16、大学院入試
ウチの音大には大学院がある。
私が師事しているX教授は大学院の教授でもあるので、門下生はもれなく大学院を受験する。
そのため、夏休みに先生の軽井沢の別荘で合宿までする。
大学院はオペラ科と歌曲科があって、どちらも受ける場合は試験曲が10曲にもなってしまう。10曲歌うと、1時間くらいぶっ通しで歌えなければならない。もうプロ並みである。
ということで、まずは曲を覚え、そして舞台に慣れなければならないので、合宿だ!
ところで私は、成績は悪くはなかったけれど、良くはなかった。多分真ん中くらいだったのではないかと思う。
だから、教職を真面目にやるか大学院受験に力を入れるか非常に迷った。
だけど門下生は、大学院受験に本気で取り組んでいた。こうなると私もやらざるを得ない。
というと語弊があるが、私は門下生の中で一番長くX先生に習っているというプライドがあった。
やる。
私は大学院受験に本気で取り組むことにして、教職はきれいすっぱり捨てた。
大学院受験はただ歌えれば良いだけではない。
音楽科目と語学の試験はかなり厳しい。普通の人は、音楽科目の塾のようなところに通っているようだった。
ちなみに、語学はイタリア語で受けた。
ずっとフランス語をやっていたのに、フランス語で受かる自信がなかったというヘタレである。
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だいたい200人くらい受けて、オペラ科・歌曲科合せて10人くらい受かる。
歌曲科のうち、ドイツ歌曲3名、イタリア歌曲1名、フランス歌曲1名のフランス歌曲が私。かろうじて、またまたびりっかす合格。




