20、先を読む
本を読む時、ヒトは今読んでいる「字」だけを読んでいるわけではない。先の文字も読み、単語と文章を理解する。
楽譜を読んで弾いている時も同じで、ヒトはその先を読んでいる。今弾いている音楽を頭の中に歌わせて、耳で音を確認しながら、先を読んで弾くのである。先を読まないと、どうしたって音楽は流れない。
ところが、その作業ができるようになるには、かなりの訓練が必要となる。
なにせちびっ子たちは、まず今弾いている音すら読むのが困難なのだ。だから私は生徒さんが先を読めるように、1拍先の音を指さすようにしている。
だいたいのちびっ子は、これで少しずつ先が読めるようになる。
そして、だんだん自分で読めるようになってくると、1拍だけでなく、2拍先も読めるようになる。両手でも読める。
私自身はだいたい1小節先を読んで弾いている。私は、小節ごとに音形で覚えて弾くことをしているけれど、ヒトによっては、きちんと読んでいる人もいるらしい。どちらにしても、だいたいそのくらい先を読んで弾けるようになる。
ところが、本物のピアニストだともっと先まで読んでいるらしい。わざわざ意識をしているわけではないのだけれど、どうやら先を読んで、一度戻ってくるとのことだ。ピアニストっていうのは、脳が進化しているらしい。
とはいえ、千里の道も一歩から。
まずは、今弾いている音を確実に読めてくれ。と、先生は願っている。




