7、私の発表会・ピアノで抱負
二度目の発表会は中学1年生だった。
初めての発表会でぶるぶる震えていて、ちびっ子に「あのお姉ちゃん、震えてるよ」と言われた私は、心に決めていた。
今年こそ、震えない!
そんな抱負があるかいな。
発表会前に、私はいかに震えを抑えるかを研究した。
震えてきたら、震えないように力を入れる。
しかし、ペダルを踏む足は逆に、力を入れるとさらに震えてしまうので、力を抜くほうが震えない。
緊張するのはしょうがない。
とにかく、震えているのを誰にも見られたくなかった。
本番、名前を呼ばれて舞台に立ち、最前列を睨む。あの子はいないか。
しかし、どれがあの子かは分からない。
しょうがない、とりあえず、まんべんなく睨んでから、ピアノの椅子に座った。
早くも足が震えている。
いかん、リラックスだ。足は力を抜く。
そっと鍵盤に手を置くと、手も震えている。手は、力を入れる。
力を入れても、震える。震えるけれど、手の震えは、見えない角度ではないか。
よし、手は気にしない。手の震えはこのさい見えないことにして、足に集中だ。
ということで、2度目の発表会は、ひたすら足の震えを気にしていたため、どんな出来だったかを思い出せない。
少なくとも「あのお姉ちゃん、震えてるよ」とは聞こえてこなかったので、よしとする。




