでアップロードされたままだからだ……




 ロキは削除依頼を出しても放置されているフォルダーを眺めた。


 外は変わらず、陰険な森のままだ。


 これまでの出来事を眺めたロキはゆっくりとパソコンの椅子から立ち上がる。そして窓に近づいて、叫んだ。


「結局私様の負けじゃねえかああああああああああああああああああ!」

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