3、超ビビり
私は小学生の時、合唱クラブに所属していた。
小学生の合唱。
できそうで、できないものである。
普通小学生が「合唱」になるのは、5年生で「輪唱」(同じメロディを追いかけっこのようにずらして歌うこと)がやっとできる程度で、主旋律の下に副旋律が一緒に歌われるような、いわゆるハーモニーができるようになるのは6年生がギリギリである。
それを、合唱クラブは小4からやる。
6年生も一緒とはいえ、結構難しいらしい。
私は年子の姉と毎日のように何かをハモって歌っていたので、小4でそれが難しいとは思わなかった。
合唱クラブに入って、メゾソプラノになった私は、迷いもなくハモっていたので、先生がとても驚いていた。
「マロンさん、前に来て、1人で歌ってごらんなさい。ソプラノに○○さん、一緒に歌ってあげて」
と、お手本にされたのだけど、前に出た途端に声が出ない。あがり症のため、誰かが私を見ていると思っただけで硬直してしまったのだ。
涙目でブルブル震えて青ざめている私を見て、先生はさらに驚いていた。
「怒ってるわけじゃないのよ?あなたがちゃんと歌えているから、みんなに聞いてもらおうと思ったのよ」
と、言ってくれたけれど、出ないものは出ない。
よくもまあ、あんな私が一人で歌うようになったものだと、幼いころの私を知っている人たちは、口をそろえて言うのであった。




