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6、合唱部部長
6年生になると、誰かが部長をやらなければならない。
クラブ内で一番大きな口を開けて、大きな声を張り上げている私は、部長になった。
目立ちたくて大きな口を開けているわけではない。単に真面目なだけだ。
だから、部長など絶対にやりたくなかった。
何しろ、部長は皆の前に立って、号令をかけたり、時には指導のようなこともしたり、それから一番嫌なのは、1人で職員室に鍵を取りに行かなければならないのだ。
嫌で嫌でたまらなかった。
それなのに、私は部長になった。
ピアノの上手い、Nちゃんがいつもそばにいて
「鍵とりにいっておいで」と言っては、職員室の前まで付いてきてくれたり、
「号令かけるんでしょ」と言って、私の後ろに立ってくれたりした。
そこまでやってくれるなら、部長をやってくれ。
だけど、Nちゃんがいなかったら、部長なんてとてもできなくて、もしかするとクラブを辞めていたかもしれない。
そう思うと、そばにいてくれて良かったなと思う。
あの経験がなければ、私はずっと職員室に入ることはできなかっただろう。




