表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第4章 宇宙旅行~UFOに乗って~
36/69

第35日 意外と弱い宇宙人。

 授業を終えた俺達は各自の部屋に戻り、休んでいた。ベッドに寝っ転がり、天井を見る。

「・・・・・・」

 さすがに部屋の天井は透明にならないらしく、普通の天井というようになっていた。しかし蛍光色の星のような飾りがちりばめられていた。

 それを見ながら俺は考える。

 先ほどの気持ちはなんだったんだろうかと。どこかへ行ってしまう恐怖。もう2度と会えないような錯覚。俺はそれを振り切るためにベッドの上で向きを変えたりと動くものの、忘れられない。

 宇宙は俺にとって大きすぎた。星1つ抱えているワン太。俺はどこかでワン太と通じ合えるような気がしていたんだ。でも、違った。致命的に違いすぎた。俺とワン太は全然違う。

 地球人らしいと外見や内面から思っていたのだが、逆になんで星1つ抱えて普通でいれるのかが分からない。星、国ではなく星。俺からしてみれば地球を把握するのと同じことだ。

「ワン太・・・・・」

 広大な宇宙を前にこんな気持ちでいるのはどうなのだろう。よくわからない。

 そこまで考えたところでズドン!という衝撃が襲う。

「な、なんだ・・・?」

 俺の部屋が揺れているということはこのUFO自体が揺れているということ。

 俺は部屋を出てさっきまでいた体育館ぐらいの大きさのリビングへと移動する。

「ワン太!」

「ノゾム!大変なことになりました・・・」

 やっぱりUFOに何か異常があったのか。なんとなくこういうことが起こるんじゃないかなぁとは思っていたんだけれど、まだ1泊もしていないぞ。

「で、どんな異常なんだ?なおせるのか?」

「直せる直せないとかいう問題じゃないです。・・・・・このUFOの上に誰かいます!」

「は!?」

 UFOの上って宇宙だぞ。地球じゃないんだ。地球だって運転している車や飛行機に飛び乗ることなんてできない。それが宇宙でしかもUFOだったら・・・。

 いや、可能なやつがいる。

 可能な人間が。

「宇宙人か・・・!」

「回線をつないできました」

 ワン太がボタンを押すと目の前に映像が出てきた。そこにいたのはショートカットでふんわりお嬢様のような容姿。そしてなにより胸がでかい。ワン太も相当なものではあるが、この子のは桁違いだ。

 そしてもっと異質なのは白い翼。羽。天使に見えるそれだ。

『姫様、姫様。応答願います』

「ノウン・・・!」

「ノウン?こいつがか?」

 まさか探しているやつが自分から来てくれるとは思わなかった。これで探す手間が省けるというものだ。俺は胸をなでおろす。

「な、なんだ・・・?」

 遅れてみんなが部屋から出てきた。寝ていたりしていたのか、眠そうな目をこすっているヒメちゃんは本当に天使。天使が2人いるなんて・・・。

「ノゾム。油断してはいけません。私は1つの可能性を忘れていました」

「可能性・・・?」

「はい。私はてっきりグリーン星が嫌になって逃げ出したものだとばかり思っていたんです。だって我が星で管理という言葉を使われるぐらい窮屈な生活を送っていたのですから」

 ワン太はそうしている間もUFOの操縦桿をいじり続けている。

「ですが、我が星に従順なまま逃げだすという可能性もあるのです。私たちを止めるために!」

「・・・・・ん?なんで俺達を止めにくるんだ・・・?」

「そ、それは・・・」

 ワン太は申し訳そうな顔をした。

「巻き込んでおいて申し訳ないのですが、私からはまだ言えません。でも言えるときがきたら必ず言います!だからそれまでは信じて待ってほしいのです」

「・・・・・」

 この時、俺が思い出していたのはワン太への非難ではなく、さっきの気持ち。

 離れていってしまう。そんな気持ちが俺の中に湧き上がってきた。

「信じる。信じるから指示をくれ。最善のことをやるぞ」

「はい、ありがとうございます」

 するとワン太はマイクらしきもののスイッチをオンにした。

「ノウン、こちらハルン」

『姫様、交渉です。あなたの企んでいることを全て説明し、今すぐにやめるのです』

「やめるわけにはいきません」

『そうですか・・・』

 そう言うとノウンは映像の外に出る。

 しばらくするとウィーンという音とともにノウンがUFOの中に入ってきた。

「私は知識です。このぐらい造作もない」

「ノウン・・・!」

「交渉決裂ですね。今、このUFOに緊急着陸信号を送りました」

「なっ・・・!」

 ワン太だけでなくシキブさんやバズーカちゃんも驚いている。

「緊急着陸・・・?」

 神崎さんは首をかしげる。

「どこか一番近い星に緊急でワープし、着陸する機能です。それを恐らくノウンは無理矢理発動させたのでしょう・・・さすが知識の塊」

 シキブさんが説明してくれる。しかしノウンはまだ話している。

「もう1つ。緊急脱出信号も送りました」

 今度はバズーカちゃんが説明する。

「緊急脱出。UFOに異常があったとき、乗組員を一番近くの星にワープさせる機能です。しかし、星のどこにワープするかはランダム。恐らくバラバラになります」

 ってことはこのUFOとともにどこかの星に強制ワープするってことか。しかもバラバラで。

「ふっ・・・姫様、今更謝っても遅いですよ」

「ノウン・・・1ついいですか?」

「なんでしょう?」

「あなたがこのUFOに入ってきたということはあなたも乗組員として認められるということですよ。すなわちあなたもワープの対象です」

「・・・・・」

 ノウンが黙る。

 そして・・・。

「し、しまった!またやっちゃったよぉおおお!うわぁああああああああん!!」

「え・・・?」

 俺と空人、ヒメちゃんに神崎さん地球人チームが絶句。

「ノウン、知識あるのはいいのですが、どこかぬけてるんですよね・・・」

 ワン太がげんなりした表情でそう言う。

「いまさら逃げても乗組員として認められてしまったので強制ワープは免れませんよ」

「そんなぁ・・・怖いよぉ・・・知らない星怖い!私どうすればいいの!?姫様ぁああああ!!」

「あと・・・ピンチに弱いんです」

 シキブさんが後から補足した。

 というか俺達の体が透明になりつつある。これはワープの前兆だろうか。

「みなさん、なるべくかたまってください!ワープ先では連絡を取り合って宇宙船に集合。携帯電話は持っていってください」

 ワン太はその後、こちらへやってきた。

「ワン太!俺の手に掴まれ!」

「はい!」

 そして宇宙船の中が大きな光に包まれる。ワープ。どのようなものなのだろうか。

 俺は目を閉じ、どうにでもなれ精神で覚悟を決めた。






 目を開けるとそこは森、というよりジャングルと言った方がいいような場所であった。暑くはない。むしろ涼しく、地球より快適に思えた。

「・・・・・ここは・・・」

 俺は自分の手を見る。ある。ここにいる。そう言えばワープだかなんだかでどこかの星に飛ばされていたとかなんとか・・・。

 そしてもう1つの手が何を握っていることに気付く。

「ワン太・・・」

 ワン太の手であった。あたりを見ると誰もいない。俺とワン太のみがここに移動してきてしまったらしい。というかここどこだ・・・?やはり地球とは生えてる植物も違う。見たことのない果実や、木があたり一面に広がっている。

 知らない生き物とかいたら最悪だなぁ・・・と考えているとワン太が目を覚ました。

「あれ・・・ノゾム?」

「ワン太、どうやら変な星に来てしまったみたいだぞ・・・」

「・・・・・・ここは・・・」

「知ってるのか?」

「いえ、別に」

「思わせぶりな態度をとるな」

 今、一番そういうのがキツイ。こいつが知っている星だったならば安全に過ごせるかもしれなかったのだが・・・これからどうしようか。

「というか、ノゾム。いつまで手を握っているのですか?」

「おおう!すまん!」

 俺は思いっきり手をはなす。

「そ、そんなに思いっきり離すことないじゃないですか!」

「なんで怒られたの!?」

 すると俺の携帯電話が振動した。

 開くとメールが来ていた。これは・・・ワン太から?

「試しに今、送っておきました。やはり携帯は買っておいて正解でしたね」

「ってことはこれで他の連中とも連絡がとれるということか?」

「はい。みなさんこの星にいるはずです。ですが、距離は分かりません。近くかもしれないし、遠くかもしれない。違う国かもしれません・・・」

「そうか・・・」

 ここは星。いくつもの国があって当然だ。

「国いくつかなら飛ぶこともできるんですが、当てもなく飛ぶとエネルギーが切れてしまいます。なのでまずは連絡待ちですね」

「お前すげぇな・・・」

 飛べんのかよ。テレポートとかできたんだっけ、確か。

「シキブやバズーカもいるのでその2人はまず安心ですね。みなさんのところに1人はグリーン星、宇宙人がいればいいのですが・・・」

 そこでワン太は何かを考える仕草をする。

「もし、ノウンと一緒になっていたら大変ですね・・・」

「や、やっぱりやばいやつなのか・・・?」

「いいえ、落ちつかせることが大変という意味です」

「・・・・・」

 なんかもう散々だな・・・。

「そもそもなんで私と交渉するうえでワープする必要があったのかも分かりません。恐らく、あの型の宇宙船をハッキングできる信号がワープしか知らなかったのでしょう」

「えー・・・」

 そんな理由で俺らはここに飛ばされたのか・・・。

「とりあえずみんなにメールを送るか」

「はい、そうですね・・・みなさん無事でしょうか」

 俺は携帯を操作してメールを送る。携帯を閉じ、ワン太を見るとまたもや悲しそうな顔をしていた。

「すみません・・・私が誘ったばっかりに・・・」

「いいや、お前のせいじゃないよ。今回は完全に巨乳ドジっ娘のせいだ。みんなもそう思ってるさ」

 俺はその間も考えていた。これからどうすればいいのか。

「とりあえずどこかの国か街を目指した方がいいのか?」

「そうですね・・・ここらへんの星で戦争をしているところはないのでたぶん安全だとは思います。むしろ危険なのはこういうジャングルに出る動物。地球にも蛇やらがいるようにここにも危険な動物がいるはずです。注意して進みましょう」

 なぜだかわからないが今回は非常にワン太が頼りになる。地球の外に出たことによって姫モードになったのだろうか。いつものワン太からは想像できないほど凛としている。

「ではいきましょう」

 俺らは知らない星の地面を踏み締める。明日俺達は生きているのだろうか。異星サバイバル開始。

ノウンはああいうやつです。はい。


宇宙旅行どころか異星旅行っぽくなっていますね。


ではまた次回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ